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もういちど葬る
自分はなぜ
子ども時代の想い出にこれほど執着してしまうのか
なぜ幼年時代を殺し損ねてしまったのか
たしかに埋葬したはずなのに
過去を葬ることができず
未来を葬ってしまった
十二のみぎりに時系列が歪んでしまった
遡行的にぼくは死に向かっている
正道をたどることがどうしてもできない
老いさらばえた子どもは見苦しい
いまぼくはたまらなく醜い
こころが螺旋型に骨折している
精神に無意味な負荷をかけつづけている
もういちどぼくはぼくを葬らなければならない
跡形もなく
痕跡も残さず
魂を塵泥に解体しなければならない
あの時に殺すべきだった亡霊にとどめを刺さなければならない
その後始末を済ませてから初めて
ようやくぼくは死んだぼくへの
弔いの涙を流せるのだろう