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糸と待ち人
駅で人を待つ手持ちぶさた
ぼんやりとした外界のひととき
さっきまでの喧噪は消えて
凪いだ海原のように静か
待っている
来るかどうかもわからない
いまにも断ち切れそうなかぼそい糸しか残されていない
そんな相手を待っている
想いをこめて
糸をたぐる
ちぎれてしまわないように
想いの嵩を目減りさせて
相手をわずらわせないように
ぶしつけにならないような手つきで
糸をたぐる
待つことは想うこと
その残酷な一致が
いまはこれほどに苦しい
きっと待ち人は来ない
それでも糸をたぐらずにはいられない
切り口を目にするまでは
切り口を目にしたとしても
望みを断ち切る強さを持てない