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死ねという言葉
死ねという言葉は
とても嫌な意味だし
こんな言葉が飛び交う場面には絶対に居合わせたくないが
なぜだろう
死ねという言葉のざらついた肌ざわりは
嫌いになれないんだ
とても惹かれてしまうんだ
だから自分に向けてよく使ってみると
リストカットに夢中な手弱女のように
ひりひりとした毒に病みつきになる
まだ子どもだったころ
冗談まじりに死ねという言葉を他人にぶつけて憚らなかった
そんなことを言わなくても
人間はいずれ死んでしまうとわかっていたら
あのクソガキは口を閉ざしただろうか
秩序にもたれかかって恬として恥じなかった
羽毛布団のような幸福にくるまれていた
加害に鈍感だったクソガキの自分