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怒りの詩
怒りとは侘しい孤独
怒りとは煤けた錯誤
この世には怒るほどのことなどなにもない
それでも怒るというのなら
世界のすべてを憎悪しなければならない
光の粒子
湖の波紋
鳥の帰巣
すべてを罵りつくさねばならない
塵界の頭蓋を粉々に打ち砕かねばならない
怒りの蒼褪めた隻腕は
天使の羽根のひとひらすら
指先だけで擂り潰してしまう
怒りとは幽けき卒塔婆
怒りとはめくるめく墓碑銘
最初の人間が抱いた怒りは
空への怒り
天への殺意
なぜこの世にわれをあらしめたかと
丘の頂上で慟哭した
歴史に汚染されない眼で
半欠けの月と
群小の星と
荒ぶった闇に
語りかける
踵から伝わる緊張が
大地と天を媒介して
丘の上の聖者の怒りは
天蓋を揺らし
雲を裂き
星座の配列をどよめかせるほどに
屹立した叫びを叫んでいる