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電話ボックス
電話ボックスがとても好きだった
街のあちこちに棺桶が立っているようで
立棺に納められた緑あざやかな電話機
柩に眠る死者のための副葬品
十円硬貨とテレホンカードさえあれば
ここではないどこかへつながることができる
テレホンカードの残度数を表示する真っ赤なデジタル数字
受話器を下ろしたときのピピーッという電子音
街頭に点在する静寂の一間
すべてが懐かしい
いまではあまり使わなくなってしまった
電話をかける相手なんてもういないけど
人の見当たらない夜闇に佇む
あの古めかしい立棺で
また仄暗い孤独に憩いたいな