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縁日
ぼくの虚無にはテンポがある
哀しいことではあるけれど
夜店を開く廃兵のような
時代遅れのテンポがある
縁日に溶け合う孤独のような
むかし懐かしいテンポがある
さあお団子を食べて
殺伐とした罵り合い
くわえ煙草のそぞろ歩き
欄干を歩く猫を羨んだら
みんなで一斉に飛び込もう
ポケットは半開き
ちりばめた星を集めるために
カフスボタンは食べ頃サイズ
抜きがたい食欲をじらせるために
魚っていいな
金魚鉢で眠れるから
魚っていいな
横顔こそ本然だから
下から見上げた橋梁は
水面のきらめきを反射して
葦の影祭りを主催していた