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夢が見たい
最近は夢を見ない
子どもの頃から散々つきまとってきた
なにかに追いまわされる夢も
特に関心を持っているわけではない有名人が出てくる
意味不明な夢も
友人や想い人など会って嬉しい数少ない人たちが現れる
もう一度そこに帰りたい夢も
ほとんど見ない
まるっきり夢を見なくなった
その代わりといってはなんだけど
現実感がどんどん薄れて
茫漠とした夢の中を漂っているような気分
自分の名前や来歴が
とりあえずの設定としか思えない
他人の言葉も自分の言葉も
なにも頭に入ってこない
風景が
舞台の書き割りよりも薄っぺらい
こんなになんの手応えもないと
もうすぐ死ぬんだろうなあって
朝も昼も夜も自然に考えてしまう
夕暮れのひとときに
脊髄を走り抜けるようなパニックに襲われることがあるけれど
叫ぶわけでもなく
泣くわけでもなく
パニックに陥りながらも無表情
きっとこのときが一番
現実に触れているんだろうな
ああ、こころを震わせる夢が見たい
そのまま夢から戻りたくない
悪夢でいいから死なせてほしい
この現実感のなさを
夢で贖ってほしい