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空を歩いていた廃人
廃人が空を歩いていた
時おりカラスとぶつかっていた
電線をまたいで
一歩、二歩、三歩
運命のように立ち止まり
ポケットからじゃらじゃらとビー玉を取り出して
上の空のままばらまくと
廃人の足下から地面まで
橋のようにビー玉の虹が架かった
その橋の上を
一歩、二歩、三歩
偶然のように立ち止まり
懐から水鉄砲を取り出して
口笛を吹きながら何度も引き金を引くと
廃人の降り立つ地面に
鏡のような水たまりの絨毯が敷かれた
そうしてようやく
空を歩いていた廃人は地面にたどり着き
おとなしく病院に収容された