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生誕の詩
ぼくの生まれて初めて口にした言葉は
なんだったのだろう
母を呼ぶ言葉か
父を指す言葉か
肉体と世界に流れる水を名指したか
頬に優しく触れる風を名指したか
糧となるべくもぎ取られた果実を名指したか
ぼくの生まれて初めて出した声
世界に在るという苦痛と喜びにむせぶ
ひび割れるような泣き声
弔鐘のような生誕の産声
幻滅のノイズ
祈りのモノフォニー
いまだ生まれ得ぬ胎児のころ
ぼくはなにを想っていたのだろう
なにを夢見ていたのだろう
生の手前の胞衣に包まれながら
未生の冷たい死を予感しながら
夢見る胎児のこころのように
かすかに震える詩をつむぎたい
生まれたばかりの声で叫びたい
初めて口にする言葉で歌いたい
生まれ死ぬという世界への恋を
涙を流しながら祝したい