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模型の景色
しゃがんで景色を眺めると
子どものころの視界を思い出す
そうだそうだ
階段はこんなにも威圧的だった
地面はこんなにも身近だった
空に浮かぶ雲はこんなにも遠くて親しげだった
木偶の坊になったいまのぼくの眼に映るものは
幼いころ
門柱の上に仁王立ちして
王様のような気分を味わっていたぼくが見たものよりも
豊かだとはとても言えない
いまも記憶に残る
門柱の上から眺めたあの景色
掌ですべてに触れるような
輪郭のくっきりした模型のような景色
ぼくのこころの見捨てられた部分は
いまもまだあの玉座に立っている