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セーブ6.今は、これが精いっぱい

 昼イベントを終えて椿はそれから放課後になるまでもずっと午前と変わらず、周りにはいっぱい人がいた。椿をもうそろそろ開放してやれよ。



「よし暁今日こそは遊ぶぞ」



 僕が机で椿が解放されるのを待っていると健人が来た。



「そうだそうだ!」



 その流れでまたいつもの3人が集まってきた。また今日も誘われたが、今日も無理なんだよな。



「ごめん。今日も無理なんだよ。」



「なんでだよ!」



「ごめんなっつ。あの実は昼休みの案内がまだ全くできてなかったんだよ。だから放課後もやることになっちゃったんだよ」



「何⁉またお前は千ヶ滝さんと一緒にいられるだと!それも放課後に人がいない校舎をまわる。そんなの羨ましすぎる。お前わざと放課後まで伸ばしただろ。このドグサレがァァーッ!」



「ちょっ前田!折りたたみ傘で僕を刺してくるな!痛い痛いっ!お前ちょっとは加減しろ!」



 冗談じゃない。これはマジで嫉妬してんじゃん!


 あ、そういえばこいつらの紹介がまだだったな。


 てっぺんが尖ったとんがりコーンのような髪型が特徴な、夏川林生(なつかわもとお)。僕が小学校高学年くらいに転校してきた。転校してきたなっつに僕の漫画やラノベ、おすすめのアニメを勧めていくうちにまんまと僕に英才教育されてオタクになっていった。なっつもリアル女子にあまり興味が無い。それも僕の英才教育の賜物だろう。僕の才能が怖い。




 そして、さっきの折りたたみ傘で刺してきた奴は前田こと、そのままだが前田昂輝(まえだこうき)。中学校からの付き合いで一様オタクだが、リアルの女子の方が好きで朝言っていた「付き合いたいランキング女部門」のアンケートの主催者である。表では女子に優しくはしているが裏では人気の女子のいろんな情報を調べるなど、美少女の事なら何でも知りたいずら。と銭ゲバふうに自分の事をこの前、冗談か本気かわからないが言っていた。そんな前田は情報通として男子には知られている。



「「「…暁お前誰に紹介してんだ?」」」



 しまった声に出てた!銭ゲバは運良く口には出していなかったらしい。



「ま、まあこれは僕の日課だから気にしなくてよかよ~(圧)」



 威圧を込めて3人に言った。



「「「そ、そうか…」」」



「じゃあそういうことで今日もダメなんだ。悪い。」



「そういうことなら仕方ない。何か千ヶ滝さんのなんか秘密が知れたらなんか言えよ」



「う~ん。まあ僕が知ってるのは僕と同じくらいのオタクってぐらいだな」



「「「ええ!」」」



 おお、久しぶりにこんな健人を見たぞ。


 健人もめずらしくこれには驚いている。3人には今日の昼にどんな話をしていたとか細かく説明した。



「お前と同じくらいって相当だぞ!千ヶ滝さん絶対そういうのには無縁だと思ってたんだけど」



「それで昼休みに話してたら全く案内出来てなかったんだよ」



「暁と千ヶ滝さんって気が合うんだな(・・・・・・・)。びっくりしたぜ」



「気が合う…ね…そうかもな」



 やっぱそう思うよな……



「絶対そうだろ。健人も思うよな。」



「俺も絶対に聞いてる限りだと(・・・・・・・・)気が合ってると思うけどな」



「それじゃあな……今日も三人で遊ぶか。じゃあな」



「じゃあな暁」



「ああ。また明日」



 納得はしてないような顔をしていたが二人はしぶしぶ教室を出ていった。




 だが健人は何故か残ったままだった。真剣な顔で僕を見てそこに健人は立っていた。



「行かないのか?」




「いや、行くよ。ただ気を付けて案内しろよ。」



「どういうこと?普通に授業教室を回っていくだけで危険なとこなんて案内しないぞ。まさか!僕が椿を襲うとでも(性的な意味で)!」



 そんなことをするとでも言いたいのか健人!



「いや、お前にそんな甲斐性は無いってことを俺は一番知ってるから」



「健人……」



 そこまで僕の事を知ってくれているなんて…やだ、暁惚れちゃいそう。


 だけど何だろう。このうれしい様な、けなされたような複雑な気持ちは。



「そういう事じゃなくて千ヶ滝にだ。完璧超人に見えるがあいつには何かあるはずだ。人間は不完全だ。完璧ではなく一つは絶対に欠点があるはずなんだよ。だから皆はそんな完璧に見えるものに近づこうとする。完璧なものなんてこの世には無いのにな。ただ完璧に見せている(・・・・・・・・)だけなのに………じゃあ俺行くわ」



「…………」



 ……なんのこっちゃ。こいつ何言ってんの?


 僕は健人が言っていることが突飛過ぎて何を言っているのかわからなかった。


 だが



「ああ、じゃあまた明日」



 僕に何かを伝えようとしているのはわかる。それだけはわかる。健人はそういう奴だってことは僕が一番よく知っている。ありがとう健人。


 そうして2人を追いかけていく健人の背に向けてお礼を言った。





「椿には何かある。か…」



 健人が行った後、僕は健人の言葉について考えていた。何を言いたかったのかは、わからないが、健人の言った言葉が頭から離れない。









「あの、暁。じゃあ昼休みの続きお願い!」



 健人の言ったことを悶々と考えていると椿は解放されるや否やすぐに僕のところに来た。



「うん。いいよ」



「よし、じゃあレッツゴー!」



 と元気で誰でもドキッとくるような可愛いらしい笑顔で楽しみにしていたように言った。


 僕はその後についていくように教室を出た。










 案内中はいろんな話をした。好きなアニメ、漫画の話から中学校での話など。



「こんなもんかな」



 そして、話も落ちついたぐらいで丁度僕は宮橋高校を大体案内し終えた。



「案内されて思ったけど宮橋高校って良いところだね。」



 僕は案内役としてこの宮橋高校を案内し終わった。僕は案内する間の会話で確信したことがあった。それは-



「そうか?普通の高校だと思うけど」



「いや、ここはだって暁がいるんだもん…………」



 …………



「だから…だから僕に昨日ぶつかったのか?」



 てことは椿は僕のカバンにわざと入れたのだろう。



「そうだよ」



 やっぱりか。



「なんでじゃあ僕のカバンにギャルゲーを入れたんだ?」





「それは…ちょっと場所かえない?最後に暁が大好きな場所に案内してよ」



「良いよ。じゃあ着いてきて」



 僕は自分が一番好きな場所、屋上に出るドアの手前の空間に案内した。屋上に行きたいのだが危険だからという理由で屋上に行けないのだこれだからリアルはクソなんだよな。


 そこは光があまり入ってこず、かといって明るすぎずと丁度良い場所でそしてなんといっても人が全く来ない。だから僕は誰も来ないここが好きでそして、今から話すのにもってこいの場所でもあったからここを選んだ。



「ここが暁の一番好きな場所なんだ」



「うん。ここが一番落ち着くからな」



「確かに、すごく落ち着く!」



「気に入ってもらえてよかったよ」



「うん!」



 そこからは少し間が開いた。そして話を切り出したのは椿だった。



「じゃあさっきの話の続きす-」



 だが僕はそこで会話をさえぎるようにしゃべった。



「どうしても完璧に見せる(・・・・・・)って疲れるんじゃないのか?椿」



「……どういうことかな暁?」



「いやそのままの意味だ。気が合うと思ってくれているならお互い壁をつくらず、自分らしさを出していきたいと思ったんだけど、駄目か?」



「ダメというか私はこれが、今暁が見ているこれが私自身、私らしさだよ!」



 椿はケラケラと笑いながら冗談やめてよみたいな反応で言ってきた。



「そう、それが……その状態が椿らしさなのかもな」



「そう…これが私らしさなんだよ。だって壁をつくって話してたら、こんなに暁との会話が面白いとは思わないでしょ!暁もうれしかったでしょ。こんなに理解してくれる人ができて」



「僕もうれしかったよ。驚きもあった。このネタも通じるのかってな。だけど、だけどな椿、僕は思ったんだ。でも僕たちの会話には無いものがあったなって。」



「うれしかったんでしょ。暁はこの話も通じるのかって驚きもあった。じゃあ何がなかったの、暁には?」



「僕は椿と話していてうれしいと思った。驚きもした。でも……椿と話していてな、僕は楽しい(・・・・)とは思わなかった」



 そう、僕はあのオリバーソースの時。通じてうれしい、驚いた。とは感じたが話していた時、楽しい(・・・)とは思ってなかった。僕もまさか楽しいと感じていなかったとは思いもしなかった。だってこの感情は……



「でも、楽しいって感情は当たり前(・・・・)じゃない?」



「そうだな。僕も友達と覇権アニメについて喧嘩になった時も、好きなキャラについて意見がすれ違った時だってどんなに怒った時も何故だかわからないが僕は心から楽しいと思うんだ。当たり前の感情すぎて気付いてなかった。楽しいことは大前提だったんだ」



「それに同じオタクで好みがすごく似ていて、話も盛り上がってたよね!私は気が合うって口に出すほど思ってたわけだし!」



「昼休みの案内の時に椿は気が合うねって言ってくれたよな。」



「うん言ったよ!」



「そう、あの場所で見ていた僕に恨みを持った男たちも、僕の友達のなっつと前田も昼休みの事を説明したら僕と椿は気が合ってるって言った。だってその場面を見たら、その場面を説明したら誰だって思うはずだ。椿が笑って僕と話していたら。仲が良いんだろうな。気が合うんだろうな(・・・・・・・・・)って、たぶん思うはずだよな。何が言いたいかというとな、椿は僕を含め皆の前で僕たちの会話を盛り上げて気が合っているように見せていたんじゃないかってこと。そして僕は、僕達はまんまとその空気に、シーンに見せられて魅せられていたんだ。その証拠に気が合う人たちは、わざわざ気が合っていても「気が合うね」って言わない。じゃあなんで言う必要があったのか。それはそこで見ていた気が合うんだろうな(・・・・・・・・・)と思っている皆はそこで椿が「私たち気が合うね!」と言う事で僕と椿は気が合っている(・・・・・・・)と確信するんだ。


 つまりあそこで言った「私たちって気が合うね暁!」は僕だけ(・・)に言ったんじゃない。「私たちって気が合ってる…………よね皆(・・・)?」ってこの場面にいる皆に言ったんだろ椿」



「………なんで楽しくないって気付いたの」



 その言葉は今までの椿からは考えられないほど無機質な声だった。



「椿の会話には楽しさ、うれしさ、驚きもこれ以上ないだろうって程の感情が僕にも伝わってきた。だけど僕には楽しさがない代わりに椿にも一つの感情が伝わってこなかったんだ。それはオタクなら絶対に伝わってくる感情だった。椿、君の壁には皆は気付けないだろうけど、僕には、僕だけはわかった。だって椿には……()だけが欠落していたんだ。」



「っ!……でも愛が無ければここまで暁と同じくらいアニメやゲームを見たりプレイできないと思うんだけど」



 無表情だった椿も少しだけ眉をピクリと動かして言った。



「そこは不思議に思ったよ。何で愛がないのにそんなに詳しくなれるのかなって。僕のオリバーソースのネタとか他のネタを言ったときにすぐに元ネタをすぐに言い当てていく椿はまるで、テストの問題をここ、前やったところだぞって思って答案用紙を埋めいっているような中学生か高校生のように感じた。まるでアニメやゲームを知識(・・)のように蓄積しているような」



 イメージは『あ、これ進〇ゼミでやったのと同じだ!』みたいな感じ。



「確かに愛が無くても楽しさ、優しさ、可愛げがあれば皆は絶対に椿としゃべっていれば椿のことを好きになるだろうさ。


 でも、オタクの会話では楽しさ、優しさ、可愛げなんていらない!そこに愛さえあれば何もいらない!それさえあれば友達と覇権アニメについて喧嘩になっても、好きなキャラについて意見が食い違った時も、()があるから楽しいし嬉しいと後からいろんな感情が湧いてくるんだよ!」



 これに気付けたのはあの今日の朝のマジ尊みヤバあるな妖精のような美少女の愛をこの上なく感じる歌を聴いた事、健人の助言のおかげだな。




「あはは!まさかそこまで気付くとは思わなかったよ暁!」



 たぶん今ここに皆がいたら椿は無邪気に笑って誰もがドキッとするように見えただろう。


 だが、僕は、僕にはもう今の笑顔は、今の一連の動作(・・)は、この日本語に連動させて可愛さとあどけなさを混ぜて無邪気な感情に見えるように笑って。と入力されたまるで機械(・・)のようにしか見えなかった。



「……僕の話も終わりだ。さあ話を戻そう。で、なんで僕のカバンにギャルゲーを入れたんだ?」



「でも、もう言わなくても、もうわかってるんじゃないの?暁は」



 椿の言う通り。僕はわかってきたかもしれない。



「うんたぶんね。」



「で、何がしたいと思う?暁」









「そう、それは……椿は僕に()を教えてほしいんだろう」



 今の言い方だとなんか僕が視界はギャルゲーなのに言ってることはエロゲーの主人公だな。



「そう!やっぱりわかったんだね!」



「だってギャルゲーとは簡単に言えば僕達プレイヤーとモニターの向こうにいるヒロイン達と愛を育み、ルートミスを回避してヒロインを幸せにしてあげるゲームだろ。そこには愛があってこそのゲームだ。でも椿は愛を知らないままギャルゲーをやっている。だから椿は誰かに教えてもらいたいと思った。


 でもそこがわからなかったんだが。で、何で僕に教えてほしいと思ったんだ?オタクなんて日本には僕以上の人なんていると思うんだけど」



 ギャルゲーの何たるかを話すと時間がないからもっと語りたいところだが、今はこれぐらいにしておこう。


 まあそれは置いといて、本当になんで僕なんだ?



「さっきから暁に教えてほしいってさっきから言ってたけどちょっと違うんだよ。私が教えてほしいのは暁にじゃなくてね……」



 ん?なんだか嫌な予感がするぞ……



「…生きる世界を間違えてしまった男~ゲームならどんなヒロインでも落とせる(自称)~で知られる有名評論ブロガー「ギョウ博士(・・・・・)」として私に愛を教えてほしいんだよ」



「……えっ!!」



 やっぱり!的中した



「今、ギョウ博士って言いました!なんで僕のブログでの名前知ってんの!噓だ!友達にすら言ってない。これはマジで誰も知らないのにどうして!」



「なんでギョウ博士かと言うと暁はギョウとも読めるし、君はラーメンとギョウ(・・・)ザが大好きだ。だからそこからギョウ博士という名前にしたという事も知っているよ」



「……嘘だといってよ、バーキィ(椿)」



 こ、これはゾクゾクもんだ!何でなんですか!なんでそんなギョウ博士、命名の由来を知ってんの?この人!恥ずかしい!今考えてもそれは安直すぎて恥ずかしすぎる!椿様マジパねえっすわ!というか恐怖だよ!


 あれ?今の怖さで本当に、本当に今更おかしいことに気付いた……



「というかだ、根本的ですごく今更なんだが、今の日本の技術でも作れないような視界がギャルゲーになるソフトなんて普通の女子高校生が作れるわけないし、まず持ってることもあり得無くね!!」



 なんで僕は“視界がギャルゲー”にはびっくりして、なんでこんなことになったんだろう?このギャルゲーは絶対あの美少女とぶつかった時に紛れたんだろうな。って思うだろうけどその前にまずこれには気付くことでしょ!暁よ、なんでこれには気にしてなかったんだよ!



「……それ、今さらすぎないかな」



 椿は呆れたという感情でこちらを見てきた



「そっ、それな!!」



 人生初のそれな!がこのタイミングだとは



「これが面白いという感情なのかもね。暁、君って面白い人だね。あそこまで私のことを見抜いておいてそこは今まで気付かなかったなんて変な人だな」


「何も言い返せないですはい」



 僕は自分のことはどこにでもいる男子高校生だと思っているのだが。



「てことは、椿は認めるんだな。お前は完璧にみせていることを」



「うん、認めるよ」



「でも本当に椿の事がわからなくなってきた。愛がわからない。オーバーテクノロジーなギャルゲーを持っている。僕のブロガーとしての「ギョウ博士」のことも、そしてさらに命名の由来のこともわかっている!こんなにわからないこといっぱいあるんだけど。どうしてもこのたくさんの謎を解く答えが探しても見つけられなかった。結局君は何者なんだ?」



「暁、それはわからなかったんだ。案外単純だったんだけどな」



 単純?



「…考えてもわからない。降参だよ」



「じゃあ教えてあげるよ。答えは簡単。私は・・・







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