農村自治体の話
刀狩り知ってますよね刀狩り。
農民から刀を奪って武装解除して、平和な江戸時代を作ったあれです。
まぁ、刀狩りのあとも武具が残ってましたし、江戸時代でも大量の種子島が農村に合ったわけですけど主に野獣と戦うために、話がそれました。
室町時代に入り、南北朝の戦乱で旧来の支配形態が崩壊したのち。惣村という地方自治形態が主に西国でできあがります。
村の土地持ち百姓が中心となって自治会を作り、その自治会で裁判から年貢の徴収から戦争までやってました。
これ以降は大名と言えど農村の自治には口出しできず、年貢の率や額も集団交渉で決定され、気に入らなければ村単位で反乱、ストライキされるという時代になります。
信長の先進的だとされることで兵農分離があるじゃないですか。なんかいろいろツッコミのある概念ではありますが、兵農分離をしたってことは昔は兵農分離がされていなくて、つまり惣村がそのまま軍事力だったわけです。
どんな貧乏な百姓でもさび刀の一振り、古槍の一本は持っていましたし、弓の訓練をする農民や、鎧具足をそろえている大百姓も居てこのクラスになると侍と見分けがつかないわけです。
さて問題です、このような武装集団を抱える惣村に対して、
村を襲う盗賊や野盗があらわれたので、主人公が現れて無双して村人に感謝されるとかそういうのあるでしょうか。
惣村は緩やかな地域連合組んでるのが普通なので、1村で対抗できなかったら数カ村で協力できますので、数百から千ぐらいの武力にはなるわけです。もちろん地侍クラスの大百姓なんかは婚姻先が網の目のように張り巡らされているわけで、中途半端な盗賊団など返り討ちです。
当然、ながく収入を得る方法などないので定期的に村を襲うような盗賊団は存在できません。
こういった自治組織から逃れ、街道沿いで旅人を中心に襲うような数名の盗賊、これは良くいました。下手すると近くの農村からそういう盗賊がでて惣村に属していない旅人を襲ったりしていたわけです。
もちろん旅人側も数人で歩いたりせず、隊商を組んだりして対抗していたわけですけど。
落ち武者狩りってあるじゃないですか、あれ近くの農村の武装した若いのが、はぐれた兵士を大喜びで襲って殺して身ぐるみは剥いでいたわけです。
つまり、よくあるんですが、転移した主人公が「さて、村でも探すか」とか言って一人で歩いていたりなんかしたら、「共同体に属していないので」その辺の村人に即座に殺されて奪われて捨てられます。すごく余裕があれば歓迎されるかもしれませんが。
戦国時代や昔の日本では惣村をはじめ、共同体が強力なので、共同体に属していないということは人間ではないわけです。
というわけで、時代劇のイメージですと、農民は米を運ぶだけ、唯々諾々と武士に従って、なんか野盗が出たら逃げ惑う、そういうイメージがあるかもしれませんが、そうではない、むしろ半ば武士のような人々が多くいて、大名ともいろいろ折り合いをつけて生活していた、ってことを書くとちょっと違いが出せるかもしれません。
ただまぁ、共同体意識とかよそ者への対応を素で描写したら、話が何とも面白くないので、主人公を転移させたらできるだけ早くどっかの共同体に放り込むのがよいと思いますが。