夜襲5
「魔女か……まさか、ダギーズの性奴隷に紛れているとはな」
完璧な拘束を施された上で牢に放り込まれた魔女を見て、村長が唸った。
「村長、出来れば魔女というのがどのような……能力を持っているのか、ご教授願えませんか?」
反応を見る限りあまり良い話は聞けないことは推測できたが、今は偏見が混じっていようと現地住民の意見が欲しかった。村長はふむ、と顎髭を撫でると、
「俺も詳しい事は知らない。ただ彼女は多分、“魔女の国”の密偵だと思う」
「“魔女の国”?」
「言葉通りの意味じゃない。魔法が使える人間が集まった、いわば秘密結社だ。魔法が使えない人間を最底辺にした、魔女だけが人として扱われる国家の建国を目指していると聞く」
自分達が“差別される”なら、自分達が“差別する”側に回ろうという魂胆というわけか。歴史的に度々ある話だ。
「魔法を使えるのは魔女だけなのでしょうか?」
「そんな事はない。魔女以外にも普通の魔女や、広義で言えば錬金術師も魔法を使っている」
翻訳が不完全らしい。この場合、普通の魔女というものは魔女ではなく、魔術師と分けて考えるべきだろう。
つまり魔女とは、魔女の国の構成員というわけだ。
「そうだ、そちらの部下は魅了を受けたか?」
最も接触したのはギークだろうが、バーゲストにそのような報告は届いていない。魔法の一部だろうか。
「魅了とは?」
「魔女が使う魔法の一種だ。最初は人間の判断を鈍らせ、徐々に思考を支配していく危険な魔法だ。ものによっては、目を合わせるだけで影響を受ける」
実際に見なければわからないが、バーゲストの所見では、ギーク他ブロウラーのメンバーに異常は見受けられなかった。
「それなら恐らく、受けていないでしょう」
「ならよかった。おたくらが魔女に操られたらと思うと、恐ろしいね」
魔女の国。この連邦では下手な国家よりも危険な勢力かもしれない。
「彼女の処遇は?」
「……魔女は見つけ次第処刑する事になっている」
当然か。何もない場所から武器を生み出し、人間を洗脳さえする。個人が持つ“才能”にしては、強大過ぎる力だ。制御できない力なぞ、他者からしてみれば脅威以上の何物でもない。
「了解した。その辺りの習慣に介入しない」
「そうかい……こっちとしては、どこの誰だが教えてほしいんだがね。でもダメなんだろう?」
当然、村長はバーゲストたちTF101が単なる連邦を旅する放浪者だとは考えていなかった。
見た事のない銃、命令に忠実な異形の獣。それに個々の装備を注視すれば、非常に合理的で高い技術力によって作られたものだとわかる。
連邦の工業都市と名高いシモニーの兵士ですら、これほどの装備は揃えられないだろう。
ならば、マーセル大陸外から来た人間と考えるのが妥当というもの。次元そのものを飛び越えた異世界の住民と想定しろというのは、さすがに困難というものだ。
「残念ながら。しかし、近いうちにわかると思います」
地球のSW-1侵攻はもはや確定事項。現地住民が真実を知るとすれば、地球側がその準備を整えた瞬間であろう。
「ぜいぜい、お手柔らかに頼むよ」
小さな村のいち村長でしかない彼には、そう言うしかなかった。




