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そいつもさすがに少し言いづらいのか、曖昧に言葉を濁した
___我らはあなた様を我が国にお招きすることを最優先に動けと命令されております。……あとはご自分で判断されてください。
俺は無表情のまま、少しの間考えた。
___……わかった。お前らについて行く。
全員がバッと顔をあげた。まさかこんなにすぐ決めるとは思っていなかったらしい。
___ありがとうございます!詳しい事は国王陛下がご説明なさると思いますので、数日中に王宮までおいでなさいませ。案内と護衛を兼ねて数人置いていきますので。
___ああ。……ただ、一つだけ、お前らに協力してほしいんだ。
それは、サーシャの結婚式まで俺を連れていくのを待ってほしい事。その間、従兄の現当主が暴走しないように押さえておいてほしい事。
……そして彼らは、しっかりと役目を果たしてくれた。
「おかげで、あんなに綺麗な彼女を見れた……もう何の心残りもないよ。」
「アレク様……」
「俺はサーシャが好きだ。愛してる。サーシャも俺の事を愛してくれているだろう」。でも……」
___アレク、大好きよ!ずっと一緒にいてね……。
(……彼女がくれた『愛』は母親や姉としての、家族としての『愛』だ。)
小さい頃はそれで充分だった……本当に、今だってすごく大切で。
でも、はじめて領主さまを見るときの彼女の顔を見た時……違うと思ってしまった。甘く、漕がれるような瞳。……それは、彼女を見つめる時の自分にもよく似ていて。
彼女の笑顔が好きなのに、その顔だけは見るのが辛く感じて、自分がどうしてこんなことを考えてしまうのかわからなくて……しばらくしてそれが『恋』だと知った。
でもそれを自覚した時、彼女の隣はもう他の男がいて……自分に許されたのは彼女の『愛する家族』という位置づけだけだった。
……そして、相手の男が優しい領主様で、彼女を本当に大切に想ってくれているのだと分かった時、この恋を諦めようとちゃんと思えた。
それからは、彼女が彼に笑っているのを見て……少し胸が痛む事はあるが、もう焦げ付くような感情を封じ込めておけるようになった。
……それでも、時々彼女がこちらを振り向いて、俺だけを特別に想ってくれたりしないだろうかと、醜い期待をしてしまうことも、ある。どんな事をしても、手に入れたいと願ってしまう事がある。
だから彼らから結婚の意思を聞き、次の日にこいつらと会った時、思ったのだ。
___この機会に彼女から離れよう。俺は、俺が彼女を傷つけてしまうのが耐えられない。
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