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PAGE.5

本日連続投稿しております。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 すごく恥ずかしい。サーシャは僕をもう一度ベッドにきちんと寝かしなおすと、キッチンに料理を作りに行った。

 そのあと、出してもらった料理はとても美味しかった。彼女にそれを伝えると、とても喜んでくれた。

(……そういえば、どれぐらい食べてないんだろう。)

 父さんたちが死んだ後も食べていたと思うのだが、記憶にない。

「ごちそうさまでした。」

「お粗末さまでした。」

 彼女はニコニコ笑って僕を見ていた。僕は食器をきちんと並べて、姿勢を正した。お世話になった人にはきちんとお礼をしなければだめだぞと、父さん達にいつも言われていたからだ。

「サーシャさん、助けてくれてありがとうございました。このご恩はきっとかえ……せるかはわからないですけど、ぜったいに忘れません。どうもおじゃましました。では……。」

 僕はドアのところまでタッと駆けていくと、もう一度彼女に向けてお辞儀した。

「……え、ちょ、ちょっと待ちなさい!あなたどこにいくの?」

 確かに、行くところはない。元々行くはずだった養護院は遠すぎる。

 返事のできない僕に、彼女が重ねて言った。

「それなら……ここに居ない?」

「え?」

「この家、部屋は多いんだけど、今は私しか住んでいないの。だからあなたがいても全然困らない。むしろ、賑やかになって嬉しいくらいよ。まあ、男の子と暮らすのは危ないかもしれないけど、まだ子供だし。」

「なっ!?ぼくもうこどもじゃ……!」

「じゃあ、あなたいくつ?」

「ここのつ……すいませんうそです。ほんとはむっつ……。」

「六つならまだ十分子どもです。ああーもう!そんな年の子を放りだせるわけないでしょう。」

 彼女はそういうと、僕の前で膝立ちになった。肩に手を置かれる。

「袖振り合うも多生の縁、って言うでしょ!ここで出ていかれて、私が気をもまないと思うの?挙句の果てにまた倒れられたりしたら……!」

 彼女の声はどんどん大きくなってきた。けれど、まだ頷けないでいる僕の手を、彼女がギュっと握った。

「行く所がないのなら、ここにいなさい。……ね?」

「でも、これ以上お世話になるわけには…。」

「全然構わないわよ!……でも、そうねえ。もし居候がいやなら、家のことを手伝ってくれる?そうしたら、ギブアンドテイクで心苦しくないでしょ。」

「ホントに、いいの?」

「もちろん!私の家族になってくれる?……アレク」

 にっこりと笑った彼女は、今までの中でいちばん綺麗だった。僕は、父さん達が死んでから、初めて笑った。

「うん!」

「やった!じゃあ、すぐにお義父さん達に会わせなきゃ!」

 その後会った、サーシャの両親たちもとても優しい人たちで、サーシャのいきなりの『弟ができたの!』という発言にも驚かず、『そうか、子供が増えるのはうれしいなぁ』『ええ。』と、あっさり僕のことを受け入れてしまった。

 こうして、僕はサーシャの家に住み始めたのだ。


                     *


「アレク、起きろぉぉぉ!」

「うわっ!……ってマリア。どうしてここに?……え!?今何時だ!?」

「もう十刻(八時半)くらいよ。まったくこんな日に寝坊するなんて!」

「やばい!……で、なんでここにいるんだ?」

 枕元に仁王立ちして、俺を叩き起した彼女は、サーシャの親友で隣に住んでいるマリアだった。すでにドレスアップを済ましている。

「サーシャに頼まれたの!あの子が自分で起きられるはずがないから、起こしてあげてって。

(くっ、その通りになってしまった。)

 ベッドから起き上がり、出ていくマリアに向けて訊く。

「サーシャはもう行ったのか?」

「当たり前!寝てるあんたがおかしいの。…全く、今日は何より大事な日でしょうが!」

「わ、悪い…。」

「じゃ、先行ってるわ。」

 そう言うと、マリアはすっと出て行った。

(…なんか、昔の夢見てたな。やっぱり……こんな日だからか。)

 しばし夢の余韻に浸っていたい気もしたが、そんなことを言っていられる時間ではない。俺は慌てて布団を片付け、着替え、家の片づけを残らず済ましてから教会へと走り出した。



お読み頂きありがとうございました!

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