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武術チートの異世界転生  作者: ハルジオン
幼少期編
22/37

腐敗と吸血鬼1

少し遅くなりました

俺がガラフの店を出るともう大分人通りが少なくなっていた。

もうゾンビの軍勢がこの街に到着するまで時間があまりないからだろう。

俺も急いで父さん達がいるだろう北門へ向かうため『三日月宗近』をアイテムボックスにしまい、すぐに走り出した。



北門に近づくにつれ冒険者の姿が多くなってきた。

俺をみては面倒くさそうな顔をする者がちらほらいるが、そんな事は気にせずに今も迎撃の部隊を編成しているらしい、騎士達が纏めている集団へと走っていく。

騎士達は俺の知っている視察についてきた護衛の騎士達で父さん達の居場所を聞き出し、北門のちょうど真上の城壁、北の城壁の中心へと向かっていった。


北の城門の上にやっとたどり着くと父さんと母さんが数人の騎士と冒険者達と話し合っているところだった。


「そうか、

回復が使えるものは全体に配置しそれを騎士か腕利きの冒険者が守るようにしろ

魔法か弓が扱える者は城壁の上から魔物が来た時に先制攻撃と援護射撃だ。

全体を三分割し二つの組が対応し、もう一組は休め

しかし、何かあった場合はすぐに対応できるようにしとけ。

私と妻と私が連れてきた騎士団長の三人がそれぞれ指示を出す。

私が正面

妻が左手側

騎士団長が右手側だ

君たち冒険者も三つに別れて対応してくれ。」

「了解しました。」

「よし、

俺たちはなるべくパーティ単位で纏まれ。

仲の良いパーティがあればレイドを組め、なるべく少数の敵に大人数で当たって無駄な消耗を抑えるんだ。

この街を何としても守るぞ!」

「「おお!」」

そう言って騎士達と冒険者達が解散していきその場には父さん達が残った。


確かに父さん達はこの中でもかなり強い方だ。

それに地位も指揮の経験もあるから下手な人がやるよりはよっぽどマシだろう。

それに三分割する事で休みながら戦うとともに何かあった時の対処まてまする事が出来る。ギリギリで戦っている時に何かあった時脆いから当然だろう。

それに指示を出す人が離れているよりも現場で指示を出した方が的確に指示を出せるだろう。


でも、父さんと母さんが離れるのは少し心配だな。


母さんは自分で回復魔法が使えるし、周りを騎士が固めてくれるだろう

それに何より後衛職だから前に出ることはなくそこまで危険はないだろう。

心配なのは…父さんだ。

父さんは自分での回復手段はポーションしかない。

それに、前衛職だから前線に出るだろう。

それも正面の最激戦と思われる場所に、だ。


母さんも父さんも俺の手は必要じゃないかもしれない、それでも俺には奥の手(・・・)があるしいざとなった時、何かできるかもしれない。

俺は父さんの側にいることにしよう。







戦闘準備が慌ただしくも終わり。

後は待つだけとなった。

準備をしている中俺は父さんに父さんの近くにいることを伝えた。

父さんはあまりいい顔をせず最後まで母さんの近くにいるように言っていたが、俺が折れないと知ると渋々ながら了承し、逆に父さんの近くにいることと、何があっても指示には従うことを約束させられた。


準備中は忙しくあまり気にする余裕は無かったが、準備が終わり後は待つだけとなると、

場はピリピリとした緊張感が支配していた。

今か今かと待ち構えながらも、来ないでほしいと矛盾した願い。

この街を、知り合いを、そして

自らの大切な者を守るために集まった戦士たちは壁の上と下でその時を待った。




痛いほどの沈黙を破ったのは

誰かの声でも動物のたてる音でもなかった。

遠くから

グチャッ グチャッ グチャッ

と微かに嫌悪感を煽る様な音が聞こえてきた

と、同時にみんなの緊張感がピークに達した時


それは現れた


もはや生前どんな顔をしていたかすら分からない程血の気の失せた醜悪な顔

眼球が無かったり、頭蓋骨の一部が見えていたりと思わず目をそらしたくなるような見た目をしていた。

しかし、ここにいる戦士たちは決して目をそらしたりはしない。

むしろ、戦士たちの顔には怒りが浮かんでいた。

死者を冒涜する術を扱う事に、愛する者達をその仲間に加えようとする事に対する猛烈な怒りが!

血気盛んな冒険者の一部には待機の命を守らずに今にも走り出しそうになるのを周りの者達が抑えていた。

数が多いとは言っても所詮はゾンビ。

それを率いるものが脅威だとしても自分たちなら殺れる(・・・)と思っていた時。

全員の予想外の事が起こった。

いや、正確には一部を除いて、だが


「人間ども

貴様等の罪をその命で償って貰おう。」


戦場には場違いな服に身を包んだ吸血鬼と思われる者()がいた。

一体でもかなりの脅威だがなんとかなるはずだった。

しかし、目の前の現実がそれを非常にも裏切った。


先程言葉を発したと思わしき吸血鬼に対し4匹の吸血鬼が恭しく膝まづいていた。


「さあ、贖罪を始めよう」


吸血鬼の貴族と5万のゾンビ対人間の絶望的な戦いが今始まった。

読んでいただきありがとうございます

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