相棒
戦闘に入れなかった…
俺は準備をするために街に出ていた。
もちろん父さんから許可を取り何かあったときのために家紋が入った短剣も貸してもらった。
まあ、騎士も1人だけ付いてきてはいるのだけれども、
街に出た理由は自分の武器を探すためだ。
俺が今持っているものは誕生日に貰った木剣と杖貸してもらっている短剣のみだからだ。
この街は小さいとはいえ魔物を狩って生計を立てている冒険者は多くいて、彼らが使う武器を扱う武器屋も多くあり、武器屋が多くあれば俺が扱える武器も数多くあるのではないかと思ったからだ。
よし、まずは1軒目
カランカラ「ここはガキが入ってくるとこじゃねぇ、今忙しいんだから帰ってママのおっぱいでも吸ってろ」
まさか開けた瞬間に怒鳴られるとは思わなかったよ。
今は時間が少しでも惜しいから次行こう、幸いこの通りに5件ほどあるからどっかしら大丈夫だろう。
10分後
まさか全滅だと思わなかった。
しかもまともに店に入れもしない。こうなったら短剣見せて事情でも説明するか?
いや、でも話しを聞いてもらうまでが大変だな。
…裏通りの客が居なさそうなところなら忙しくなくて相手してくれるんじゃないか?
そうして騎士には少し悪いが裏通りに入り武器屋を探す。
武器屋に入って2.3分歩けばいい感じに寂れた店を見つけた。
ギイィィ
ドアが錆付いていて開けずらかったがなんとか入ることが出来た。
「いらっしゃい、坊ちゃんが何の用だい?」
店主は大人にしてはかなり背は小さかったが体型はガッチリしていてかなりアンバランスな印象だった。
ドワーフというやつだろうか?存在だけは聞いていたがまさか会えるとは、鍛治が得意な種族らしいから作っている武器にもかなり期待が持てる。
そして初めて話を聞いてもらえそうな雰囲気だ、まあ、客がいなくて暇なのが大きな理由だとは思うが。
「あの、今回の戦闘に参加しようと思いまして武器を探しています。」
「戦闘は遊びじゃねぇんだ、ごっこ遊びとは違う。
死んじまったらそれまで
お前さんが死んだら悲しむ奴がいるんじゃないのか?
それを良く考えてから10年後にまた来な。」
なんかぶっきらぼうだけど優しい人みたいだな。
「いえ、遊びではありません。
守りたい人がいるんです。
その人達は私よりも強いですが、今回は一緒に戦わないといけない、戦わないと後悔する。
そう思ったんです。
ここでも売ってもらえないなら他に行きます。
売ってくれるところが見つかるまで探しますから。」
ドワーフの店主は俺をじっと見つめ
「ガラフだ。」
「え?」
「儂の名前だ。
お前さんの武器を作った鍛治師の名前くらい覚えとけ。」
そこまで言われてわかった。
どうやら俺に武器を売ってくれるようだ。
「でも、どうしていきなり?」
「ただ単に儂が暇だったからよ、
他の店は今はどこも忙しい
だから武器を売るぐらい儂がやってやる。」
「あ、ありがとうございます。」
でも、髭もじゃのおっさんのツンデレはキツイものがあるな。
いやいや、やっと俺に武器を売ってくれるんだからツンデレだろうがなんだろうが感謝しないと。
「で、坊主はどんな武器が欲しいんだ?
その身長じゃ大きい武器は持てんだろう
短剣かなんか探してんのか?」
「うーん、あって一番嬉しいのは『刀』なんですけど、無いですよね?」
「刀ならあるぞ?」
「え?」
「あ?
こんな外見だからって刀も無いと思ったのか?」
「いや、ちょっとあるのが意外でして。」
どういう事だ?正直ないと思っていたが…
勇者が広めたりしたのか?
確か勇者の外見は黒髪黒目とかだったから日本人だったりするのか?いや、でも普通の日本人が刀の作り方を詳しく知っているとは思えないし、とりあえず形が合っててそこそこ切れ味があればいいか。
「あの、
その刀ってここにあるんですよね?
見せてもらえませんか?」
「変わったガキだな
まあ、見た目からして普通じゃねぇがな。
今持ってくるから少し待ってろ。」
そう言ってガラフはカウンターの奥に引っ込んで行った。
少しすると奥に行ったガラフが戻ってきた。
手には刀らしき物が布に包まれて握られていた。
「ほれ、
こいつがここにある唯一の刀だ。
一応儂の最高傑作なんだぞ」
そう言いながら刀を包んでいた布を外すと、
そこには見事な日本刀があった。
「これはっ!
銘はなんて言うのですか?
いや、それよりこれを買わせてもらえないでしょうか?」
俺が急に早口でまくしたてるように喋り出したのに一瞬面食らった顔をしていたがすぐにガラフは
「いや、俺は気に入ったやつにしか武器は売らねぇ。
その中でも特にお前さんは気に入った。
特別にタダでやるわい
お前さんの身長にゃちぃとデカイがお前さんなら大丈夫だろう。
儂が今まで相手にしてきた奴らと同等、いや、それ以上にお前さんには大丈夫と思わせるナニカがある。
全く不思議なガキだ。
これはそう簡単に刃毀れとかするとは思わないが、偶にはもってこい、みてやる。」
そう言ってガラフは俺に日本刀を渡した。
「おっと、そうそう忘れるとこだった。
こいつにはまだ名前はつけてない
いつか使う奴が現れた時そいつにつけてもらおうと思っていてな、
だからお前が名前をつけろ。」
そうは言われても…
とりあえず鞘から抜いて見ると、
ゴクッ
刀身は見惚れるほどに美しかった。
これはまるで前世で見た最高の五振りの一つ
「三日月宗近…」
そう自然と言葉が出た。
「ふん、ようわからんが気に入ったようで何よりだ。
今回の戦いが終わったらみてやるから絶対また来るんだぞ。」
見た目とは違って優しいドワーフ、ガラフとの出会い、新たな相棒との出会いに感謝しながら絶対にまた、ここに来ようと心に決めて俺は店を後にした。
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