第2話
【涼太の気持ち】
僕は、これで大切な協力者を失った。もしかしたら僕の人生の大きな損失かもしれない。こうなったのは、ぜんぶ自分が悪いんだと思う……。
でも、神谷さんから指摘されるまで、僕にはよくわからなかった。
神谷さんのマンションから、アルマーニのスーツ、ゴールドの指輪、ロレックスの時計、アメリカン金貨のネックレスなど、いくつかお金になりそうなものを黙って持ち出した。
それを質屋に売って、お金に変えた。僕にはお金がないから。
家出してから、ずっとそうやって僕は一人生きてきた。それが悪いことには思えない。余裕のある人から、その余裕を少しわけてもらっただけ。
その人にとって大したモノお金じゃない。でも僕が生きていくためには必要なお金……。
神谷さんは「お金の大小じゃない。信頼の問題だ」って言った。
信頼って何だろう? よくわからない。
財布からお金を抜いて、お金になりそうなモノを持ち出したら、その人との関係は僕の中ではリセットされる。もう二度と会うことはないし記憶の中から消される。
神谷さんもそんな対象の一人だったはずだけど……。
ただ僕の夢を実現するために神谷さんはたくさんのことをしてくれた。僕にしてくれたこと、それが神谷さんのいう信頼なのだろうか?
信頼って「信じて頼る」って書くけど、僕の心は神谷さんを頼っていない。反対に神谷さんは僕を頼ってくれたんだろうか?
僕は信頼より信用の方がいい。「信じて用意」してくれるだけでいい。
「人の信頼を裏切りやがって」と責められた。信頼の意味はわからないけど、神谷さんには悪いことをしたと思う。神谷さんに言われるまで、それが盗みだという感覚はなかった。
「犯罪だ」と神谷さんは言った。そうかもしれない。ただ僕は僕が生きていくためにしていることが「犯罪」だと感じなかった。
「また病気が出たな」と言われた。
僕は神谷さんにすまないと思う。でもそれは神谷さんが僕の夢のためにいろいろとやってくれたことに対して、すまないと思うだけ。今回のことじゃない。
でも、お金を抜いたり、人のモノを持ち出したり、そういうときに僕はときどき記憶がなくなる。気がついたら自分の目の前に他人のモノお金が置いてある。
そう考えると、僕は神谷さんの言うように、本当に病気なのかもしれない……。




