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プリズン ホスピタル  作者: バーボン一号
3/3

病院の謎

和人が部屋から脱出していた頃、ハム太といえば


うーーん

「おかしいな、家にもいない。連絡もとれない。無視するような奴じゃないんだけどなぁ。」

律儀なことに和人に電話をかけていた。

「あいつがいないと俺、学校でぼっちなんだけど。」と、悲しい独り言をつぶやく。

そして一息つきチャリをこぎ出す。 行先は病院だ。

チャリをこぐこと十数分、徐々に木の陰から白い壁が見えてくる。

スピードを上げて入口の方まで行くと、目の前にドでかい病院が現れる。

「うわぁ、あいかわらずでけー。」

ハム太は、素直な感想を口に出す。チャリを適当に止め、そのまま入口に歩き出す。

回転する扉を抜けると、そこには病院とは思えない壮大なロビーがひろがっていた。

受付は横一列にずらっと並び、柱には水槽が埋め込まれており、魚がゆらゆら泳いでいる。

外から見ているときも思ったが、ロビーから病室まで行くのが病人にとって重労働なのでは?

と、思わせるくらいのでかさだ。

そして、その感想はあながち間違ってはいなかった。

なぜなら、和人の病室に近い廊下には

「 ひぃ、ひぃ、ふぅぅぅ、」

と、意味不明な息をして、汗をダラダラながすハム太がいたからだ。

自分でも体力がないことは分かっていたが、これは体力だけのせいだけではないと思う。

「 ひぃ、ひぃ、ふぅぅぅ、0721、ひぃ、ひぃ、ふぅぅぅ、0721、」

間に病室の番号をはさみながら廊下をさまようハム太。

「ぜ、0721 . . . はっ!」

病室をやっと探し当て、まるで砂漠でオアシスを見つけたような顔をする。

「ふっふっふっふっふっふぅぅぅ。この時を待っていたぞ。」

ガラッっと扉を開ける。そしてあたりを見回す だが、そこには和人の姿はいなかった。

「な、なんだと?」

どおいうことだ? カズは音信不通、行方不明。ってことなのか? ありえない、どこにいるんだカズ . .

ここで落胆より先に友の心配をするところが彼らしい。

「 どうしようか . . . 」 ハム太はしばし考え込む。

「 かえるか。」

そういって来た道を引き返す。 不思議と帰り道は行く時ほど汗はかかなかった。

つかつかと廊下を一言も喋らずに歩く。 看護師とはあまりすれちがはない。

ロビーまで来たところでハム太は考える。

でも一応、受付の人に聞いておくか、カズのこと。

「すいません。」

受付の人はにこっと笑って返事する。

「はい、なんでしょうか」

「えぇと、0721号室カ、和人って人が入院してたと思うんですけど。」

「和人、ですか」

「はい、白井和人です。」

受付の人はにこっとした顔を崩さず言った。

「白井和人さんの、この病院に入院していた記録はありません。病院をお間違いではありませんか?」

何故か受付の人の笑顔に一瞬ぞっとした。

「あぁ、そうかもしれません、はは、すいません。」

「いえいえ、では。」

ハム太は、作り笑顔を崩さずに早足で受付から少し離れた自動販売機まで行った。

小銭を財布から出しながら考える。

おかしい、 僕はここに一度来ている。お見舞いのために、なのに、受付の人は記録がないといった。

ありえないだろ。

甘ったるいココアのボタンを押す。

「ピッ  ガタン」 ココアが出てくる。そしてすぐ近くのベンチまで歩く。

ココアのプルタブを開けてぐいっと飲む。 暖かい物が喉を通過していく。

「ふぅぅぅ . . . . . 。」 一息つく。

何故だ? 何が起きている?  . . . . . 。

でも分かることはカズがいなくなったことにこの病院が関係しているということだ。

「とりあえず調べてみるか。」

空き缶をごみ箱に捨てると、ハム太はもう一度0721号室へ歩き出した。

ガラーという低い音と共にスライド式のドアを再びあける。

部屋は個室、カズ以外に使っている人はいない。中にはベッド、テレビ、机など普通の病院と変わらない。

ハム太は、よく注意しながら部屋を調べていく。

ベッドの下、冷蔵庫、テレビの裏などを見ていく。ふと、ハム太は子供のころを思い出した。

そういえば、某探偵アニメを見て名探偵になりたいって思ってた時期もあったな。

今はそんな気分だ。

「フッ、俺の名前は斉藤公 . . . 探偵さ。」

「今日はどんな事件が待っているのだろう。ま、俺にかかればどんな事件も瞬殺だぜ!」

病室が冷たい空気で覆われた。

. . . . . なっ、何 探偵ごっことはこんなにも虚しい物だったのか、無念。

てか調べなきゃ、何やってんだ俺。

だが、しばらく調べても手掛かりなにもみつけられなかった。

「くそっ、なんもねーな、どうなってんだ。」時間はもう5時を過ぎていた。

「さすがにもう帰るか。」ハム太は病室を出た。

ハム太は、廊下を歩きながら考えていた。

「だめだ、全然わからん、ってあれ?」気が付くとよく分からない所に来ていた。

「やっべ道間違えた、どこだここ?」だが廊下に地図があったので場所はすぐに分かった。

それにしてもやっぱでかいなこの病院。地図がでかくて分かりずらいよ。

地図には、A練、B練、C練 . . . と、たくさん練がある。

こんな多くて大丈夫なのか? あ、ほらこことか絶対日当たり悪いよな。0721号室は朝眩しそうだな。

そういえばカズも、眩しいってメールで言ってたな。

携帯を取り出してそのメールを見る。


6/07 Toハム太/Hromカズ Pm4:03 眩しい

夕方の日光眩しすぎ、溶けそう 写真も逆光でクソワロタ。


添付された写真には逆光で何が何だか分からないカズと思われる人がいた。

他のメールも見てみる。


6/09 Toハム太/Fromカズ Am11:47 家に帰りたい

昼飯に味がしない。肉がない 野菜、魚、野菜、

お前の肉くれよたくさんあるだろ お願いだー


短い文のくせに文句とイラッとくる言葉を的確にまとめてるな。   


6/09 Toハム太/Fromカズ Pm12:19 死にそう

この部屋に来る看護師隠し撮り 


写真が添付されている . . . 見なかったことにしよう。


6/11 Toハム太/Fromカズ Pm5:31 手術成功です

痛い 飯まずい グヘへへへ


大丈夫かこいつ、手術関係ないし。


6/12 Toハム太/Fromカズ Am10:08 絵かいた

めっちゃうまいぞ


このメールには、全然似てない俺の似顔絵写真が添付されていた。

俺こんな顔太ってないだろ . . . 太ってないよな?


「てゆうか、何でメールなんて見てんだっけ。」

あれ、と言って携帯を切ろうとした時、  

ん?なんだこれ、12日の写真の似顔絵は無視して、部屋の中から見た景色に高いビルが写っている。

このビルは確か化粧品会社のビルだったな。

0721号室から見たときはなかった気がするけど。

「どうも、おかしいな。」

6/7 の写真をもう一度見てみる。やっぱりビルが写っている。

地図で見る限り0721号室はA棟だ。A棟は東側に位置しているので朝眩しい。

だが写真が送られてきたのは4時だ。つまり部屋が一番眩しくなるのは夕方ということになる

しかも、ビルがあるのは西側だ。つまり、

「部屋が、違うのか?」

そうとしか考えられない。 もう一度地図を見てみる。西側から日が当たるのはおそらくD棟だけだ。

ハム太は急いでD棟へ向かった。

D棟はA、B棟より小さくて古い。そんほど古いわけではないが、他の棟と比べるとかなり古く見える。

0721号室は、A棟にあるため、真反対のD棟に行くには少し時間がかかる。

「くそ、無駄にでけぇ。」

思わず愚痴を垂らす。

すでに帰ろうとしてから10分以上たっているため周りを気にせずドカドカと走っていく。

そして走ること数分、

「これがD棟?」

D棟の入口まで来たハム太は、D棟の状態に驚いていた。

まず、廊下に電気がついていない、真っ暗だ。おまけに「関係者以外立ち入り禁止」の看板が立っている。

「てゆうかめっちゃ怖ぇ。」

関係者以外立ち入り禁止じゃなくてもまず誰も入らないだろう。

ええぇ今から俺ここに入るの?やべぇってこれなんか絶対出るって。

でも行かないとカズが、    なんか俺ホモみてぇ

いかんいかん、何を考えているんだ俺は、俺はカズを助けにきたんだろ。

ここで引き返したら来た意味ねーだろ。そんなのは友情とは言えない!

そして勇気を出して一歩踏み出した。その時、プルルルル プルルルルと、軽快な音楽が流れてきた。

「やべっ、マナーモードにするの忘れてた。」  だが、無視するのも癪なので一応出た。

「はいもしもし、 誰?母ちゃん? 今病院にいるからいった ・ ・ え? 夕飯?

わかった今帰る。」  ふう、、、、、、ま、1日程度は許容範囲でしょ。

その程度でなくなるものなど友情とは呼べないよな!  回れ右をしてドカドカ走っていくハム太。

だが、目の前に急にあの看護師があらわれた。

「ここは病棟ではありませよ。」と、相変わらずのにっこりとした顔でいってくる。   

「すいません、道に迷ってしまって。」と自分でも無理があるだろという言い訳をした。  

「あ、急いでいるんで、次から気を付けるんで。じゃっ。」と、無理矢理場を切り抜ける。 

何なんだアイツ怖えーよ。

一気に走り、外に出て、通って来た道を引き返す。

そしてハム太は、今日の夕飯を思い浮かべながらとっくに日の暮れた夜の闇に消えた。



ほんとすいません。

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