目は口ほどに物を言う
第七話
「こんなとこに呼び出してどうしたんだよ、苺佳。」
(嘘・・・。お兄ちゃん?)
私は驚きのあまり、お兄ちゃんに抱きついて居た。
「えっ、おっ、おい。」
「好きなの。お兄ちゃんが大好きなの。」
私の口から出た言葉は、この言葉だけだった。
『好き』
たった一言なのに、何故か言えない。でも、今は恥ずかしがってる場合じゃない。
「おにいちゃ・・・、じゃなくて、琉陽が好きなのっ。」
より一層、抱きしめる力を強くした。
「嘘・・・だろ?」
「嘘な訳・・ないでしょ。」
私は琉陽の問いかけにそう答えたのだ。私だって、勇気を振り絞って、告白したんだよ。琉陽・・・答えて?
「俺も・・・。苺佳が好きだ。世界中の誰よりも、魅那苺佳が好きだ。」
(うっ、嘘。琉陽、信じていいの?私自惚れてるのかも。幻聴まで聞こえて来た。)
「幻聴なんかでも、夢でもねえよ。俺が好きなのは、魅那苺佳。お前だけだっっっ。」
そう言って、琉陽が強く抱きしめてくれた。琉陽の背中は広くたくましい。本当に、男の人って思えた。やがて、手を離し、お互いに見つめ合った。そして、徐々に顔を近づけていき、焦れったいほどに時間を掛けて、唇を重ねた。触れるだけのキスをしたあと、琉陽がこう言った。
「何があっても、一生側から離れんな。」
「うん。」
そして、私達は階段を降りる間、手を繋いでいた。でも、手を繋いでいたのは、皆に見えない場所までだった。いくら学校といえど、スキャンダルが起きては、アイドルだけあって今は避けたい。それは琉陽かて同じだろう。
「あっ、苺佳〜。美術の用意してきたから、一緒に行こー。」
「ありがと南〜♡」
美術セットと筆箱を受け取ると美術室に向かって歩いた。その途中で南がこう言った。
「おめでとう、苺佳。私、苺佳の見方だよ。何があっても。」
「ありがとう、南〜。」
そんな会話を交わしながら、美術室にむかった。
そして放課後
今日は琉陽と一緒に帰る日。実は家族になってから今まで、一緒に帰ったことは無かったのだ。私は、記者に見つからないよう、伊達目を掛けた。すっとした顔の琉陽は、黒ぶちの伊達目を掛けている。どこからどう見ても、伊達目カップルだ。琉陽は芸能人だっていうオーラが出ていた。
(そんなに見つめんなよ・・・、我慢が出来なくなる。)
そんなことを言ってるように見え、目を逸らした。目は、口ほどにものを言うとはこのことであろう。そんなことに気付き、口元が知らぬ間に綻んでいた。この後、何が起こるのか、知るはずの無い私達は家に帰って、パニックに・・・?