一石二鳥
第二話 一石二鳥
「おはようございます。今日も宜しくお願いしまーす。」
今日も昨日に引き続きドラマの撮影。昨日より現場が緊張してるのは、今人気のモデル・HARUが今回の撮影に加わるという為だった。でHARUこと宇嘉川陽二。そう、私の幼馴染みである。噂では指摘がキツイと評判。だがプロ意識が高い為、HARUは今や海外にも人気のモデル。頑固なところは昔から変わらずらしいけど・・・。
「おいっ。そこ突っ立ってると、邪魔なんだけど・・・。」
「ごっ、ごめんなさい。」
私は頭を下げて立ち去ろうとすると、その人に声をかけられた。
「おいっ。お前・・・。」
私はそう言われて振り返った。その人はあの有名なHARUだった。
「なっ、なんでしょう・・・。」
わざと知らない振りをしてそう答えた後、HARUを見た。
「やっぱり・・・。久々だなっ、苺佳。」
HARUが私に向けてそういったあと、その場がシーンとした。それはそうだろう。私がHARUと知り合いだっていうのは南しか知らないんだ。お兄ちゃんには話したことが無かったので知らない筈だ。ふと、お兄ちゃんの方を見たら、それほど驚いては居ないようだった。
「苺佳、今日はお互い頑張ろうなっ。」
そう言って、肩にポンっと手を置き自分の持ち場に行った。入れ違いにお兄ちゃんが来たので、私は聞いた。
「お兄ちゃんっ。なんで知ってたの?私たちが知り合いだってこと。」
「まぁ・・、な。俺もHARUと知り合いだったんだよ。だからさほど驚きゃしねぇよ。」
そうだったんだ。私、聞いたことなかったから、こっちがびっくり。そんな時撮影が始まると声が掛かった。私は急いでそっちに向かった。
「1,2,3,アクション。」
「お兄様っ。待ってください・・・。もう、行かれるのですか?」
「ああっ、ごめんなっ。美鈴。一緒に居られなくて・・・。」
これは、夢のところだ。美鈴が兄・綺羅を追いかけるところで目が覚めるのだ。その綺羅役がこのHARUだった。
「大丈夫か?美鈴。随分魘されてたようだがっ。」
「大丈夫。湊様はどうして私の部屋に?」
「覚えていないのか。美鈴が気を失ったからここ迄運んでやったというのに。」
そう、美鈴が気を失っていたため、湊が運んだと言う設定だったのだ。その後も順調に進んで行き、撮影は終了した。
今日の私はやけに機嫌が良かった。撮影は無事終了し、その上HARUとも再開できたことが嬉しかった。これを一石二鳥というのだろう。今はショッピングをして帰るところだ。お兄ちゃんが付き添いで来てくれてるから、今は車に乗っている。
「ごめんね、お兄ちゃんっ。こんな事の為に貴重な時間を裂いてもらっちゃって。」
「ほんとだよっ。なんでこの俺が。」
とか言って、運転をしているお兄ちゃんは格好よかった。これって一石二鳥じゃなくて一石四鳥かもっ。そんなことを思いながら、車から降りた。知らぬ間に家に着いていたらしい。
「只今っ。」
「お帰り、苺佳。琉陽君。」
お母さんが出迎えてくれた。
「ご飯にしましょう。二人を待ってたのよ。」
私は鼻で臭ってみた。んー、今日はぶり大根の味噌煮と、唐揚げとシーザーサラダだ。
「今日の献立はぶり大根の味噌煮と、唐揚げとシーザーサラダよ。」
良しっ。正解。
「また正解したか?」
「うん」
その日は家族団らんを楽しみ、夜は更けていった。