ページ15 急襲
その部族の名は、シャウニン。
スタールージュを生み出したといわれる邪神、エルノウスを崇める部族だった。
今から360年前。
彼らは封印されていたスタールージュを解放し、その力で世界を支配しようとした。
彼らはスタールージュを操る事ができ、
更にはエルノウスより与えられた強大な魔力を持つという。
その時異世界から現れた少女とある少年の手で、
シャウニン族は幽閉され、
スタールージュは神の力で、遥か宇宙に封印された。
…はずだった。
「シャウニン族の生き残りが部族を復興し、
更にスタールージュの封印を解いてしまった。
そう考えるのが正しいと思う」
「シャウニン族の力はそれ程強力なの?」
「強力だ。
…そして、スタールージュを自在に操るというかなり厄介な相手だ。
でも、俺様よりは弱い」
「慢心はいかんぞ、リッシュよ」
「うえっ!?聞いてたのか…」
ガミガミヤシが現れて、グリニーダの声がした。
リッシュはまたガミガミヤシに怒られる。
「360年前は、リッシュもまだ人型だったし、
グリニーダも少しだけ若かった。
…やっぱりジレンとマリークを探さなきゃいけないみたいね」
「ジレンとマリークって?」
「ジレンとマリークってゆうのは兄弟の精霊なんだけど、
兄のジレンは雷の精霊。
これが結構好戦的で、暴れん坊なのよ…。
頭に血が上っちゃうと手を付けられないタイプ。
大体想像つくと思うけど、リッシュと相性最悪でね…。
マリークは正反対で、穏やかで賢い水の精霊なんだけど。
…シャウニン族が復活したとなると、2人の力は絶対必要なんだよねぇ…」
フィーナは「はぁ……」と大きく溜め息をついた。
混ぜるな危険の2人に挟まれてきっと大変だったんだろぅな。
シャウニン族…私に倒せるのかな…。
「ねぇ、壱斗くん…」
「何だ?」
「私達、360年前の王子様たちみたいに、シャウニン族に勝てるかな…」
どんどん自信がなくなってきた。
やっぱり私はただの高校生だもん。
「…なに言ってんだ!
やってみなきゃわからないだろ?」
「え…そのセリフ……」
王子様の口から発せられた意外な言葉に、私は動揺を隠しきれなかった。
「なんで…なんで壱斗くんが…」
そのセリフは、
初めて一緒に任されたクラス委員が不安で、
今みたいに弱音を吐いた時に、
壱斗くんが言ってくれた言葉そのまま。
言い方も表情まで同じ…。
「…妃波?
どうしたん……危ないッ!!」
王子様の叫び声にハッと振り返ると私に向かって飛んでくる塊が見えた。
もう間に合わない、と私は目をつぶった。
…その時!
ドンっと突き飛ばされて、私は地面に突っ伏した。
同時に、ガツッと鈍い音がした。
すぐに私が立っていた方向を向くと、王子様が地面に倒れる瞬間だった。
「壱斗クンッ!!妃波ッ!!」
フィーナの悲鳴に近い叫び声が響き渡った―――。