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【旧】幼馴染みの親友

作者: 首夏

『元クラスメートが異世界でハーレム勇者になっているようなんだが。』の結城くん目線の番外編的なものです。内容が薄いです

 俺の幼馴染みはめんどくさい奴だ。


 家が隣で、親同士が仲が良い。物心つく前から一緒にいる。幼稚園から今まで、全部同じ。

 もう、幼馴染みというより腐れ縁だ。腐りまくってる。早く朽ちないだろうか。

 友人は言う。

 幼馴染みとか王道だな!と。

 バカ言え。

 可愛い幼馴染みなら俺も大歓迎だが、あいつはない。ない。



 そんな彼女に、唯一感謝していることがある。





「和樹ー!聞いて聞いて!

 私、友達が出来た!」

「あっそう。………………えっ!?お前が!?」

「……おい、表でろ」

 それは暑い夏の日だった。

 何故こんな友達くらいで驚いているかというと、さっき言ったように、こいつ―――茜はとんでもなく面倒な奴だからだ。口は悪く、気に入らないことがあるとすぐ顔にも態度にも口にも出す。相手によっては手も出す(主に俺)。そして、理不尽で、我が儘。

 全くもって女子らしい集団行動が出来ないのだ。

 その服可愛いねー。そんなことないよー、××ちゃんの髪型もすてきー。――褒め合いキモい。

 ○○ちゃん一緒にトイレ行こうよー。いいよー。あ、私も行きたーい。じゃあ、みんなで行こうか――お前らいくつだよ。

 まぁ、こんな具合だ。

 高校生くらいならそれを受け入れてくれるような人もいたかもしれないが、小学高学年や中学でそれは不味い。

 嫌われたり、悪口は勿論言われたようだが、よくイジメにならなかったなと感心する。

 そして俺は、何故かフォローに駆け回る。

 何故、俺が。

 そんなことを(不本意ながら)していた俺は結構愛想が良くなり、男女共に友達が増えた。何故だ。


 話が逸れた。

 まぁ、そんな訳で茜に友達という友達は少ない。


 その日から茜の話題は、その子一色だった。

「それでね、夏月がね、」

 その子は夏月というらしい。

 夏月が、夏月は、夏月ナツキなつき。茜の話相手は少なく、しかも、今は夏休み。俺しかいないじゃないか、聞く相手。とか文句言いながら聞いてやる俺って……もう、俺、茜の兄貴なんじゃないだろうか。

 因みに、そういうと、

 何言ってんの。私が姉よ。

と言われるのがオチだ。この会話は昔から何度となく繰り返されている。

 夏月という子は、俺達と同い年。

 出会いは病院。夏月は入院しているらしい。

 色素の薄い髪と目。色白で、儚げに見えるのに、口を開けばその印象は裏切られる。飄々とした性格で、口がよく回る。茜と軽口の応酬をして、いつも茜が負けるらしい。


「なんか俺、会ったことないけど夏月に会ったら、

よっ、夏月、久しぶり!とか言いそうだわ…」

「アンタに夏月はもったいない。」

「……アレ?そんな会話だったっけ?」




 そして、時は流れ、俺達は高校生になった。

 茜はなんとかオブラートという言葉を覚え、俺のフォローがほとんどいらなくなるくらいにはなった。夏月との交流も続き、まだ夏月大好きっ子だ。


「和樹…」

「うわっ!なんでお前、俺の部屋にいんだよ!」

 2年の始業式が終わり、家に帰ると俺のベッドでうつ伏せに寝ている茜がいた。

 その茜がバッと起き上がると俺を睨み付けた。

「和樹、ズルい!ズルいズルい!!」

 俺は勉強机の椅子に腰をおろした。今度は何なんだよ、とため息をつく。

「夏月と同じクラスなんてズルいよー」

 また伏せる。

「夏月の名字、瀬名って言うんだな。初めて知った。」

 そう。俺は今回、夏月と同じクラスになった。

 夏月と茜、俺は同じ学校だ。俺達の学校はそこそこの進学校だ。

 夏月も行くと聞いたときは驚いた。夏月はあの夏一時入院していたわけではなく、幼い頃から入退院を繰り返しているらしい。だから学校にもあまり行けてないらしい。それでも頭が良く、この学校の入試もお手のもの、だったらしい。


「けど、今日は来てなかったぞ」

「春は気候が不安定だからねぇー

 そんなことより。

 ちゃんと夏月の力になりなさいよね。

 和樹の無駄な人脈でも使って。けど、変な奴紹介したら殴る」

「なんでそんなにお前偉そうなんだよ」

「和樹に夏月はもったいないわー」

「おい」



 5月。

「4月はちょっと病院の方に居ました。

 瀬名 夏月です。よろしくお願いします。」

 夏月が学校に来た。茜の話で、大分夏月のことは知っているが、実際見るのは初めてだ。

 茜が言った通りの大人しそうな容姿だ。こんな子が茜とぽんぽん軽口の応酬をするのか。ギャップありすぎだろ。


 茜が珍しく心配していたので、夏月は人見知りかと思ったが、話しかける女子とも普通に和気あいあいとしゃべり、結構社交的なようだ。

 向こうがこちらを知っているとは限らないので、他の生徒がいる時は話しかけなかった。


 放課後。

 日直だったため日誌を職員室に返し、教室に帰る途中で知り合いと会い、結構長く話してきた。やっと教室に戻ると人影があった。

 その人物は窓際の席に座って、窓の外の夕陽を見ていた。色素の薄い髪髪夕陽の光を反射して、光る。

 俺に気づいたのか、こちらを振り向く。

「あ、あの………えーと。

 いつも、茜がお世話になってます。」

 ………うん。俺、何いってんだ。

「?

 あぁ!もしかして、茜の保護者さんですか!」

 夏月は立ち上がってこちらに来た。

「保護者?」

 首を傾げる俺に、夏月はふふ、と笑みをこぼす。

「だって、あの茜の面倒みてきた人でしょ?茜は反論するだろうけどねー。

 こちらこそ、いつも茜がお世話になってます?」

 ニッと口角をあげて笑う姿からみるに確かに茜が話してた通りの人物のようだ


 その後、基本茜の話をしていた。

 もっとふる話題があっただろうに、上手く話せなかったのだ。

 夏月は茜の良いところも悪いところも分かっていて、悪いことを言うときも嫌味ではなく、親しみを込められていた。

 結城くんも茜に振り回されて大変だねー、という夏月の顔は笑っていた。


 そんな風に温かく笑う夏月に思い切って聞いてみる。

「あのさ……

 えーと、茜が迷惑かけてない?

 あいつ、お世辞にも性格いいわけじゃないから」

「うーん。まぁ、性格はよくはないよね。いい性格してるけど」

 うんうん、と夏月は頷く。

「……けど、私は、茜のこと大好きだよ。

 私ってこういう身体でしょ?だから、あまり親しい友達がいなかったんだよね。

 病院に知り合いは沢山いるけど、皆浅い付き合いなんだよね。自分よりうんと小さい子か、年配の人とか。

 だから、愛想はそこそこ良いつもりなんだけど、それより先の進み方が分かんなくてねー…

 困ったものですよー」

 遠くをみながら話していた夏月は誤魔化すように、声の調子あげケラケラ笑う。

 茜の話す“夏月”は飄々としていて、面白くて、あまり自分の弱いところを見せない“強い奴”というイメージがあった。けど、やっぱり夏月はただの高校生で、強い部分も弱い部分も皆と同じようにあるのだろう。当然不安も。

「そっか。けど、な……瀬名なら友達、沢山出来ると思うぜ?瀬名の性格はすっきりしてて、話してて気持ちいいし、楽しいよ」

 夏月の真似をしてニッと笑う。

「……そりゃどうも。

 …なんか茜が言ったこと、分かる気がする。」

「? 茜が何て言ったの?」

「黙秘権を発動します。」



「今日瀬名と話したよ」

 またもや勝手に俺の部屋に入ってた茜に声をかけた。茜は漫画をよみながら、そーなんだー、と生返事をする。

「……!?

 え!?誰って!?瀬名って、夏月!?」

 勢いよくこちらをみる茜の口はかっぽり空いている。アホ面だな~、と笑うと脛を蹴られた。

 文句を言う俺を無視して、スマホを取り出す。

「あ、夏月?

 今日学校来てたってほんと!?

 ……。そんな!私聞いてないー!」

 電話口の向こうから笑い声が聞こえる。どうやら夏月は茜を出し抜けてご満悦の様子だ。


 そういえば、と茜が口を開く。さっきまで腹を立ててたくせに、今は寧ろご機嫌だ。夏月の茜への力が恐ろしい。

「なんで和樹、夏月のこと苗字で呼んでるの?

 前まで下の名前だったのに。」

「……。

 確かに言われてみればそうだな。なんでだろ?

 まぁ、知ってたけど、一応初対面だし?」

「……ふーん。

 ほぼ初対面の人間を男女関係なく下の名前で呼ぶような奴がよく言うわねー」

 ふぅ、と茜はため息をつく。

「そんなんだからファンクラブなんかできるのよ」

「! いや、それ関係ないだろ!

 その話題持ち出すなよな!」

 あれは、ふざけてやってるファンクラブもどきであって、ファンクラブではない!断じてない!

「あ!お前、それ瀬名に言うなよ!」

「はぁ?なんでよ」

 眉をひそめられて問われ、ぐっと詰まる。

「いや、だって…か、勘違いされるかも、しれないだろ。……女たらし、とか…」

「たらしじゃない。」



 こうして兄妹、いや姉弟の言い合いは続いていった…




 夏月は学校に来たり来なかったり。長期休みはあまりないが、やはり休みは多かった。保健室にもよく行っていた。

 けれど、余り体調が悪そうな姿を見せていなかった。口数が少なくなってかろうじて、元気ないかな?って思うくらいだ。さっきまで周囲の人と話してたのに、いつの間にかいない、なんてよくあった。

 分かりにくいことこの上ない。

 そんな不器用な夏月にひやひやして、よく様子を伺っていたが、クラスからの受けが悪いようではない。……そこらへんだけ器用だな。

 夏月は特定の友人を新しく作った様子はない。休み時間毎ごとに茜がくるからかも知れないけど、夏月は誰とでもそれなりに仲がいいが、ずっと一緒にいるような奴はいないようだ。少なくとも、このクラスには。

 そんな夏月と、俺はあまり話せていなくて。他の奴を交えて話すことは多々あるが、一対一は一言二言くらい。それも茜のことばかり。

 

そんなモヤモヤする内に時間はあっという間に流れて、あまり待っていなかった夏休みがやってきた。




「和樹!」

「……なんだよ」

 バタン!とドアを開け、やって来たのはお馴染み、茜。勝手に入ってくんな、と言うのを諦めたのはいつだっただろうか…

 力なく内輪で扇ぎながら、声をかけた。

「あれ、茜補習は?」

「補習じゃない!課外と言いたまえ!」

 ぐっとこぶしを握り言う。

 茜は高校にギリギリの成績で入った。今のところ赤点をとったことはないようだが、良くもない。そして、塾にも行ってない。そんな茜は担任にほぼ強制的に夏休みの補習に参加させられているのだ。

「で、用事は?」

「今日の午後からほしゅ…課外があるの忘れててさぁ……かくかくしかじか、と言うことでお使いに行ってきて。」

 そう言って茜は袋を渡した。

「……いや、説明になってなかったぞ」

「察してよ」

「バカ言うな。補習だからって八つ当たりすんな」

 ため息をつくと、茜は頬を膨らませた。

「だって、今日の補習は長門先生なんだよ!?あてられるーっ!」

 長門先生とは茜の担任の先生だ。何かと茜を構っている面倒見のいい先生だ。素直に反応する茜のことをかなり気に入っている。もう一度言おう。かなり気に入っている。

「……和樹。今日は、本当にお願い。

 うーん、ほら。なんか奢るわ。電車賃も出すし」

 真面目な顔でお願いしてくる珍しい茜に驚く。なんだこれ。こわっ

「あー……

 まぁ、俺も今日は暇だし、行ってやってもいいよ?」





 そういう訳でやって来ました、病院に。


 コンコン

 はーい、と声をかけられ、ドアを開ける。

「……。あれ?結城くんじゃない?どうしたの?」

 そこにはベッドに座る夏月がいた。

「あー、久しぶり。

 茜に頼まれて」

 挨拶もそこそこに、茜から渡された袋を夏月に渡す。

 茜曰く、昨日今日と夏月は検査入院だそうだ。また、何かあったかと思ってドキッとした。

「ありがとー

 お使い?御苦労様です。あ、座って。

 茜は今日どうしたの?」

「あいつは、今日は補習。忘れてて、瀬名に渡せなかったらしくて、頼まれた。」

 壁際に置いてあった椅子に座る。

「……そんな遠くじゃ話しにくくない?」

 夏月が首を傾げながら言う。

「あ、おう。そうだな、うん。そっちいくよ」


 さて、何かな?と夏月は袋を覗く。

「! おぉ!

 見て見て、結城くん!」

 はしゃいだ様子で見せてきたものは、オルゴールだった。透明なガラスケースに入っており、中が見えるようになっている。

「ふふふ。今年はなかなか豪華ですねー」

 目に見えてご機嫌な夏月の言葉に少し引っ掛かる。

「今年?毎年送ってんの?」

「私、今日誕生日なの」

 さらっとオルゴールを見ながら夏月は答えた。

「そうなんだ!?知らなかった

 うわぁ、俺何も持ってきてないよ

 知ってたらなんか買ってきたのに…」

 茜も教えてくれれば良かったのに…

 落ち込む俺に、夏月は笑って言った。

「別にいいよ。たかが、誕生日だよ。落ち込むことじゃないじゃん。

 それに、今日、これ持ってきてくれただけで十分です。

 しかし、茜よくこんな凄いもの買えたなぁ。茜、この前お金ないって嘆いてたのに」

「そういえば、俺茜にこの前金貸したわ」

「成る程。らしいなぁ~

 ということは、これは結城くんからのプレゼントでもあるわけだね。

 結城くん、ありがとう」

 夏月が笑うのはよく見るが、いつもあっけらかんとした笑い方なので、こう、優しく微笑まれると、少し調子狂う感じだ。

「…いや、けど、俺は貸しただけだし」

「そんな細かいことはいいじゃない!そこは感謝を受けとっくべきでしょ?」

 いつものように夏月はニヤッと笑う。流された感が半端ない。

「…じゃあ、来年。来年はちゃんとプレゼント用意するよ。

 あ。瀬名。

 誕生日、おめでとう」




 

 めんどくさいだけだと思っていた幼馴染みに感謝していることがある。

 幼馴染みのおかげで、夏月のことが沢山知れた。夏月に会えた。

 姿を見れただけで、今日も頑張ろうと思える。少し話せただけで、気持ちが明るくなる。笑っている顔を見るだけで、こちらまで楽しくなる。

 これって、とても、幸せなことではないだろうか。






 来年、夏月に何送ろう。そんなことを浮かれながら考えてた俺は、来年がくることを信じて疑ってなかったのだった。





※『元クラスメート(以下略』と絡めた捕捉

夏月「結城くんってまわりの人、ほとんど下の名前で呼ぶのに、私は苗字だから名前知らないと思ってたよ」

和樹「………」←心の中では呼んでたとは言えない



因みにファンクラブもどきは本当にファンクラブではありません。

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