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あの夏を忘れない  作者: エイノ(復帰の目処が立たない勢)
第二章 甲子園への道程 二年生編
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決戦の大舞台

◇◇◇◇◇◇




「あ――っと、山岸君、また打たれた。これで十点目が追加されます。やはり、甲子園には魔物が住んでいるんですかね?」




「はぁ……はぁ……はぁ……夢か」


 甲子園出場を決めてから、毎晩のようにめった打ちにされる夢をよく見る。念願だった甲子園が、ここまで重圧を与えるとは思わなかった。

 ぐっしょりと濡れた額の汗を拭いながら、目覚まし時計に目をやる。まだ夜中の三時だ。すっかり目が覚めた僕は、体を起こしほんの少しだけ窓を開けてみる。清々しい風……夏の匂いがした。


「やっとここまで来たんだ……僕は負けない」


 拳を握り締め、自らを鼓舞する。学校や友人、近所の人のみならず、県全体が明秋高校を応援している。そのプレッシャーを背負うことは、並大抵のことじゃない。

 そんなことを考えていると、携帯にメールが入った。


「こんな時間に誰だろう……」


 僕はそっと携帯を手にし、メールを開いてみた。


『こんな時間にごめんね。まだ寝てるよね? いよいよ今日抽選だね。大舞台で活躍する蓮ちゃんを祈ってるよ』


 メールは、千秋からだった。千秋は見た目に反して、携帯オンチだ。メールだって、付き合ってこのかた一度だって送って来たことなどなかった。女の子らしい絵文字もなく無機質だけど、何より一生懸命僕の為にメールを打ってくれたことが嬉しかった。

 汗と涙が入り交じる中、僕は千秋に返信をした。


『ちょうど目が覚めたとこだったよ。メールありがとな。必ず甲子園で勝つから、応援してくれよな』


 ありふれた言葉だったが、何度も消しては書きを繰り返した結果がこれだ。


「もう一眠りするか……」


 体を伸ばした後、再びベッドに潜り込むと、千秋からメールが届いた。ただ一言『うん』と。僕はそのメールを保護すると、目を閉じ眠りについた。




◇◇◇◇◇◇




 その日の午後、練習を終え部室に集まっていると、東海林さんから電話が入った。


「対戦相手が決まった。大阪代表のPM学園だ……」


「PM学園?」


 東海林さんにそう返すと、メンバーは驚愕した。

 PM学園……全国でも知らない人がいないくらいの強豪だ。過去に多くのプロを、排出しているのも有名で、読捨ガイアンツの桑原や、東部ライゴンズの清田もPM学園のOBだ。


「山岸、山岸? 聞いてるか?」


「あっ、はい。聞いてます」


「試合は一週間後の第二試合だ。皆にもそう伝えてくれ。じゃあな」


「はい……」


 東海林さんは用件だけを述べると、電話を切った。


「PM学園か……初戦の相手としてはもってこいだな」


 内藤は嬉しそうに、そう語った。その言葉の裏には、全国制覇するには強豪を打ち破る必要があるという意味が込められていた。




 後日、僕達は開会式に向け、兵庫県入りした。初めて生で見る甲子園の外観……歴史を感じる佇まいに、僕は鳥肌が立った。

 そして開会式に向けて始まる入場行進……アルプススタンドまで埋め尽くされた大観衆、全国から集まった強豪の数々……対戦相手のPM学園の他、鹿児島代表の鹿児島総業や、岩手代表の華巻西の姿も見える。そこに飛び込むように、我が明秋高校。

 やがて入場行進が終わると、選手宣誓が始まった。選手宣誓は、宮城代表天台育英の本多さんだ。その姿は堂々としている。


「宣誓、我々はスーポーツマンシップに則り、この夏を全力で駆け抜け、最後まで諦めないことを誓います。20〇〇年〇月〇日。選手代表、本多圭吾」


 大観衆からの大声援に見守られ、本多さんは戻っていった。


 いよいよ、始まるのだ。この後、試合も行われる。そして、早くも歓喜をあげるチーム、涙を流すチームが生まれるのだ。甲子園とは、高校野球とはそういうものだ。無論、僕達も例外ではない。だからこそ、全力で悔いのないように戦うのだ。


――絶対に勝ってやる。そして、この甲子園に校歌を響かせるんだ――


 僕は唇をキュッと噛み、悪夢を払拭するかのようにそう誓った。

甲子園での、明秋高校の活躍をご期待下さい。

ますますの応援待ってます。

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