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あの夏を忘れない  作者: エイノ(復帰の目処が立たない勢)
第二章 甲子園への道程 二年生編
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新学期到来!

 ここから第二部の始まりです。

今後も応援宜しくお願いします。

 桜の花が咲き乱れ、新学期がやって来た。去年入学した頃と比べると、身も心も大人になったと実感する。


「おはよう」


 内藤達と早朝の自主トレを済ませ、いち早く教室でたむろっていると、見慣れた顔が続々とやって来た。

 椅子にもたれ掛かりながら、校庭の先にある景色を眺めている隣で、内藤が大きな欠伸をする。


「ふふっ……」


 それを見て、僕は鼻で笑った。間髪いれず、内藤は僕に突っ込んでくる。


「何が、可笑しいんだよ」


「何か、懐かしいなって」


「そう言えば、俺達が初めて話した時も、こんな感じだったよな」


 あれから一年……月日の経つのは早いものである。


「内藤、今年こそ甲子園に行こうな」


「当たり前だ」


 一年前は、夢のまた夢と思っていた甲子園も、今では現実味を帯び冗談には聞こえなくなっていた。


――今年こそは――


 そんなことを思っていると、授業開始のチャイムが鳴り、教室のドアが開いた。


 そこに現れたのは、二階堂……即ち、僕達野球部の監督だった。


「え~、今日からお前らの担任になる二階堂だ。宜しくな」


 監督は僕達の視線に気付き、それ以上話さなかった。野球部では、必要以上に罵声を浴びせる態度を見せたが、授業となると真面目そのものだ。

 監督の受け持つ授業は、顔に似合わず数学だったのだが、これがまた解りやすい。一年の頃は退屈な授業に居眠りをすることが多々あったが、監督の授業では居眠りをすることがなかった。





◇◇◇◇◇◇





 放課後、新学期としては初めての練習に、僕は胸を踊らせていた。何故なら、新入部員が入ってくるからだ。

 僕と内藤は、十人も来れば、ありがたいと思っていたが、予想に反して今年の新入部員は大豊作だった。何と、五十人もの入部希望者がいたのである。

 これには東海林さん達も驚き、僕達二年生も、うかうかしてられないと感じた。やはり、部活が強くなれば、入部希望者が増えるのは自然の流れのようだ。

 東海林さんは早速入部希望者の一年生を集めた。


「まずは、入部希望をしてくれて礼を言う。俺は、キャプテンの東海林だ。我々明秋野球部は、夏の甲子園を目指している。生半可な気持ちではいかないのは重々承知だ。興味本意でここに来たなら、帰ってくれ」


 東海林さんは、揺るぎない気持ちを入部希望者に言い放った。

それは東海林さんなりの、(ふるい)の掛け方だったのである。

 甲子園への道程は険しいと肌で感じた一年間。本人達の為にと思っての発言だった。


 一週間が経ち、二週間が経ち、五十人だった入部希望者は、半分までに減った。それだけ明秋野球部の練習は、過酷になっていたのである。



◇◇◇◇◇◇




 四月も終わりに近付く頃、千秋からある相談を持ち掛けられた。


「蓮ちゃん、あのね。私、正式にマネージャーになることにしたよ。とりあえずは、佳奈さんの下で、今まで通りバックアップするつもり」


 僕は、その言葉を聞いて嬉しかった。千秋が傍に居てくれたら、力は何倍にもなる。


「千秋、ありがとう。必ず甲子園に連れて行くからな」


「うん」


 僕はそう言葉を発することで、自分を奮い立たせた。内藤達も俄然やる気を出し、僕達は新たな一歩を踏み出した。




◇◇◇◇◇◇




 千秋もマネージャーとして板につき始めたある日、東海林さんの提案で紅白戦を行うことになった。紅白戦の目的は一つ。即戦力となる一年生の発掘だ。夏の甲子園を勝ち抜くには、厚い選手層も必要不可欠であり、レギュラー陣の危機感を促す目論みもある。

 新入部員の一年生は、バラエティーに飛んでいて、松戸山中から来たキャッチャー『最上(もがみ)健太(けんた)』を初め、内野手、外野手と一通りチームが出来るほどの人材に恵まれていた。


「よし、チーム分けをする」


 東海林さんは、部員全員を集めた。昨夜、東海林さんと二人で決めたチーム分けである。


「まず、白チーム。ピッチャー須賀。キャッチャー内藤。ファースト一年の榊原(さかきばら)。セカンド同じく一年の松田(まつだ)。サード木下。ショート広野。レフト俺。センター一年の一條(いちじょう)。ライト同じく一年の新井(あらい)でいく。今呼ばれた者は前に出てくれ」


 ここに一年生を含む白チームが発足した。続けて赤チームは、僕が発表した。


「赤チームは、副キャプテンの僕が発表します。まずピッチャーは僕。キャッチャーは一年の最上。ファースト市原。セカンド鈴木さん。サード一年の浅野。ショート一年の箭内(やない)。レフト一年の堀田(ほった)。センター金沢。ライト大杉。以上」


 名前を呼び上げた瞬間、大杉は目を丸くした。大杉は、プレート2を改造してくれた奴である。

 今まで表舞台に出たことがない大杉は、名前を呼び上げられ喜びを隠せないようだ。たとえ補欠といえど、ここまで厳しい練習に耐えて来たのだ。

 後輩達に高校野球の厳しさを教える為にも、大杉には頑張ってもらいたいと考えていた。



 東海林さんとジャンケンの結果、僕達赤組は後攻になった。

僕は、マウンドに駆け登る。野球をするには良い季節になって来た。

 心地好い風が吹く中、投球練習を始める。マスクを被る最上は、内藤とはまた違うタイプだが、期待は持てる。


「プレーボール」


 主審を買って出た監督が、そう言い放ち明秋野球部初の、紅白戦が始まった。


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