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あの夏を忘れない  作者: エイノ(復帰の目処が立たない勢)
第一章 陸上と野球 一年生編
12/88

合宿の成果を

 第一打席でやろうと思っていることは決まっていた。

僕の俊足を活かした、セーフティバントだ。

 それを悟られぬように実行出来るかが問題だ。

 相手ピッチャーは、大きく振りかぶり第一一球を投げた。

僕は予定通り、初球を見送った。外角高めだが、判定はストライク。

 二球目、絶好のボールが僕に舞い込んだ。すかさずバントの構えを見せ、三塁方向に転がす。

 慌てて三塁手もさばくが、そこは僕の方が一枚上手だった。

ノーアウトで出塁。きっちりと、一番打者としての役割を果たしたのだ。

 続く二番の鈴木さんが送りバントで僕を送り、ワンナウト二塁の先制点のチャンスが巡ってきた。

 ここで登場するのが内藤だ。


「内藤、頼むぞ!」


 僕がそう言うと、


「任しておけ!」


 と、自信たっぷりに豪語する。しかし、その自信とは裏腹に内藤は打球を詰まらせ、セカンドゴロに倒れた。

 その間に僕は三塁へと飛び込み、ツーアウトながら更なるチャンスをもぎ取った。

 続く打席には、我らがキャプテン住田さんである。住田さんは、通常よりバットを短く構える。恐らく当てにいく作戦だろう。

 二球続けてボールの後、住田さんは一旦バッターボックスから離れた。相手ピッチャーのリズムを崩す、住田さんの頭脳プレーだ。

 一呼吸おいて構えたバットは、先ほどとは違って通常に持ちかえられていた。

 相手チームはそれに気付かず、前進守備に切り替える。投げられた球は、高めに甘くストライクゾーンに吸い込まれていく。




――キィィィン――




 打った瞬間、ベンチで待機する誰もが立ち上がるほどの大きな当たりだ。打球はグングン伸び、センターオーバーのタイムリーツーベスになった。

 僕は楽々ホームを踏みつけ、まずは一点を手に入れた。

二塁ベース上では、住田さんが高々と拳を突き上げる。

 練習試合で、あれほど大敗を喫した成南高校相手に、先制点を手にしたのだ。

 明秋ナインは、試合に勝ったくらいの勢いで、大いに盛り上がった。


 しかし、ベンチに戻った僕は、少し気がかりなことがあった。

成南のファーストを守るゴツい男だ。

 以前の練習試合では見掛けなかったその男が気になり、僕は千秋に頼みプレートを持ち出し標準を合わせた。



強肩C

打撃力S

守備力C

走力D

ガッツS


スキル 『一発逆転』


『規格外の打力は、芸術ものでしょう。まだまだ改善の余地はありますが、今後が楽しみです』



 僕は、そのステータスを見て言葉を失った。

驚愕するほどの打撃力。住田さんほどの人さえAランクだと言うのに、その男はSランクなのだ。

 僕はその男が気になり、注意を払うことにした。

 一方、五番打者の神田さんは見逃しの三振に倒れ、二塁残塁のまま二回の表、成南の攻撃に変わる。

 初めて手にした先制点に、ナインのテンションは最高潮に達していた。


「四番、ファースト 藤堂君。背番号3」


 アナウンスが流れると、成南ベンチはわいた。


 藤堂はノシノシと、慌てず急がず右バッターボックスにやって来た。ゆっくりとバットを構え、遠くを見つめる。その構えからも、かなりの強打者だと推測出来た。


 木下さんは、様子を見るため二球続けて外角にボールを外した。

内藤も殺気を感じ、警戒しているのだろう。良いリードだ。

 続く三球目は低めに決まり、カウントワンストライクツーボール。

 更に同じコースに木下さんは、放り込む。しかし、藤堂は微動だにしない。

 カウントツーツー。

 木下さんは内藤のリードに従い、五球目も同じコースに投げようとした。


「しまった!」


 木下さんの投げたボールは、すっぽぬけ高めに浮いてしまった。


「まずい!」


 僕がそう言った瞬間、内藤のキャッチャーミットから『ズバン』という音が響き渡る。

 結局、藤堂は一度もバットを振ることなく、三振に倒れた。



◇◇◇◇◇◇



 毎回ランナーは出すものの、何とかピンチを切り抜け、1-0のまま五回まで試合は進んだ。

 そして、僕達に追加点のチャンスがやって来たのだ。



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