成南高校戦開始!
サードを守る僕の左手に、尋常じゃないくらいの汗が吹き出る。
後がない公式戦は、こういうものなのかと実感した。
ここで捕捉として、明秋高校の守備位置を紹介しよう。
ピッチャー 二年生 木下 剛
右投げ右打ち
投手力C
打撃力D
守備力C
走力C
ガッツB
キャッチャー 一年生 内藤 大翔
右投げ右打ち
強肩A
打撃力A
守備力B
走力D
ガッツSS
ファースト 三年生 石塚 真人
右投げ左打ち
強肩B
打撃力B
守備力B
走力C
ガッツC
セカンド 二年生 鈴木 誠
右投げ右打ち
強肩C
打撃力B
守備力A
走力A
ガッツD
サード 一年生 山岸 蓮
左投げ左打ち
投手力A
打撃力D
守備力AA
走力S
ガッツS
ショート 三年生 住田 龍之介
右投げ左打ち
強肩B
打撃力A
守備力B
走力A
ガッツA
レフト 二年生 東海林 武彦
右投げ右打ち
強肩B
打撃力C
守備力C
走力C
ガッツA
センター 三年生 五十嵐 勉
右投げ右打ち
強肩A
打撃力E
守備力B
走力A
ガッツB
ライト 二年生 神田 東信
右投げ左打ち
強肩A
打撃A
守備力E
走力E
ガッツC
以上が、明秋高校の守備位置だ。
ピッチャーの木下さんは深呼吸をした後、両手を空高く掲げる。
「締まって行こう!」
「オォォォ!」
気合いを入れるように、それに答える。以前までは、この声だしさえままならなかった。チームの団結力を作るには、声だしが必要不可欠だと皆知ったのだ。
成南の一番バッターが、右バッターボックスに構える。内藤は木下さんにサインを送る。どうやら、一球目は木下さんに任せるらしい。サードの位置からでも、そのサインは容易に掴める。
――ザシュ――
木下さんはマウンドの土を蹴りあげ、大きく振りかぶり、第一球を投げた。
風を切り裂き、内角低めにボールは外れた。結果的にボールにはなったが、ストライクになってもおかしくないくらいのコースだ。
どうやら、立ち上がりは悪くないようだ。最初の一球を見て、僕はそう思った。
続く二球目は、目の覚めるような投球だった。
――ズバン――
ど真ん中に投げられたボールは、内藤のキャッチャーミットに吸い込まれた。文句なしのストライクだ。
ベンチの佳奈さんと千秋は、思わず声を上げる。
「ナイスピッチング!」
その声援を聞いた木下さんの白い歯が溢れる。
カウント、ワンストライクワンボール。
三球目、外角に僅かに反れたボールをバッターが振り抜く。詰まった当たりは、ツーバウドしてショートの住田さんに転がった。
住田さんは、これを難なくさばきワンナウトをもぎ取った。
住田さんは、人差し指を高々と挙げ、
「ワンナウト!」
と、叫ぶ。
照り付ける太陽の下、僕は思った。
『野球をやって良かった』と。
その後、二人目の打者を三振に打ち取り、三人目はピッチャーゴロに打ち取った。
この回僅か三人……三者凡退に打ち取ったのである。
そして、我が明秋高校の攻撃が始まるのであった。
打順は、
一番 山岸
二番 鈴木
三番 内藤
四番 住田
五番 神田
六番 石塚
七番 東海林
八番 五十嵐
九番 木下
一番バッターの僕は、ネクストバッターサークルで軽く素振りをした後、左打席でバットを構えた。
「お願いします」
ヘルメットを取り、一礼をする。
何だか、嘘みたいだ。昨日、今日始めたばかりの野球で、この場に立てるとは。
そんなこと思いながら、マウンド上に立つ成南のピッチャーを見つめた。