剣と幼馴染み
「…ってえ…」
笠原 蛍斗<かさはら けいと>。
それなりに腕はたつし、剣士の中で弱いか強いかと聞かれたら、強いの部類に入る(と思う)。
そんな俺が今、剣の稽古でなぎ倒された。
「駄目だね、ケイ。」
幼馴染みの、桐生 明日香<きりゅう あすか>。
コイツにだけは、どうも勝てない。
黒い髪を高めの位置でツインテールにしている、一見普通の女子。
なのに、コイツに木刀を持たすと、もう俺はどうにもできない。
どれほど今までの稽古を思い出してみても、勝てた記憶がない。
新魔導時代。今俺たちが生きている時代だ。
人類は新たな力、魔力を発見し、研究を重ねた。
しかしそれは争いを加速させた。魔導兵器が作られ、人体実験により魔導士が生み出され、命のバランスが崩れたことによって、魔物が発生するようになった。
そんな世界の中、魔力の脅威から誰かを守るために、俺は剣技を習っている。明日香の家である、この桐生道場で。
「もう一度行くよ」
明日香が木刀を構えなおす。後継ぎなだけに、明日香はこの道場で2番目に強い。
1番は、やはり明日香の父親だ。
「ちょ、待てストップ!肩痛えよ!」
「ああ…さっき寸止めしそびれたから」
「しろよ!!」
明日香は無邪気に笑う。大人びていて、学校でも謙遜されているらしい明日香は俺だけにこうして笑う。
それがなんとなく、くすぐったかった。
「とりあえず休憩するわ。お前も外の空気吸ってくれば?」
「私別にそんなに疲れてない」
「あーそーかよ!ったく…」
余裕な明日香に背を向け、俺は道場を出る。
「…あんなのくらったら、普通は骨折なんだけど…。なんで、自分の実力に蓋しちゃうのかな…」
明日香の一人言は、俺には聞こえなかった。
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