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彼と彼女の…  作者: 羽海野 八尋
彼と彼女の出会い
1/3

0.プロローグ




「・・・・・・はい?お母様、もう一度お願いします?」



うだるような暑さが日に日に増していく8月3日



「だから、今日から2学期が始まるまでの2ヶ月間、あんたには千代子叔母様の家の方で生活してもらいますよ、って」



世の大学生らしくだらけた夏休みを満喫していた私の運命の歯車は



「それはまた・・・突然ですねぇ・・・・・・」



田舎で暮らす大叔母、千代子さんからの一本の電話から廻り始めた・・・――





   ―彼と彼女の…―





8月3日金曜日。

夏はまだまだこれから!といわんばかりに日に日に熱気が増している今日この頃、大分県の田舎に住んでいる大叔母の千代子さんから我が家に一本の電話が。


「なんでもね、夏バテで前後不覚になって転倒しちゃったらしいのよ、千代子叔母様」

「はぁっ!?千代子さん大丈夫なの?」


いつもの長電話を終えたお母さん(千代子さんとお母さんの電話はいつも長いのだ)から予想外の一言。

大叔母の千代子さんは私の母方の祖母の妹で、御歳78歳で息子の嫁や姪っ子や孫たちとのメールが趣味の元気なおばあちゃん。

しかし、今年の熱気はその千代子さんの体力すらも削り、夏バテに至らしめたらしい。


「元気は元気なんだけど・・・転倒して少し足を捻ったり打ち身を作ったりしちゃったらしくてね。叔母様も一人暮らしなのにまた倒れたりしないか心配だし・・・渚が叔母様の身の回りの世話のお手伝いでもしてきてくれないかしら」

「もちろん!心配だから行くよ。それに、親族の中で一番の暇人であろう私が行くべきだろうしね」


一番の暇人。そう、私が一番の暇人に決まっているのだ。

私、大野渚は今年なんとか地元の国立大学に入学したピカピカの一年生。

朝起きて、朝ごはんを食べて、犬と戯れ、お昼ごはんを食べて、読書を楽しみ、昼寝をして、犬との散歩がてら川で遊び、お夕飯を食べて、長風呂を楽しみ、寝る。

実にだらけきった大学生の模範のような夏休みを楽しんでいる真っ最中だ。

これだけを聞くと「こいつ本当にどうしようもない奴だな」って思ったでしょう、そうでしょう。

私も実はだらけすぎている自分が怖くなるレベルですからね、分かってますよ。

でも、でも、これにはちょっと規模の大きい水溜りのように深い理由があるんですよ。

尊敬する姉に憧れて「高校はお姉ちゃんと同じとこに行く!」と宣言した私は中学一年生から塾に入り浸り、ガリ勉の末なんとか志望校に入学できたのだけど・・・。

しかし、身の丈に合わない進学校に入学したために難易度の高い授業に四苦八苦する羽目に(なんてったって地元で一番の進学校だった)

高校の授業についていくことすら怪しいくらいに出来の悪い私は一度目の大学受験に失敗し、親に土下座をして一年間の浪人生活の末にやっと今年第一志望の国立大学に合格した。

この間(実に7年もの間!)私は『マトモな夏休み』というものを経験できなかった。

中学生の間は塾の夏期講習三昧、高校生の間は学校での夏期講習三昧、予備校生の間は机と参考書にべったり。

「ナツヤスミ?なにそれ美味しいの???」という灰色の生活を7年間送り続けた私はついに念願の『マトモな夏休み』を過ごす権利を手に入れたのだ。

ビバ、夏休み。夏休み、最高です。

そんな愛しの夏休みちゃんとの生活を始めた私にとっては寝耳に水な今回の出来事。でも、もちろん行かないなんていう選択肢は存在しない。


「ありがとう。渚は家事全般ちゃんとできるし、千代子叔母様とも仲が良いし、渚が行ってくれるならお母さんも安心できるわ」


千代子さん、大好きだからもちろん行きますとも。

千代子さんは実の姉である私の母方のおばあちゃんとすごく仲の良い姉妹で歳を取ってからもお互いの家を頻繁に行き来していたから、小さい頃おばあちゃんにべったりだった私と千代子さんとの交流も筆千滴に多く、昔から仲が良かった。

おばあちゃんが病気で亡くなってからは、おばあちゃんっ子だった私のことを心配しながらも本当の孫のように可愛がってくれている。私の第二のおばあちゃんのような人。

そんな千代子さんが倒れたとなれば、もちろん私は千代子さんのいる田舎へ行ってお手伝いでもなんでもするしかないのである!



かくして私は大叔母様である千代子さんの身の回りのお世話をするために田舎へ行くことを決めたのであった――


はじめまして

自分のツボをふんだんに盛り込んだお話になると思いますが、楽しんで頂けたら幸いです^^

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