緊張
【第5話】緊張
深くとても深い宇宙のスペースには何もない場所が多い。真空のエネルギーが膨張すればするほど、宇宙は広がりを増して闇が広がる。地球の砂浜よりも多い宇宙の星々がそのスペースの間を埋めて暗闇を光で照らし出す。闇よりも光は強いのか。それとも・・・・
残された時間は9日をきった。24時間経ったが、誰も問題を解決できるアイディアが出せずに、只々時間を費やするだけだった。それもそのはず、ほとんどの宇宙船の機能はマザーコンピューターによってしか制御できないし、こんな場所で脱出ポットを使ったところで、火星に届く訳もない。通信機能もできずに、近くに他の宇宙船があることさえ確認できないありさまだ。そんな時に動き始めたのはトロイだった。トロイはヴァルを呼んで、話していた通りに二人をトロイの部屋へ連れて来るように話した。その二人とは、バーチャルボクシングで仲間になったホンシクとドイツ人のジークベルトだった。トロイは四人になって話始めた。
「この状況は非常にまずい。お前たちの中で、このままで生きて火星に行けると思ってる奴はいるか?」
ホンシクはそれを聞いてしかめた顔でそれに答える。
「まず、このまま何もせずにいたら20人全員生き残れないだろうな。」
ヴァルとジークベルトもうなずいた。そんな三人に向かってトロイはすごい形相で睨みつけながら話始めた。
「一刻の猶予も残されてはいない。誰が先に動くかで、生き残れるのかどうか。その運命が今この一瞬にもおれたちに握られている。今からおれたちは仲間だ。もし、仲間としてやっていけないというなら、今この場で部屋を出ていってもらう。出ていく奴はいるか?」
命が係っているのだから、この部屋を出る者は一人もいなかった。それを確認するとトロイは話をはじめた――――
そして、各々(おのおの)の役目を決め実行へと移したのだ。トロイとホンシクはB015号室に向かった。その部屋は自分たちとは離れたB側の部屋で、中央を挟んで反対側だ。
―――――――――――――――――――――
B側(SR) (TR) A側(MR)
◎・・・・・⑮・・・・◎・・・⑦⑥・④③②①◎
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
―――――――――――――――――――――
(A01号室)トロイ・(A02号室)ヴァル
(A03号室)セラ・(A04号室)オスカル
(A06号室)ホンシク・(A07号室)ジークベルト
(SR)スポーツルーム(TR)テレポーションルーム・(MR)マザーコンピュータールーム
そして、ジークベルトは中央の瞬間移動室へ物資の量を確認しにいった。残りの酸素量は間違いなく6日と20時間分、そして中央に残されたのは20人で1日分の酸素量だ。そして、火星までの距離は、残り29日間。最後の一人ヴァルは、宇宙船の他の者たちの様子を観察しにいった。ヴァルが観察するが、ほとんどの人たちはその現実から目をそらすかのように、自分の部屋で時間を費やしているだけのようだった。迫りくる死の恐怖が恐ろしすぎて、振えている女性もいた。一人では耐えれないのかスポーツルームで何人もが集まって、この状況をどうするのかを話しあっているグループもいた。ヴァルはその話の内容を聞くためになるべく目立たないように近づいた。
「マザーの計算だと残り酸素量は6日をきったらしい。」
「平常心の計算だろ?今は異常事態でみんな恐怖でいつもよりも酸素を吸ってるよ・・・結局誰も解決策を考えつかないしな・・・」
数人集まって話してはいるが、いいアイディアがなく女の子にいたっては、その話を聞きながら頭を抱えて脅えている始末だった。
そして、セラはというと、A側の様子が何か変に感じたので、トロイの部屋へ行った。扉が開けられて入るとトロイが待ち構えたように立っていて、セラに静かにしろ!というような仕草をしたあとセラの口を塞いでベッドのほうへと連れいった。セラは驚いた大きな目をして、少し抵抗する
「何もしないから安心しろ。おれがお前を守ってやるからな。何も心配せずにこの部屋にいるんだ。」
何のことなのか分からずにセラは質問する。
「一体何をしようとしてるの ?お願い教えて・・・」
「教えてやってもいいが、いいか。叫んだり変な気を起こさないっておれに誓ってくれ。いいか?」
セラは黙ってうなずいた。それを見たトロイは、セラに自分たちがすることを話をした。いや、話というよりもそれは脅しだった。
セラは黙っていう事をきくと半ば強制的に約束させられたあと、オスカルをトロイの部屋に落ち着かせるように呼び寄せたのだった・・・。自分とオスカルには、何の危害もくわえないという条件で。
【第5話】完