24世紀のテクノロジー
【第2話】24世紀のテクノロジー
24世紀、テクノロジーは粋を超えて発展していた。エネルギーは水より抽出され、膨大な出力としてほぼ無限に調達できる。ナノテクノロジーに関しては、終焉をすでに終え、物質は生き物のように息をしていて、壊れた個所は酸素を吸い形状記憶で直していくので、整備士などはその優れたマザーコンピューターがあれば全く必要としていなかった。人々はマザーコンピューターの安全性を確信していた。全ての物質はナノチューボンで織り込まれており、鋼鉄の何十倍もの硬さが維持できた。この2世紀の間、イギリスの街並みを形成してその姿を変えずにいられた理由は、その技術の為だろう。
トロイとヴァル、二人の前に聳え立つように3Dで映し出されるのは、大きな四角いナノチューボンで形成された外壁の宇宙船だった。その大きさは電車を5台分束ねたほどの太さで、長さは23車両分ほどの長さである。中にはドーナツ状の部屋が23個設置され、ひとり1部屋があてがわれるのだった。その中でも3つだけ大きなドーナツ状の部屋があり、一番先頭にマザーコンピューターの乗ったマザーコンピュータールーム(MR)、そして、みなの部屋に挟まれて食糧や酸素、そして水などの必需品を瞬間移動で送り届けることが出来る、テレポーションルーム(TR)、宇宙でも運動が出来るようにと置かれていたのが、最後尾に置かれたスポーツルーム(SR)だった。それらのドーナツ状の部屋は宇宙空間で回転していて、それらが重力を生み出すのだった。そしてその外に通路がドーナツ状の部屋と一緒の速度で回っていた。
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B側(SR) (TR) A側(MR)
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簡単に絵で表すと↑この様な形だろう。
もちろん一人ひとりの部屋は一車両ほどの大きさがあり、ゆとりのあるスペースが、宇宙を飛ぶストレスをカモフラージュしてくれるのだ。そこには素晴らしい技術と素晴らしい配慮があった。
しかし、悲しい事にそれらのハイテクノロジーは世界を覆い尽くし、軍事力を促進させ、もう土地という土地が無くなり、地球での発展が危うくなる中、生き物以外のものをテレポーテーションさせる技術も発達し、新天地火星への土地を狙い各国が全力をもって争い取り組んでいたのだった。
火星にまず送られたのは二酸化炭素だった。二酸化炭素を大量に送りこむことで、急激に温暖化を促進させて、凍りついていた火星の地面に隠された水が溶けて蒸発し、雨や自然現象を1世紀に渡り起こさせることで火星の自然の発達を利用して、人間が住めるほどの惑星へと変えていったのだった。二酸化炭素と同時に行われたのは地球のような安定した気温にするために、太陽からの距離を計算して太陽の周りを回る元巨大隕石を利用して人口の月を造り火星へ配置し、その重力で火星の軸の角度を24度に設定する事によって地球の様な安定した四季を作り出したのだった。
だが、問題はそのあとに起こった。
安定しはじめた火星の領土争いが人間同士で起こったのだ。あらゆる国が大量の資源と土地がある火星へと競うように向かい、火星では戦争に次ぐ戦争をここ半世紀も繰り返していた。だがしかし、火星の広大な土地と可能性を人々は追い求め、火星へと向かう人々はあとを絶たなかったのだ。
そんな人々の中の一人が、日本から数年前イギリスへと来ていたセラだった。
「宇宙に行く事だけで、わたしドキドキする」
夏の日差しが照りそそぎ、光が反射してキラキラと眩しい海の景色が広がるカフェで、1年前イギリスで知り合ったオスカルと心をウキウキしながら可愛い容姿のセラは話をする。
「君は宇宙にいくのもはじめてだったね。ぼくは何度か行ったけど、大気圏外からの地球は本当に綺麗だよ ?」
「う~ん。はやくみたいよ~」
セラはとても人懐っこい笑顔で、オスカルに話す。品よく飲み物を取るしぐさは女性らしさをかもし出し、コップをあげた時にこぼれた水滴を毎回拭く几帳面さは、やはり日本人特有の心遣いだろう。
「この綺麗な海も当分は見れなくなるんだから、セラもちゃんと目に焼き付けておくんだよ。」
そうオスカルが言った時、ちょうど海から数頭のイルカが半円を描くように飛びだした。
「うわぁ~!すごい。見てイルカだよ。」
セラは嬉しそうにしながら、イルカを見て喜んだ。彼女は163cmの細身な体格で、髪は綺麗な黒色の腰にかかるほどの長さのロングストレートヘアー。その綺麗な髪が度々、海風に流されて、気になるのか手で髪を横にふりわける仕草はとても綺麗に見えて、そのおとなしい性格だから嫌みも感じ取れない。
「ほんと、セラは女の子だよね」
と、オスカルは青い海を背景にした、可愛いらしいセラにみとれて少し口走った。
「なに。それ ?」
「ううん。何でもない。気にするな。」
オスカルは妹にでも向けるかのような優しい笑顔をセラに見せて、いつもこうやって優しく話すのだった。
セラは、イルカが見たくて飲み物をそのままにして、知らない男二人が見ている展望台へと向かって体を乗り出しながら騒ぐのだった。その二人とはトロイとヴァルだった。
「ね~。オスカル~!こっちで一緒にみようよ」
「おれはジュース飲んでるから一人で見てなよ」
と、大きな声で返事をオスカルは返した。
すると、彼女の声に反応して隣に来てはしゃぐセラに、トロイが自然と声をかけた。
「君は、イルカが好きなのか?」
と、急に横から話しかけられたが人を疑うことを普段からしない感じがセラの魅力だ。
「うん。そう。動物は大好きだし、今日からは地球を離れるから、もっとイルカや自然をみたいの」
トロイは、その屈託な笑顔を見て、自然と自分も笑いながら彼女も宇宙へと行くのを知るとさらに話しかけた。
「君も宇宙へいくんだね。どの宇宙船に乗る予定なんだい?」
「A0998号よ」
「え!マジか。同じ宇宙船だよ。」
「本当 ?あなたも火星に行くのね。」
「うん。そうか。宇宙船に行っても一緒に話でもしようよ。俺の名前はトロイ。そして、隣にいるのが友達のヴァルだよ」
「わたしの名前はセラ。向こうで座ってるのが、友達のオスカルよ。よろしくね」
イルカはもう頭を出さなかったが、青い綺麗な海はそのままで、涼しい風を展望台へと送りつづけた。
「宇宙って死で満ちてる世界だって本で読んだ事ある。だから、いつでも悔いの無いように宇宙船へいっても、友達を増やしていきたいの。」
セラが何かを思い出したかのようにつぶやいたのをトロイが聞いた。
「そうだよ。宇宙では何が起こるのかわからないんだ。だから、友達を増やしていく方がいい。まずは、俺を友達にしてくれるか?」
セラは甘い香りのするような女性で、とても優しい笑顔をしながら、うなずく姿は綺麗だった。トロイはその笑顔から不思議と目を離すことが出来なかった。
【第2話】 完