表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

選択

【第11話】選択せんたく




 オスカルは首のないホンシクの体を廊下の脱出ポットまではこびこむ。そんなオスカルを何が起こってるのか分からない様子で、セラは見ている事しか出来なかった。

 オスカルは血だらけになりながら、オレンジのボタンを押すと、ホンシクの体が浮き上がり、宇宙へと飛ばされていった。ブルースに変装し反対勢力のリーダーとして活躍をしたホンシクは、その仲間にうらぎられ、その3人から一方的に攻撃され最期を迎えたのだった・・・。

 


 オスカルは血のついた顔を腕でぬぐいながら、トロイの服を掴みかかり言った。


「トロイ!・・・トロイ!!」


その表情は切願するようで何度も確認するかのようにオスカルはトロイを睨みつける。


「トロイ!必ず約束は守れよ。絶対だぞ!」


トロイはオスカルの顔をみながらうなずく。

 オスカルは、次にセラに近づいて、セラを抱きしめながらセラの横から小さく優しい声で言った。


「セラ。今から言う事を落ち着いて聞いてくれ。この宇宙船にはもう3人分しか酸素がないんだよ。だから、こうするしかなかったんだ。君は必ず・・・必ず生き残ってほしい。君とイギリスで出逢えてこの1年間、まるで兄妹のように過ごせた日々はとても楽しかったよ。」


オスカルは綺麗な黒髪のセラの頭を愛おしそうに撫でながら、顔をヴァルの方へと向けるとヴァルがオスカルの変わりにセラをおさえるようにセラの両肩をガシっと掴んだ。

そして、オスカルはセラから離れた。


「!?・・・なに?」


セラは後ろから押さえるヴァルを見るがヴァルは何も言わない。するとセラが気づいたように


「さんにん・・・て!」


オスカルはセラを振りかえってその顔を見ると、優しい顔をしながら静かに脱出ポットの中に入ろうとしはじめた。それを見てセラは


「だめー!やめてーー!!」


と、叫びヴァルの手をほどこうとするがヴァルはセラが暴れる事は前から承知していたのでしっかりと両腕で、セラを動けなくしていた。


「トロイ!必ず約束は守れよ!」


トロイはそのオスカルの言葉を聞いてなづきながら、ゆっくりボタンを押すと一気に脱出ポットの空気が抜けて、オスカルの穏やかに目をつぶる顔が凍りついた。

 トロイがセラの方へ歩いていくと、セラは大粒の涙を流しながら


「どうして・・・どうして・・・」


と、言いながらセラが崩れ落ちるのをトロイは止めて、強く抱きしめるのだった。オスカルはセラを助けるために、ホンシクと自分を犠牲にしたのだった。



――――――――――――――――

B側(SR)    (TR)       A側(MR)

◎・・・・・⑮・・・・◎・・・⑦⑥・④③②①◎

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――――――――――――――――




 トロイは、すぐにMRへと向かいマザーに確認する。



 ヴァルも気になったのか、数分遅れてMRに来て、トロイの隣に座りマザーに質問する。


「今の船内の酸素残量と火星までの距離を知りたい」


『火星マデハ9日ト10時間デス。今現在3名ガ船内ニ乗ッテイマスノデ、酸素ハ8日ト20時間デ無クナルデショウ』


マザーが言い終わるとヴァルの首に太い腕が回り込み絞めつける!そして、ヴァルの意識は遠のいていく・・・。



トロイはコンピューターのコードを切り取り、そのコードでヴァルの腕を後ろに持っていき親指同士をぐるぐるとまいた後、両足も動けないように縛った。


「何をしてるの!?」


と、セラが立ちつくす。トロイはセラを無理やり押さえつけヴァルと同じように縛り上げた。ヴァルとセラは、脱出ポットまで引きずられながら運ばれた。

 さきに意識をとり戻したのはセラだった。


「ト・・・トロイ・・どうしてこんな事するの?」


トロイは頭を抱えながら、考え込むように廊下をうろうろ歩きまわり、大きな声で叫んだ。


「しょうがないだろ!!残りの酸素も3人でも足りないんだ!どっちかを取るしかできない!ホンシクの部屋から酸素がもれたんだ!」


その声を聞いてヴァルも目を覚まし、どうにか動けるか確認するが、どうしてもコードをほどくことが出来ない。


「トロイ。まじかよ・・・お前おれとは餓鬼ガキの時から一緒だったろ?そんな俺を見捨てるわけないよな?えー?」


トロイは激しく髪をむしる。そして、廊下の壁を何度も叩く。


「お前火星に行ってもおれが一緒じゃなければ大変な目にあうだけだぞ。こんな女なんかより幼なじみの俺だろ?」


トロイは、その声を聞いて、勢いよく服を掴みかかり持ちあげた!持ちあげたのはセラだった。セラは穏やかな声で言った。


「トロイいいのよ。もう最後はわたしにして。もうこれ以上犠牲者は出さないようにしてね。短い間だったけど、あなたが苦しんでいた事知っていたよ。でも、今回の事はしょうがないことなの。生き残る為にはこうするしか他になかった。どうかみんなの分まで生きて・・・」


トロイはセラを持ち上げながら、人生ではじめてだろうか目から涙が込み上げた。あれは地球基地であった瞬間だった。セラの美しさと、その笑顔をみた瞬間に好きになってしまっていたのだ。彼女を自分の手で宇宙へと本当に送る事ができるのか。かといって、ヴァルは自分の兄弟のような者だ。どうしたって選べるはずがなかった。トロイはスルっとセラの服を掴んでいた手をゆるめ、落とした。そして、ヴァルを掴み一気に脱出ポットへいれたのだ!


「まてーー!まってくれトロイー!!おれを見捨てるのかよー!」


トロイは、ボタンの前に手をかざすのだが、どうしても押す事が出来ず、震える手と涙で、腕が止まってしまっていた。そこにセラが叫んだ。


「やめてー!!」


その声に反応したトロイはボタンを押してしまったのだ。すると、親友のヴァルが宇宙へと流れ出してしまった。トロイは地面に尻もちをついて、大きな声で泣いた。


【第11話】 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ