不可解な真実 ②
今回は短めの話になりました
次回は 神楽と守り人の関係を書きます
命を受けた 建御雷が人界に降り立つと そこには異様な気が溢れ
人々は何かに取り付かれるよう争いを繰り返していた
高天原の守護を受け その力を持って戦っていた者は
闇人との戦いに傷つき 次々と倒れていった
もはやこの流れを止める手立ては無いのか
とも思える光景を 彼は未だに忘れられないと語っているそうだ
まずは 大本である『門』を封じなければ 闇人の力は強くなるばかりである
建御雷は 自ら率いてきた高天原の軍勢と人界の協力者と共に門の制圧を試みた
深淵の闇の力は大きく 激しい戦いの末 闇の力を削ぎ
何とか門を制圧したものの 高天原人 人界の協力者にも多くの犠牲が出た
建御雷は 布都御魂剣の力を持って門を封じようとしたが
完全な封印はできず そこからは尚も『負の気』が漏れ出していた
このままでは再び深淵の闇が人の心を闇に染め 大いなる力を手に入れてしまう
その事を危惧した天照は 天音に高天原より真澄鏡を持ち人界に降り
鏡を門に取り付け 漏れ出す『負の気』を
鏡の力を持って 闇の世界に送り返す呪法をかけさせた
以来 天音さんはこの地に残り 門を監視する役目を担っているそうだ
これにより 門から『負の気』が流れ出す事は 無くなったが
人界から 深淵の闇の世界に負の情念が流れ込む事は止められず
そのため 人の世が乱れ 怨念や疑念などの負の感情で溢れたとき
深淵の闇は力を取り戻し たびたび人界に闇人を送り込んでくるのだ
とそこまで話すと 天音さんは
「そういえば 神楽はどうしたの 」
と古賀さんに質問した
話が急に飛んで 何のことやらと分からないが 会話は進んでいく
「ああ 携帯切ってるみたいで神楽さん連絡取れないんです 」
「呼びかけは 」
「無視 決め込んでますね 」
「全く… 自覚が無い 」
あきれた顔でため息をつくと
「本当はここからは 神楽に説明させようと思ったんだけど 」
「たぶん面倒になったんでしょうね 」
古賀さんは 乾いた笑みを浮かべていた
「ちょっと休憩しましょう さすがに疲れたわ ヨキお茶をお願い」
襖に向かって声をかけると すぐに
「かしこまりました 」
と返事が返ってきた事に 驚いた
それからしばらくすると お茶とお菓子を持ったヨキさんが入ってきた
彼女は相変わらず表情を変えることなく 机にそれを置き一礼して部屋を出て行った
ヨキさんが入れてくれたお茶を飲みながら 今聞いた話を自分なりに考えていると
「えっと 今更ながら 名前ちゃんと聞いてなかったわね 」
天音さんが 湯飲みを机に置き こちらをじっと見ていた
「あっ 九条 夏美 です 」
小さく頭を下げると
「そんな緊張しなくていいのに 」
と笑顔を向けてくれた その顔をみたらおもわず
さっきから気になっていた事を口にしてしまった
「天音様も 神様なのですか 」
その質問になぜか古賀さんがクスッと笑い 天音さんは渋い顔をする
「高天原に住むものすべてが神として崇められるわけではないのよ
私は こちら風に言えば『一般市民』で神として名前が残っている
方々は向こうでも『特別な存在』なのよ」
そこまで言うと 先ほどの話の続きがあるから 私の事はここまでね
と打ち切られてしまった
「ここからは 『守り人』と『神楽』についての話になるのだけど… 」
ちらりと襖に視線を向けると 廊下から男の人の話し声と足音が聞こえてきた