不可解な真実
自分の予測より壮大な話になってしまい 混乱の極みで書いてます
日本神話モチーフですが 架空であり本物と大きく違います
細かい事はスルーして呼んで頂けると嬉しいです
しかし 言葉に偽りが無いと感じても
頭でそれを理解するとなると話は別だ
「でも そんな者を誰も見た事ないですし 非現実的です」
思わず否定の言葉を口にする
「でも あなたは先ほど身をもって体験しているはずだけど 」
先ほどとは 闇の中での出来事を指すのだろう
確かにアレは 私の知っている理屈で説明つくものではない
「世界は多元に広がっていて 多種多様の種族が存在し
独自の文明・文化を持っています 私の故郷 高天原もその中の一つです 」
天音さんの口から語られた話は 想像を絶するものだった
そこは 人間の持ち合わせる時間や距離という言葉だけでは
表せない場所にあり 流れる時間の感覚さえも違うと言うのだ
当時 高天原は高度文明の行き詰まりによる崩壊の危機を迎えていた
それがどういうものか詳しく教えてはくれなかったが
発達しすぎた文明は思考を緩慢にし
生命から緩やかに存在意義を奪っていくのだ とだけ教えてくれた
その危機を打開するためには 多次元への道を開き
新たな文明 文化を取り込む必要があった
平たく言ってしまえば 多次元を侵略・併合すると言う事だ
本来 次元を超えた干渉は 簡単にできるものではないのだが…
そこまで話すと 私の顔を見て
「この星と人間は 多元世界においてとても特殊な存在なの 」
と一際強い口調で語った
多元世界における『地球』と言う場所は 安定した状態で自分達の世界と
行き来するための『門』を開ける唯一無二の場所であって
そこに存在する『人間』には不思議な力が備わっていると言うのだ
門を通り抜け 降り立った地に息づいていた生命は
自分達に比べ遥かに低い文明しか持ち合わせていなかったが
高天原の住人達が失ってしまった『強い生命力』と『無限に溢れる
可能性』を秘めた存在であった
その輝くばかりの力に見せられ 侵略や併合ではなく
共存を望む声が高天原国内であがるようになり
彼らは 自分達の持てる知識や文化を少しずつ人に与えていった
人間は 自分達を庇護し 知識や力を与えてくれる彼らを
空に浮く門の向こうから来た『大いなる存在』
遥か『上にある者』 転じて『神』として崇めるようになった
その頃から 高天原にも〝ある変化〟が起こり始めていた
人が彼らに心を向けるようになると 緩慢な崩壊を迎えていた
国内に『生命の力』が少しずつ戻ってきたのであった
それこそが『人間』が持つ『特殊な力』なのだそうだ
人の心が向けられた先の存在は その力を自らに得る事ができる
のだと天音さんは言った
高天原と同じように 何らかの事情を抱えた多次元からも干渉があり
同じような事がこの星の各地であったから
それぞれの神話と呼ばれる話が存在するのであろうと教えてくれた
また その干渉の中には 共存ではなく侵略と併合を望むものもあり
そんな存在から人間を守るために 戦うすべや力を与えたという
その力を与えられた一部の人間は『陰陽師』や『退魔師』として
人外の世界からやってくる脅威を その力を持って滅し
開いてしまった『門』を封じ 監視する役割を担った
こうした事象が後世へ語り伝えられ 神話や伝承が誕生したのだろう
神話や伝承は全てが真実とは言えないが その中には真実が混じっている
それは 多元世界からの干渉をうけるこの星の環境 故なのだ
「ここまでは理解して頂けましたか 」
あまりにも壮大な話しすぎて 正直すぐに理解なんてできる訳なかったが
「なんとなくは… 」
「今はそれで結構です 時間が無いので話しを進めましょう
ここから先は あなたが知りたい事でもあるでしょうし 」
天音さんは 机にかけていた手を組みなおし 再び話を始めた
いつの昔か 正確な記憶は無いが
京都の地に ある次元からの小さな門が開いた
そこからは何が出てくる訳でもなく ただ存在するだけであった
当時 他でも門が開き 戦う手段を持った者たちはその対応に追われ
脅威のない小さな門の存在など いつの間にか忘れ去られていった
しかし そこから漏れ出した『気』はゆっくりと人間を蝕み始めていた
それは『闇の色』を人の心に落とし 疑念や恐怖の感情を煽り
人同士の争いを生み出し 街は流される血と負の感情で溢れた
そしてそれは 小さな門の向こうの存在に大きな力を与える事になった
門の向こう在った『深淵の闇』は人から与えられた感情を糧に
自らの分身を作っていった それは 人の姿を模し自らを
『闇人』と名乗り 更なる混乱と恐怖をもたらした
この事態は人間だけでなく高天原にとっても痛手であった
人の心が『神』に向けられなくなれば 高天原に注ぐ生命の力は無くなり
結果としてそれは 自らの世界の崩壊をも意味していた
人が己の文明・文化を確立し始めた時から
過剰な接触は避けるようにしていたが
この事態を放置する事は 自らの世界の滅びにも繋がると判断し
高天原の王である『天照』は 武門の一族である
『建御雷』にこの事態を収めるために人界に赴くよう命じ 霊剣 布都御魂剣を与えた