表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/37

答えを求めて

あまり進みませんでしたね… 独りよがりにならないように気をつけているつもりですが 色々難しいですね

体に力が入らず 立ち上がることすらままならない

智兄はリビングの明かりをつけ 何かを探すような素振りで部屋を見て回る

その手の中に 先ほどの刀はもう無かった


何かを見つけたらしく 立ち止まり

「これか 」

と 床に伸ばした手を上げると そこには煤けた小さな紙が握られていた

「智兄ぃ 」

やっとの思いで声を出し 話しかける

「大丈夫だったか?」

手にした紙をクシャっと丸め ジーパンのポケットに突っ込みこちらへやってきた


「あれは 何だったの」

震える声で質問をする

「あれは… 」

何かを言いあぐね 視線を私から逸らすと 

突如として携帯をだし どこかへ電話をかけ二言三言話す


きょとんとしてその様子を見ている私に

「一緒に来てほしい所がある 」

と真剣な表情で告げた


時間は2時半過ぎ こんな真夜中に何処へ行くというのだろう

不思議には思ったが 何を聞いても

「今は 答えられない…」

としか変事は返ってこなかった

だからパジャマから服に着替え 身支度を整え 念のため 陽菜に置手紙をして

智兄と一緒にマンションの下に下りて来たのだった


真夜中の移動ならタクシーでも捕まえるのかな?と思っていると

マンションの前に 1台の車が止まり 人が降りてきた


私はその顔を見て びっくりした だって

その人は 勘違いでなければ 道場で智兄としゃべっていた人だったから


智兄よりも5cmくらい背が高く(たぶん180cm超えてるな) 琥珀色の少し伸びた髪と

男の人にしては大きな瞳が 柔らかい印象を与える人だと思った

「こんな夜中に 申し訳ないです 古賀こがさん」

「いや それよりも」

何かを確認するように 私の方を見てから


「とにかく 行こう」

と後部座席のドアを開け 私に乗るように言った


車は夜の静まった街を走って行く 私は窓からただその風景を眺めていた

智兄は助手席に乗り 古賀さんと何かを話しているみたいだが

その会話はこちらまで聞こえてこなかった


中心部を抜け しばらく走る 辺りにはいつの間にか街の明かりは見えなくなっていた

細い山道らしき所をしばらく登っていくと 前方に大きな建物が見えてきた


車が近づくと それは木造の門だとわかった 

普通の家なら母屋と言っても良いほどの大きさの門を抜け しばらく走ると

月明かりの中に 歴史の教科書で見るような日本建築の大きな屋敷が見えた

玄関脇に車を止めると 

「目的地に着いたよ 」

と 運転席から振り返った古賀さんがにこっと笑って言った


どうしてよいのか戸惑っていると 助手席から先に降りていた智兄がドアを開け

「さあ 行こう」

と優しく手を出してくれた

その手をつかみ 玄関に入ると 中には着物を着た綺麗な女性がいた


「お待ちしておりました こちらへどうぞ」

彼女は表情一つ変えることなく 私たちに言い 廊下を歩き出した


古賀さんを先頭にその後に続く 何処まであるのかと思うほど長い廊下を無言で歩く

言われようもない緊張感から 繋いでいた智兄の手をぎゅっと握ると

こちらを見て 優しく微笑み 「大丈夫」 と小声で言ってくれた 


前を行く女性が 引き分けの襖の前で立ち止まると 

「お客様を お連れしました」

襖を開けぬまま 中に声をかけるた

「ヨキご苦労でした あなたは下がってよいですよ」

その声を聞くと ヨキと呼ばれた女性は

襖越しにいるであろう人物に深々と頭を下げ

私たちに一礼し 歩いてきた方へと戻っていった


「失礼いたします」

古賀さんが襖に手をかけ開けると 10畳程の部屋の真ん中に置かれた

座卓に肘をかけ 何かを考えているといった表情の女性が座っていた

見た感じの年齢は20代前半くらいに感じる 長い黒髪を肩より下で一つに束ね

白い着物を着ている彼女の姿は 今の世が平成であることを忘れさせるようであった


開いた襖に気づくと 

「あぁ 古賀 新堂 ご苦労様です」

目線を私たちに向けた

「夜分 申し訳ありません 天音あまねさま」

「かまいません それよりも 彼女が?」

私に視線が向けられる

「ええ 適合者で間違いありませんが…」

「向こうも 目をつけている と言う訳ね 」


古賀さんと 天音さんの会話の内容は 

私の事らしいが 何がなんだかさっぱり分からない オロオロしていると

「とりあえず 座って 順を追って説明するから」 

と 畳に置かれた座布団を指し 私には自分の正面に座るよう言い

同じ目線で顔をじっと見てから 重々しく口を開いた


「あなたは 神を信じますか 」

はぁ??? 何この展開 宗教の勧誘? それとも壮大なドッキリ??

あまりに意外な一言に面食らって あっけ取られて正面に座る女性を凝視してしまった


「恐れながら…天音様 その聞き方は なんとも 」

智兄が困った顔で進言すると 古賀さんはプッと吹き出した

その様子をみて ちょっとばつの悪いといった表情をしてから


「では 改めて伺いましょう 貴女は日本神話に語られている八百万の神や 

ヤマタノオロチ 民話に伝わる鬼や天狗 他のあやかしは実在すると思いますか」

質問の意味が掴めず 彼女の顔を見ると 真剣な表情をし答えを待っている


「いないと思います 」

「なぜ 」

なぜと言われても… 確かにで河童のミイラや鬼の手などがどこかの寺に安置されて

いるという話はテレビでは聞いたことはあるが 近代史において誰もそれを皆が納得する

形で発見できていないのだから いないと考えるのが普通であろう

返答に困っていると 質問が変わる


「では なぜ世界の各地に神話や人外の者の伝説が多く残って居るのでしょう」

「分かりません 」


しばしの沈黙の後 彼女の口から語られた言葉

「神話や伝承に語られる人外の者は 実在します」


言い切るその言葉の強さと真剣な眼差しに それが  

偽りや冗談を言っている訳では無い と理解するのに時間はかからなかった







 






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ