優しさに触れて
「よく頑張ったな 後は任せろ 」
古賀さんは 目の前で倒れている女の子を抱え上げ
元いたあたりの場所へと移動させる
「夏美 首見せろ 」
突然聡君の手が顎を捉えて押し上げると その顔が近くに見える
「ちょっ 放してよ 」
遠野さんとの会話を思い出し急に恥ずかしくなるが
そんなことお構いなしで 首をじっと見ている
「内出血してるな しばらく消えないぞ 」
手を放すと こちらを見て心配そうな表情を浮かべる
「こんなの 全然大丈夫だよ 痛くも痒くもないし 」
心配掛けないように明るく笑いながら答えると
眉をひそめてそっぽを向いてしまった
えっ なんでそんな態度とられなきゃいけないんだろう…
後姿を眺めながら考えていると 戻ってきた古賀さんが空間を解除した
遠巻きに様子を見守っていると 女の子がいた辺りでざわめきが起こり
しばらくすると救急車がやってきて 担架に乗せられ運ばれていった
一連の流れを見届け その場を後にしようとすると
「これ 巻いておけよ 」
聡君からカーキのストールを手渡された
「どうしたの これ 」
聡君こんなの身に着けていたっけ
疑問に思いながら手渡されたそれを見てると
「お前にしては 珍しく気が利くじゃないか 」
古賀さんがニヤッっと笑い こちらを見る
「うるさいなっ 夏美いいからさっさと巻けよ 」
手の中に有ったストールを奪い取ると 私の首にフワッと巻きつけた
「あの ありがとう 」
ストールの端を握り締め 隣を歩く聡君にお礼を言うと
「お前 首の傷平気だって笑ってたけど 結構目だって見えるぞ
内出血だから跡は残らないけど 女なんだから気をつけろよ 」
と言い 前を行く古賀さんの隣へと行ってしまった
そっか さっきそっぽを向かれたのは 私がへらへらと
笑ってたからだったんだ… そんなに心配してくれていたなんて
その優しさが巻かれたストールから伝わり 私を暖く包んでくれた
その後も移動をしながら街を見て周り 途中で手早く夕食をすませ
再び移動を始めると 前を行く二人の足が速くなる
〝人形から連絡があった 今からそこへ行く〟
何があったのだろうと悩む頭に古賀さんの声が聞こえた
大通りに出てタクシーを拾い 目的地を告げる
15分ほど走っただろうか 住宅街の一角で車を降りた
〝この辺りのはずなんだが…〟
街灯の数も少なく 薄暗く人気の少ない道を歩きながら
闇に憑かれている人を探して歩く と微かに煙の臭いを感じた気がした
「あの なんだか焦げ臭くないですか 」
気のせいかとも思ったが 声に出してみると
「確かに そんな臭いがしなくもないが 」
3人で周辺を見回していると 薄っすらとだが立ち上る煙が見えた
「あそこ 煙が出てます 」
顔を見合わせ 今いる場所から近い所で上がる煙の正体を確かめに動くと
住宅の裏手に置かれた古新聞から火の手が上がっており
その前には ライターを握りしめた男が立っている
徐々に大きくなる炎に照らされるその男は 黒い気を身に纏っていた
〝野上 九条 連携して速攻で片付けろ いくぞ 〟
「捕捉転移 」
空間が固定され浮遊感を感じる と同時に聡君は神威を発動させていた
手の上のボールのような物を足元に落とすと 男目掛けて蹴りこむ
途中でそれは鋭利な円錐に姿を変え 男の身体を貫いた様に見えたのだが
「お前ら いきなり何しやがるんだっ 」
男は黒い影を揺らめかせ 平然とした顔をしてそこに立っていた
どうして 何で? さっきの攻撃は確実に当たっていたはずなのに
悩む私の横では 聡君が再び神威で出来たボールを蹴りこんでいた
鋭利な円錐に姿を変えたそれが男に迫る 今度こそ当たると思ったが
何処からともなく現れた黒い壁に行く手を阻まれ 掻き消えてしまった
〝奴は闇の力を使えるようだな… 少々やっかいな敵だが
攻撃の手を緩めるなっ 闇の力も神威と同じで無限じゃない〟
戸惑う頭に古賀さんの声が響き
〝俺が奴の気を引き付ける 夏美は回りこんで背後から切れ〟
聡君からは攻撃法が指示された
「おっさん なんの恨みがあって火つけたか知らないけど 」
聡君は言葉と神威を見せつける事で男の注意を自分に集める
その間に男の視界から外れるように回り込み 背後に立つと武器を具現化した




