徹夜明け
徹夜はツライです
「お疲れ様でした 」
戻った神楽さんに 先に遠野さんが声をかける
「大丈夫でしたか 」
「あぁ 急に視界からいなくなったと思ったら突然倒れていたんで
驚いて悲鳴を上げてしまったみたいだね 」
「ちょっと時間をかけすぎちゃったかしら 」
遠野さんがばつの悪そうな顔をする
「いや こちらでは2~3秒の出来事だから問題ないよ 」
さらっと答え 残してきた人影に背を向けたまま歩き続ける
「それで どうしたんですか 」
その後に続きながら私も質問を投げかける
「事情を聞いて落ち着かせて 救急車を呼ぶように言ってきた 」
「それで あの人は本当に大丈夫なんですか 」
「数時間後には意識が戻ると思うわ 」
横にならんだ遠野さんが答えると
「そして意識が戻った時には 闇に憑かれていた間の記憶は朧なものになり
僕達の存在は忘れられているんだ 」 と神楽さんが続いた
「だから 守り人の存在は世に知られることがないんですね 」
「そういう事 さて今度こそ一休みしようね 」
身体動かしたらお腹が空いた という遠野さんの意見が通り夕飯を食べ
再び繁華街を中心に移動を繰り返しながら あちらこちら見て回る
日付が変わる頃に会社へ戻ると 神楽さんが運転する車に乗り再び街に出た
適度に休みを入れながら市内を移動して回っていると 東の空が白んでくる
「そろそろ上がり時間になるわね 」
腕を頭上に組み背筋を伸ばしながら遠野さんが言うと
「そうだね 今日はこれで終われそうだよ 」
時計を確認した神楽さんが答え 車を社に向けて走らせた
駐車場に車を入れると 東の空が赤く染まり太陽が一日の始まりを告げる
「お疲れ様でした 」
後部座席のドアを開け外に出ると ひんやりした空気が体に触れる
「ほんと寒くなったわ 冬は嫌なのよ勤務時間が長くなって 」
同じく外に出た遠野さんが言うと
「こんな所でぼやいてないで 上に行くよ 」
神楽さんは ガラス扉の鍵を開け中に入って行った
後に続き事務所まで上がると 報告書なる物の書き方を教わりながら
記入していき 業務終了となった
「では お先に失礼します 」
挨拶をして 事務所を出ようとすると
「次の勤務日は明日17時からで 古賀と野上に付いてもらうから 」
と次回勤務の予定を告げられた
「あの二人は 面白いわよ 見てて飽きないしね 」
遠野さんは まだ報告書を記入中だったが 顔を上げこちらに目線を向け
含みのある笑顔を見せた
面白い理由… なんとなくわかる気もするが 気にするのはやめておこう
二人に挨拶をして 先に事務所を出る
部屋に帰って朝ごはんを作るのも面倒だし コンビニに何か買いに行こう
そのまま一階まで降りて外に出ると 道の先を歩く聡君の姿が見えた
「おはようっ 」
そっと近づき 声をかけながら腕を掴んで引っ張ると
「うわっ 」
声をあげ振り向いたその顔は 私を満足させるような表情を浮かべていた
「ねぇ びっくりした 」
なんだか嬉しくなってしまい 掴んだ腕を取るようにして自分の腕と組む
「夏美か~ こんな時間にどうしたんだ 」
「仕事帰りだよ 朝ごはん買いにコンビニ行こうと思って 聡君は? 」
「あぁ… 」
歯切れの悪い返答に 視線を向けると顔が若干だが赤くなっているよう見えた
ここのところ急に冷え込んできたし もしかしたら熱でもあるのかな
「調子悪いの? 」
私より少し高い場所にある顔を見上げると 不自然に逸らせれてしまう
「いや だから… 」
しどろもどろの答えしか返ってこない なんだかイラッとした気分になる
「心配してるのに その態度ってどうなのっ 」
つい強い口調で言うと
「だぁっ もう… 腕 見てみろよ 」
視線も合わさずに返す
うん? 腕って何の事だろう 視線を落とすと
組んだままの聡君の右腕をいつの間にか ぎゅっと抱え込むように
自分の身体に密着させていて その腕に胸が思いっきり当たっていた
「ひゃっ 」
驚きの声と共に 組んでいた腕を放す
しまった つい友達へのノリでやってしまっていたんだ
っていうか 今まで男の子と腕なんて組んだ事ないのに 何やってるんだ私っ
「ごめんね… 」
今度は 恥ずかしくて私の方が顔を見れなくなってしまった
「いや まぁ 俺が言うのもなんだけど… 気にするな 」
聡君の声も なぜか上ずっているように聞こえる
「徹夜だったから ちょっとハイになってたかも ホントごめんっ 」
徹夜明けは 妙にハイな気分になることがあるが… 苦しい言い訳だな
「そうだよな そういう事あるよな… 」
その後 ぎこちない雰囲気のまま買い物をし寮へと戻る破目になった




