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天原学園

学校に着くまでの短い話です

家からバス停までは徒歩3分程の距離だ 

いつもはのんびり歩いていく道を 今日は走って行く

容赦なく照りつける太陽と熱い空気が体に纏わりつき 汗が噴出してくる


バス停に着き ふぅ~と肩で息をすると すぐにバスがやって来る 間に合って良かった

後部ドアが開く ステップを上がり冷房のよく効いた車内に入ると 車体の後方から声をかけられた


九条くじょう先輩 おはようございます」

そこには 部の後輩 斉藤さいとう あかね が居た


「おはよう あかねちゃん」

返事を返し隣に座る

「今日来る人ってやっぱり強いんですよね 楽しみだな」

2年生の茜は 時期主将が決まっている女子剣道部の中では実力者だ

というか まともに剣道ができる女子部員は 私と茜しかいないのがわが部の実情だ…

部員は 3年生は私1人 2年は3人 1年は2人と同好会レベルだ

しかも茜以外は初心者で 真剣に打ち込むような子達ではない


対する男子剣道部は 部員30名を超える人数がいて

西日本ではトップレベルの選手も在籍している

はっきり言ってしまえば 男子のオマケとして女子部がある程度だ

なぜ こんな状態で部活として存続できるのかは 天原学園あまはらがくえんの方針が大きくかかわっている


私が通う天原学園は 関西圏では有数の大企業である 神楽かぐらが経営をする学校だ

もともとは京都に古くからあった財閥の1つで 多くの土地を所有しており

不動産業をメインとしながら 病院や学校・ショッピングモールなどの経営を手広く行っている  


母体が金銭的にゆとりがある会社なので 施設が充実した私立の学校の割には

学費は格段に安く 公立の学校に塾代を足した程度でいいらしい

しかも ある程度の成績をキープしていないと 週末や長期にの休みにびっちりと

補習を入れて がっつり勉強させられるのだ

そうなると 公立に言って塾に行くより ここに通った方がお徳感があると保護者は考える

ゆえに関西圏ではかなりの人気校になっているのだ


天原学園は 優秀な人材育成をする為にという理由で『文武両道』を掲げている

その一環として『生徒は必ず部活動に所属すること』 という校則がある 

そして その部活には文科系なものは一切含まれていないのだ…


しかし 全員が全員『文武両道』を本気で目指せる訳でなく

逃げ場として 男子にも女子にもゆるい部活が何個か用意されているのだ


そのうちの1つが 女子剣道部だった


茜がこちらをちらりと見て 盛大なため息をつく

「はぁ~  ねぇ 九条先輩」

「なに?」

「先輩 夏休みが終わったら引退しちゃうんですよね」

「うん 一応受験生だからね。 勉強しないといけないし」

「留年してもう一回3年生やってくださいよ」

真顔で恐ろしいことを言い出した

「いや! ってかなに言い出すの?」

「だって 先輩いなくなっちゃったら 誰と練習すればいいのか…」


確かに その通りなのだが 留年は絶対ごめんだ


「男子に混ざって 稽古つけてもらいなよ むちゃくちゃ強くなれるかもよ」

含みの有る笑いを浮かべると ますます落胆した顔をして

「たまにならいいけど 毎日はさすがについていけませんよ」

 

高校にもなると いくら頑張っても男女の体力差は顕著で同じ稽古を毎日続けるのは厳しいものがある


『次は 天原学園前です』

話し込んでいるうちに バスには目的地へと到着するアナウンスが流れていた


バスから降りると 灼熱地獄とも言ってよいくらいの暑さが襲ってくる

横断歩道まで行き 幹線道路を渡るとすぐそこに天原学園の正門がある

夏休み中でも多くの部活が活動しているので 

正面の大きな門は開かれて守衛さんが脇に立ち 入ってくる生徒に「おはよう」と挨拶をしている


「おはようございます」

茜は挨拶をすると先に入っていった

私は 智兄のことを聞く為にそこで足を止めた

「おはようございます あの聞きたいことがあるのですが」

「はい なんでしょうか?」

「従兄弟が 部活の見学をしたいといっているのですが 校内に入れますか?」


守衛さんはちょっと考えると

「身元と目的がはっきりわかっていれば 校内に入ることはできますよ」

と 後ろの守衛室に置いてある来校者用の受付名簿を取って見せてくれた

「ただ 部活を見学できるかまでは… 」

確かに そこまでの権限は無いよね とちょっと苦笑しながらも

「そっちは 顧問に聞いてみます ありがとうございます」

とお礼をいいその場を後にしようとすると

「一応 見学者の名前だけ教えておいて頂けると」

と呼び止める声がしたので 振り返り

「新堂 智樹です よろしくお願いします」

と 軽く頭を下げてから 先を行く茜の後を追いかけた

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