神威
成長していく姿は うまく行き過ぎるのも遠回りしすぎるのもなぁ…と思って
いるのですが バランスとることは難しいことです
「九条 どれだけ神威注ぎ込んだ 」
古賀さんが呆れ顔でこちらを見ている
「いや どれだけって言われてもよく分かりません
札に熱がどんどん吸い上げられていく感覚がして それで 」
「吸い上げられる? やはり二文字は制御が難しいのか 」
今度は一人でブツブツ言いながら考え事を始めてしまった
いったいこれからどうすればいいんだろう 途方に暮れていると
「いや~ すごいねコレやったの夏美ちゃんでしょ 」
後ろから声が聞こえ振り向くと 神楽さんが立っていた
「どうしてここに 」
「う~ん それは僕が聞きたいくらいなんだけれども 」
ちらりと古賀さんに視線をやってから こちらに向き直り
「夏美ちゃんが来てるって聞いたから 様子を見ようとして部屋の前まできたら
いきなりココに飲み込まれてたんだ 」
「すみませんでした 神威の制御っていうのがわからなくて 気づいたら… 」
「こんな大きな空間になっていた って言う訳か 」
「その通りです で古賀さんは何かブツブツ言いながら考え始めちゃって
どうしていいのか分からなくて 」
「そんな 泣きそうな顔しなくても大丈夫だよ 」
離れた場所にいた身体がふわっと宙を蹴るようにして 近くまでくると
突然頭に手を乗せて 髪をくしゃくしゃと撫でた
あまりにも予想外の行動に驚き 固まってしまう
「夏美ちゃんは 本当に分かりやすいね~ どう少しは不安な気持ちなくなった 」
「…はい 」
「さてと このままここにいても仕方ないから『空間解除』して戻ろうか 」
「昨日古賀さんがやっていたのを見ただけなので やり方分からないんです 」
「僕がいるでしょ 大丈夫 」
いつの間にか私の後ろに回りこむと 右腕に手を添えて
「まずは 人差し指と中指を真っ直ぐつけて 他は軽く握って 」
「こうですか 」
「そうそう 左手は真っ直ぐ下に下ろして 右手の指先を左手首にあてて 」
言われた通りの形を作る
「そうしたら 意識を指先に集中させて指先で空気を切るっていうイメージを
作って『空間解除』と唱えながら 斜め右上に向かって動かしてごらん 」
言われた通り指先に意識を集中させて 切るイメージで斜め上に動かし
「空間解除 」
と唱えると 浮遊感がなくなり元々いた部屋へと戻ると同時に
立ちくらみのように足元がふらつき 一瞬目の前が真っ暗になったが
なんとかそのまま踏みとどまる事ができた
「初めてにしては 上出来です 」
再び頭に手を置いき くしゃくしゃと髪をなでる
こんな風に褒められるなんていつ以来だろう ちょっとくすぐったい気分だ
「神楽さん いつの間に来てたんですか 」
突然空間が解除され 我に返った古賀さんが不思議そうな顔で見ていた
「う~ん 夏美ちゃんが空間転移させるぐらいに来て 巻き込まれた 」
「すみません 予想外の事態が起きて 俺が付いていたのに 」
「別に怪我した訳じゃないし 何か壊れるとかの被害もないし 問題ないでしょ
それよりも いきなりすごい大きな空間作ってたけど 夏美ちゃんは大丈夫なの 」
突然話を振られて 何の事かもよくわからない
「えっと 何がですか 」
「いきなりあんなに大きな空間を作って解除するのに神威を使ったら
かなり消耗してるはずなんだけれども 」
「一瞬立ちくらみはしましたが 今はなんともないです 」
「それだけだった 」
「はい なにかまずいですか 」
二人は驚いた表情でこちらを見ていた そして古賀さんが徐に口を開いた
「個人が使える神威の量は 魂の力に応じて決まっているんだ それを訓練することに
よって いかに効率的に使えるようにするかだけで絶対量が増える事は決してないんだ 」
「そうなんですか 」
古賀さんの言わんとすることがよくわからない
「つまり 何の訓練も無しにアレだけ大きな空間転移と解除をしたら 普通なら
立ちくらみぐらいじゃ済まないはずなんだが 」
「そうだね 僕でも最初からあんな大きな空間作ってたらしばらくは立ち上がれない
くらい消耗してたと思うよ やっぱり月讀様の力は ほかとはちょっと違うのかもね 」
「あの 私はどうしたらいいんでしょうか 」
「さっき古賀が言った通り神威は無限ではないから まずは使う事より
制御から覚えないと 夏美ちゃんの場合力が大きすぎるみたいだから
順番が逆になるけどそっちの方がいいでしょう 」
「そうですね 普通は使い慣れてから制御を教える方が効率いいんだが 」
「そうしよう じゃあ古賀 君は今日はここまででいいから 」
「まだ 大丈夫です 」
「昨夜仕事だったでしょ 今の状態で制御教えるのは互いにとって良くないと思う
後は僕がやるから もう休むといいよ 」
古賀さん やっぱり昨夜は仕事だったんだ 昨日の昼も私に付き合ってくれていたし
その前も夜中に迎えに来てくれていたし 疲れてて当然だよね
「しかし 」
「反論は許さない 古賀 君は今すぐ部屋へ戻って休養をとること 」
神楽さんのこんな強い口調初めて聞いた いつも穏やかなしゃべり方なのに
すると古賀さんも観念したのか
「分かりました 後はお願いします 九条 明日の事は後ほど連絡する 」
そういい残し 一礼すると部屋を後にした




