タイプB 流布
時間の感覚が狂い始めていることに気が付いていた
これもそれも、全ては自分の自己責任であり、自己管理の甘さが招いているのは間違いなかった
それは、アルバイトでの出来事である
私は、その店で三年目という事もあり
大抵のことは、任されても代用が出来るくらいにはなって居た
その日も店長が、別件でも店を離れ
そのほかのアルバイトも、急病とかで、結局自分一人が、居ることになった
忙しいことは忙しいが、それでも、平日という事と、来客のピークから外れているという事もあり、私は、何とか、一人でも回せていたのである
「あの、すいません、落とし物ありませんか」
それは、赤いワンピースを着た女性であり
ベージュ色の袋を、落としたというのである
引継ぎの時には、そんな話は聞いてはいなかったが
前日に私が聞き漏らしている可能性もあると思い
急いで、落とし物の置いていある
バックヤードに入った
それは、その時に起こったのだ
一通り、段ボールの中の忘れ物を、見てみたが、言われたようなものはどこにもなく、仕方なく外に出ようとしたとき
あかないのである
扉が、施錠されたように
私は驚いて、外を見ると、小さな曇りガラスに、赤い色が見えた
始めはそれが何かは全く分からなかったが
それが、どうも、あの赤い服を着た女性に思えた
「すいません、無いようです」
バックヤードまで、お客さんが入ってこられては困るのではあるが
私はそういうが、相手からの返答はない
この部屋に入ろうとして、外側だけにある鍵をかけてしまったとそう思ったので
「鍵をかけてしまっているようなのですが、鍵を、開けてくれませんか」
私がそう言うが、一切返答はなく
その目の前には、赤い女が立っている
もしかしたら、カーテンが赤くて、それが曇りガラスの向こうに見えているだけかもしれない
そう思うが、前に、そんなものがあった記憶はない
幾度か声をかけたが、変わらない相手の態度に、語尾を強めたり、強めにドアをたたいたが、一向に、相手は、何の行動も、起こしはしなかった
もともと、倉庫として作られたそのドアは、蹴ったところで、鉄板のような音が響くだけで
私は、息苦しさの中
店内がどうなっているのか
行列になって居るのか
次のアルバイトの人まで、どれくらいかを考えたが、室内に時計はなく
今一体どのくらい経過しているのかもわからない
「あのー」
大声で、店のほうへ声をかけるが、全く反応はない
結局私は、何度も何度か行動したが、状況は変わらず
仕方なく、腰を落ち着けた時、日頃の勉強のつかれか
コンビニの倉庫で、仕事中にもかかわらず、眠ってしまった
ただ、換気扇の羽の音だけが、天井近くでなって居るのが聞こえ続けていた
その中に何か水音のようなものが混じる
「おっおい大丈夫か太中君」
僕は、そう呼ばれ目を開けると、太った店長が、こちらを見ている
その後ろには、警察官の顔が制服越しに見える
「あっあの」
「大変だったね」
店長は、心配そうに、肩をたたいた
「何が」
そういう私に警官が
「実は、扉の前で、自殺がありまして
どうやら、あなたを閉じ込めた方が」
振り返ると、ロープが天井から垂れ下がっており、揺れていた
狭い廊下には、人ごみと同時に、どこかアンモニア臭が、わずかに漂ってもいた