広島旅行
その日私はあまりにも殺人的な暑さの中
八月を恨むように、公園の水飲み場にいた
そのままっ路線電車に乗ってもよかったのであるが
横をたまたま見ると、蛇口が見えたのだ
私は駆け寄るように、その水場に行くと
焼けるような蛇口を開け
茹だるような熱湯を、流して、まだ飲める熱さまで、しばらく待っていた時
向こうのほうで、こちらに向かう姿が見えた
それは、それは、陽炎なのだろうか、ゆっくりと黒く揺れている
私は、そのままぬるい蛇口から出ている
水に口をつける
軽いめまいをした頭が、わずかにましになったような気がした
ようやく顔を上げると、向こうのほうに、やはり、影がある
それは、一つかと思ったが、祭りでもあるのか、ゆらゆらと揺れていた
私が、後輩に、そんな話をしたのは、夏休み明けである
「はい、もみじ饅頭」
一つだけですか
そんなことを言う後輩を前に
私は扇風機で涼しげな風を浴びていたのである
「それで、何の祭りだったんですか」
っえ
私はそれを聞かれ
「ああ、始めは祭りかと思ったんだけど
こっちに来る人がいて
見ると、黒いスーツを着て、花をいろんな人が持っていたから
葬式でもあったんだと思う」
「先輩それ、本当にお葬式だったんですか」
私はそういえば、こちらに来なかった
川辺の人の姿が、やけに黒く見えたことを思い出していた




