入学初日2
レジュメはじっくり読む派
美少女との初会話の後は
淡々と学科の今後のスケジュールや担任、各教科の先生の説明などが行われた。
今すぐに覚えなくともそのうち覚えるだろうと頬杖をついてあくびを噛み殺しながら聞き流す。
昨日までの怒涛の引っ越し、荷解き、多少の緊張感で疲れて眠い。
帰りたい欲だけが増していく。
教室を見渡すと周りをキョロキョロしたり真剣にメモを取ったり様々だ。
後ろからの席って意外とよく見える。
席が階段状に段々と高低差があるからかもしれない。
大学ならではという感じがする。
ふと、ペラペラと適当に捲って読み流していたレジュメに嫌な予感がした。
『入学式三日後に学部合同で親睦を深めるため、二泊三日の合宿を行う』
知らない人たちといきなり一緒に寝食を共にするのか?嫌すぎる。
大学生ってもっとドライな関係を築くものだと思ってた。
そのページをよく読んでみると新一年生は強制参加と書いてあった。
しかもどこかの山に行くらしい。
さすがド田舎の大学だ。山で何するのだろう。
私が入学した大学は私立の医療系の大学だが決して都会にあるわけじゃない。
むしろ周りに娯楽施設なんてほとんどない車がないと生きていけないような場所にある。
だからこそ地元の子や遠方から大学の近くに下宿する子が多い。
国家資格を取れて地元から遠く離れられそうなところがここくらいしかなかったのだ。
それと私の学力で入れるとこという条件付き。
これに関しては自業自得なので文句は言うまい。
田舎でのんびり一人でスローライフなキャンパスライフを送ろうと思っていたのに。
こんな無理矢理な交流会のようなものがあるなんて聞いていない。
担任の話を聞くのもそっちのけで私はそのレジュメを齧り付くように読んだ。
そこには以下のような内容が記されていた。
・学科ではなく学部全体で行うこと
・班分けは毎日ランダム
・レクリエーションではフィールドワークなどを行う
・必ず団体行動をすること
などなど。
私にとっては苦痛でしかないことばかりつらつらと書いてある。
行きたくない。こんなの聞いてない。
既に私の心は折れていた。
私の所属する臨床工学科は30人ほど。
他の学部の放射線科、薬学科、工学科なども参加するとなるとかなりの人数になるだろう。
加えてボランティアの先輩が手伝いに来てくれるらしい。
先輩方は泊まらずに帰宅するようだが。
仮病でも使って休みたいが今後浮くこと間違いなし。
人生リセットの気持ちでここまで来たのだからわざわざ悪目立ちするようなことはできない。
我慢して頑張って普通にしていよう。
三日の辛抱。お利口さんにその場を凌ぐしかない。
そう結論付けて先生の話を聞くことにした。
授業は合宿後からで、それまでは教科書を購入したりシラバスに必要な時間割決めの時間に充てられるようだ。
不安を抱えつつ、話が終わるのをじっと待った。
「はい、それでは以上になります。改めましてみなさんご入学おめでとうございます。良い大学生活を送れるように頑張りましょう。」
そう担任の言葉で締め括られ入学式兼説明会は終わった。
すぐさま配られた資料を片付け教室を一番に出た。
隣の美少女が声を掛けたそうにしていた事は私は知らない。
下宿所に帰る