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「親子喧嘩」

 周囲を取り囲む兵士達を見ながら、アーケオはルーベルトに目を向ける。


「ここは会場の近くですよ」


「心配いらん。裏口は元々、関係者以外立ち入り禁止。つまり一般人はここにこない」


「二人に対してこの数とは卑劣な」

 マシュロが懐にあるナイフに手を伸ばした。アーケオも剣を構えた。


「逆らうものは屈服または皆殺しにした。それが我がローゼン王家だ」


「そうですか。勇者ローゼンが泣きますね」


「時代は移り変わる」


「そうですか。じゃあ、僕がローゼンを終わらせます」

 アーケオは睨んだ。今まで虐げて来た父。かつてなら恐れ、畏怖の対象でもあった人だ。でも今は怖くない。


「王の力。見せてやる」

 父が顎髭を数回撫でた後、懐から見覚えがある黄金の剣を取り出した。


「本物の勇者の剣と偽物の違い。見せてやる」

 剣を握った途端に凄まじい威圧感が漂ってきた。凄まじい速度で迫って来た。


「ふん!」

 ルーベルトがアーケオに斬りかかった。アーケオは攻撃を剣で流していく。

 凄まじい剣戟。力も速度もかなりものだ。十年前、『夜明けの翼』の襲撃を退けた実力は健在だった。今でこそ前線に立つことはないが、かつてはその圧倒的な実力から戦場で恐れられたと言われている。


 その傍らでマシュロが無数のローゼン兵士を相手にしていた。彼女の実力を考えれば、あちらは心配しなくても問題はない。


 問題はむしろルーベルトの方だ。するとルーベルトの目が黄金の光を放った。


「まさか!」


「その通り!」

 ルーベルトがアーケオの動きを読んだように動き始めた。ルーベルトの魔法もブレドと同じく未来予知だったのだ。


「隙あり!」

 ルーベルドの剣が病み上がりの体を斬りつけてくる。


「どうだ? 我が剣戟は? ブレドとは比べものにならんだろう?」


「腕は確かですが、兄さんの方がもう少し強かったですよ?」


「図にのるなよ。出来損ない!」

 ルーベルトが地面を蹴って、さらに早い速度で動き始めた。その時、父の背中から誰かが迫ってくるのが見えた。


 マシュロだった。なんと短時間で全ての兵士を制圧してしまったのだ。圧倒的な実力に驚きつつも、彼女の無事を知って、思わず安堵する。


 彼女がそのまま、ルーベルトの頭上から黄金の光を放つ勇者のナイフを目の前に近づけた。


「ぐっ!」

 アーケオに気を取られて、予測できなかったルーベルトは強烈な光に視力を奪われて、目を抑える。


 その隙にアーケオは手を休める事なくルーベルトを斬りつけた。これまで母やマシュロを侮辱した事。その怒りを糧に神速の域で剣を振るい続けた。


「そんなバカな。本物の勇者の剣が偽物に負けるわけが」


「違いますよ。これも本物です」


「だまれええええ!」

 父が怒号を上げて、剣を叩きつけてくる。殺意を滲み出すその姿はまさに獣。一国の王としてはあるまじき姿だった。

「贋物贋物(がんぶつ)が! 図にのるな!」

 目元を抑えたルーベルトが剣を振った。アーケオはその攻撃を躱して、空いた拳を打ち込んだ。かなり効いたのか、父の顔色が一気に変わった。


「馬鹿な。こんな、出来損ないに」

 悪態をつきながら、父が白目をむいた。その顔はアーケオの前で倒れたブレドそっくりだった。



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