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「狡猾」

 緊張感漂う闘技場。魔法を発動したブレドを警戒しながらアーケオは斬りかかった。しかし、ブレドがそれを見切っていたように躱して、逆に攻撃を仕掛けて来た。


「ぐっ!」

 ブレドの剣がアーケオの体を斬りつけた。真っ赤な血が服を赤く染めたが、彼は止まる事なく、ブレドに立ち向かっていく。


「無駄だ!」

 容赦ない剣戟の数々にアーケオは押された。腕、足、横っ腹。様々な箇所が斬りつけられた。


「やっぱり強力な魔法ですね。未来予知」


「ふん。何を今更」

 ブレドの魔法。それは未来予知。対象を視認して、その動きを予測する能力だ。

 凄まじく強力な魔法である事に間違いはないが、アーケオは長年の観察から弱点も理解し始めた。


 アーケオは距離をとって、剣にマナを込めた。


勇者(ブレイブ)斬撃(スラッシュ)!」

 アーケオは地面に向かって、斬撃を打ち込んだ。爆発が起こって、辺りが巣穴煙に包まれる。そして、アーケオは意識を集中させる。彼の予想が正しければ、この攻撃は当たる。


「一閃!」

 アーケオはブレドの気配を感じて、素早く剣を振った。


「がはっ!」

 振った剣は見事にブレドの腹部を深く切りつけた。途端に会場から歓声が沸いた。


「何故!」


「兄さんの魔法の弱点を知ったからですよ」

 アーケオは予想していたのだ。これまでの戦いと虐げられた過去の記憶を元にこの魔法の弱点を探ったのだ。未来予知は強力な魔法だ。しかし、弱点もある。それは対象が視認出来ていなければ、効果を発動できない事だ。相手からの視覚的情報を元に未来予知を行なうからだ。


 アーケオは痛みで動揺しているブレドに剣を振るった。しかし、砂煙が消えた事により、未来予知が発動して躱されてしまった。


「図にのるな!」

 ブレドが何度も剣を振るって来たが、剣戟が当たらない事が多くなった。おそらく腹部へのダメージが大きかったせいか、未来予知が維持しづらくなっているのだ。


 必然的にアーケオの攻撃のターンが多くなった。アーケオは勝利に食らいつくように剣を振った。このままいけば勝てる。そう確信した時、アーケオの右腕に僅かな痛みを感じた。目を向けると幾つも針が刺さっていた。


 彼は察した。その針は以前、奇襲してきたタイパン・サーペントが使っていたものと同様のものだ。


「毒針!?」


「その通り」

 ブレドが蛇のような目を向けた。兄の非道さに思わず、歯を噛み締めているとブレドが走ってきた。何度も刀身をぶつけてきたが、アーケオは何度も受け止める。

「どうして、こんなことを。あなたなら普通に戦っていても強いはずです」


「お前には分からないかも知らねえけどな。世の中、才能や努力だけじゃ乗り越えられないものがある! 拭えない恐怖がある! それに抗うには非道であること! 狡猾であること! それ以外ないんだよ!」

 勝利こそ全て。その為ならどんな手段でも使う。結果主義。それがブレド・ローゼンという男の根幹だ。


「さて、どういうフィナーレを飾ってやろうかな」

 黄金色の髪を靡かせながら、狡猾な笑みを浮かべた。


ありがとうございます!

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