「アーケオVSストリング」
控え室の中、アーケオは試合を前に緊張していた。すると控え室がノックされる音が聞こえた。
「どうぞ」
返事を返すとマシュロが顔を見せた。
「アーケオ様。大丈夫ですか?」
「うん。緊張しているけど大丈夫。戦えそう」
「左様ですか。私は会場からアーケオ様を見守っております。どうかご武運を」
「ありがとう!」
マシュロの励ましを受けて、アーケオは少し肩が軽くなった気がした。今なら戦える。
「アーケオ選手。出番です」
「はい」
職員に導かれて、闘技場の前に向かっていく。闘技場に着くとアーケオの前に全身白色の服を着た男が立っていた。口元も白い布で隠されており、どこか不気味さすら感じる。
闘技場の上部分には父であるルーベルトがアーケオを見ていた。その目は城内でいつも向けられていた諦念の目だ。
「アーケオ選手VSストリング選手! 試合開始!」
司会者の声と同時に戦いが始まった。アーケオが剣を抜いた時、観客がどよめき始めた。
「あれ。勇者の剣か」
「嘘だろ」
「きっと模型よ」
観客の声を声を振り切りアーケオはストリングに切り込んでいく。対するストリングが手から真っ白な棒のようなものを生み出した。
白い棒と剣がぶつかった。棒をよく見ると細かい糸がいくつも重ねられていた。
「糸?」
「気付いたか。俺の魔法だ」
アーケオは距離をとった時、ストリングの左手から素早く複数の糸が飛び出た。糸はすぐにアーケオの剣に絡まった。このまま奪い去って戦闘を続行不可能にしようとしているのだ。
「なんて粘着力だ」
「魔法で粘着力も自由自在に変える事が出来る」
糸の力が強く、引きはがせない。アーケオは剣に力を込めた。すると剣が黄金に輝いて糸が焼き切れた。
「さすがは勇者の剣。なんで君が持っているかはよく分からないけど略奪と拘束はうまくいかなそうだな」
「降参しますか?」
「いいや。ここからが本番だ。スパイダーゾーン!」
ストリングが叫びながら、地面に手を付けた瞬間、闘技場の四方に大きな白い柱が伸びて来た。そして四方の柱から柱へと次々と細かい糸が張り巡らせていく。
「なんだ。これ」
「すげえ」
観客達がどよめく中、ストリングが柱と柱を繋げる糸に飛び乗った。下から見上げるとまるで中に浮いているように見える。
「いくぞ」
ストリングが糸で作った短剣を構えて、糸から糸へ凄まじい速度で移動し始めた。
「早い!」
アーケオはストリングの速さに驚いているとストリングがアーケオの腕を斬りつけた。
「どうした? 手も足も出ないか」
「いいえ」
ストリングが目を見張るような速さで移動しながら、襲ってくる。しかし、アーケオはこれまでの修行や経験もあって、反応する事が出来た。
「なかなかやるな! この動きに反応できるやつはそうそういない!」
「修行の成果ですね」
次々と浴びせられるナイフでの攻撃と高速移動に対抗していく。しかし、徐々に体力は削られていた事もあり、長期戦に持ち込まれると勝利は厳しい。
アーケオは剣に力を込めた。剣は黄金の光を放ち始めた。
「なっ! させるかあ!」
身の危険を感じたのか、ストリングが飛んでこようとして来た。
「勇者の斬撃!」
アーケオは力強く、四つの柱を薙ぎ払った。
「なっ!」
柱と柱に繋いだ糸に立っていたストリングがバランスを崩して、地面に向かって落下した。アーケオはその瞬間を逃すまいと走った。
ストリングが上手く、受け身をとって態勢を整えようとしたが、それよりも早くアーケオの剣が彼の首元を捉えた。ストリングが諦めたようにナイフを足元に捨てた。
「勝者アーケオ!」
司会者の叫びとともに会場から一気に歓声が湧き上がった。アーケオは安堵感から軽く息を吐いた。会場の上を見ると傲慢な王が眉間に皺を寄せていた。おそらくアーケオが勝った事。そして勇者の剣を持っていた事が気になっているのだ。
控え室に向かっているとマシュロが扉の前に立っていた。
「アーケオ様! 初戦突破おめでとうございます」
「ありがとう!」
彼女も見てくれていたのだ。彼女への恩を返すためにも初戦で負けてはいられない。
「さて帰る準備をして宿に戻りましょう」
「うん」
アーケオはすぐに準備をすまして、マシュロとともに宿に向かった。世界大会はまだ始まったばかりだ。
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