「世界大会」
アルタリアに続く平原を進みながら、アーケオはとある疑問に直面していた。
「魔物がいない」
「確かに」
以前より魔物との遭遇率が減っているのだ。
「おそらくですが三皇魔を討伐したからでしょう」
「以前、クリスさんがおっしゃっていましたよね。三皇魔は魔物を増やすと。増加の一役を担っていた存在がいなくなったことで減少しているのでしょう」
アーケオは納得した。三皇魔のうち、二体が討伐されたことによってその効果が目に見える形で現れたのだ。
「アーケオ様のおかげですよ。この数カ月で三皇魔のうち二体を討伐するとは、すごい成長です」
「そっか。なんか照れるな」
マシュロの褒め言葉にアーケオは顔を赤くした。
「あと少し進めばアルタリア王国に着きます」
マシュロが地図を広げて説明してくれた。彼女の助けもあり、旅はとても順調だ。
すると肩が少し濡れた感覚がした。眼を向けると水滴を一つ垂らしたような小さな跡があった。
「雨ですね。少しお待ちを」
マシュロがすぐさま、荷物入れの中から傘を出してくれた。傘に入った瞬間、雨は本格的に振り始めた。
「雨で足元が滑りやすくなるので、お気をつけ下さい」
「うん。ありがとう」
アーケオはマシュロとともに傘の中で寄り添いながら、歩いていく。しばらく進むと大きな城が見えてきた。
「見えてきました。アルタリアです」
王国の門をくぐる前、アーケオは目を疑った。アルタリアの国旗の横にローゼンの国旗が立っていたのだ。
「ああ、この国もそうでしたか」
「どういう事?」
「ローゼン王国の植民地です。ローゼン王国は多くの植民地を保有していて、ここもその一つです」
アーケオの胸の奥が針で刺されたような感覚がした。自分達の一族が他の国を侵略したのだ。
アルタリア王国に入るとそこには見覚えのある街並みが広がっていた。ローゼンの植民地という事もあってか、ローゼンによく似ている。
そして、道ゆく人たちの服装を見て、違和感を覚えた。随分と綺麗なのだ。入国する前は植民地と呼ばれているものだから見窄らしい格好をイメージしていた。
しかし、皆、身なりをしっかりと整えている。
「植民地ってもっと国が酷い事になっていると思っていた」
「アルタリアは元々、貧しい国でしたからローゼン王国の属国になってからは経済が安定している。だからそこに依存する人間も少なくないのです」
元々、国として強くなかった国が大国を頼る。アーケオは学園に通っていた頃、学んだ事だ。街を見た感じは皆、普通に暮らしている。
「ただ。この国にあった文化そのものは無くなった。アーケオ様がさっき言っていましたね。ローゼンと変わらないと。その通りです」
アーケオは胸の中をかき乱されたような気持ちになった。ローゼンの庇護下にある限り衣食住には困らないし、平和な日々も続くだろう。
しかし、かつて誇っていたであろう文化はどこにも残っていないのだ。蜂蜜のように甘く粘着質な支配がこの国では蔓延している気がしたのだ。
「この国の人達は反発しないの?」
「反発をしていた人間は基本消されます。支配というのはそういうものです。ですが国民に不満はなさそうですね」
マシュロが淡々と説明していく。しかし、アーケオは分かっていた。彼女の声には怒りが混じっていた。胸にモヤを抱きながら進んでいると目的地に着いた。
「ここが世界大会の場所」
アーケオは建物のあまりの大きさに驚いた。会場は円状になっており、レンガで出来ていた。早速参加登録をするため、会場の中に入った。会場には既に多くの人が並んでおり、この大会の規模の広さを再確認した。
「みんな強そうだね」
「大陸中から腕に自信がある人たちが集まっているのでしょう」
マシュロとともに来場していた戦士達を見つめる。明日から彼らと戦いを繰り広げるのだ。不安と同時に楽しみも湧いてきた。マシュロへの恩返しと自分の成長のために必ず勝ってみせる。アーケオは強く決心して、参加書類に名前を書き込んだ。




