表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/42

「一閃」

真っ白な布が弾いている一室。アーケオはそこ黒い布で目を覆っていた。彼の前では両手に野菜を持った鋭心が立っている。


「いいか。我が剣技。一閃に大事なものは集中力と瞬発力。今から野菜を投げる。目を隠したその状態で切れ」


「はい」

 アーケオは剣を構えて、意識を集中させる。目が見えない状態で剣を振るうのは初めてだ。耳がいつも以上に聞こえて、辺りの小さな物音も鼓膜に届いている。


 何かが揺れる音が聞こえた。アーケオは即座に剣を振るった。硬い何かが顔にぶつかった。


「まだまだ!」

 アーケオは再度、意識を集中させた。しかし、またもや失敗してしまった。音を聞き取れるが正確な位置が理解できない。


「耳だけで感じるな。風の流れ。向かってくる脅威。それらを感じろ。敵意を感じろ」

 鋭心の言葉に従って、敵意を感じ取ろうと集中する。敵意を向けられることはこれまでに何回もあった。その経験を思い出して脳内で反芻させる。


 時が来た。アーケオは感じ取った気配を信じて剣を抜いた。剣は何かを硬いものを切った。


「見事だ。布を取れ」

 アーケオは布を取ると真っ二つに割れたリンゴが転がっていた。


「やった!」


「お見事です! アーケオ様!」

 近くにいたマシュロが笑みを作って、拍手をした。


「今の感覚を忘れるな。それができれば視界が妨げられたとしても、戦える」

 鋭心の言葉にアーケオは首肯した。一度はできたがコツを理解していなければまだまだ難しい剣技だ。


「どんどんアーケオ様の実力が上がっていくのが分かります」

 

「マシュロさんのおかげだよ。マシュロさんが僕に基礎を教えてくれたから今の技ができたんだ」


「左様。土台なくして上達はない」


「身に余る光栄です」

 マシュロがメイド服の両端を持って、恭しく一礼をした。


「ああ、そうだ。アーケオ。お前に見せたいものがある」


 鋭心が一枚の紙を差し出した。そこには世界大会と書かれた文字があった。


「世界大会?」


「三ヶ月後、全世界の猛者が集まる大会だ」


「全世界の猛者!」

 紙を持つ手が震えた。世界中の強者達がこの大会に集まるのだ。


「今のお主ならそれに通じる実力がある。やれるだけやってみるのも悪くない」

 アーケオは再度、紙を見た。優勝者には賞金が出るとの事だ。彼はこの賞金を路銀とマシュロへのプレゼントに当てようと考えた。日頃から世話になっている彼女への恩返しが出来るのだ。そして、今の自分の実力がどれだけ強いのか。世界中の強者と戦って知りたくなったのだ。アーケオの決意は固まった。


「出ます!」


「アーケオ様。本当ですか」


「左様か」


「でも目指すなら優勝したい!」

 アーケオは二人の目を見て、しっかりと答えた。優勝してマシュロに恩を返す。同時に勝ち進めばそのぶん、強者と手合わせができるからだ。


「ほう。大きく出たな。面白い」

 鋭心が腕を組みながら、笑い声をあげた。マシュロがアーケオの気持ちを受け止めたのか、深く頷いた。



 次の日の朝。アーケオとマシュロは鋭心と和道に見送ってもらっていた。


「アーケオ殿。以前はすまなかった」


「いえ! 頭を上げてください」

 和道がアーケオに深く頭を下げた。


「ありがとう。いつでも来てくれ」


「はい。必ず!」


「もちろんです」

 ここで過ごした時間はとても濃厚だった。厳しい稽古に国家転覆の危機。そんな時間も終わりを迎えるのだ。しばらくすると船が出港の準備を開始した。アーケオとマシュロはすぐさま船に乗った。


 港で手を振る二人に手を振り返した。アーケオとマシュロは二人の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。


お手にとっていただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ