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「大江戸厳世」

動乱に満ちた城下町を抜けて、アーケオ達は将軍がいる城に向かっていた。ブラフだったのだ。城下町に出現したからくり兵はあくまで囮。


 本当の目的は将軍を落とす事だ。城の前に来た時、門の前では兵士が血を流しながら地面に突っ伏していた。


「そんな」


「くそ! 殿!」

 アーケオ達は急いで、階段を駆け上がり最上階へ向かった。その時、目の前の壁が壊れた。壊れた壁からからくり人形が五体出て来た。


「邪魔だよ!」

 アーケオは短刀を取りだしたからくり人形の首を即座に切り落とした。マシュロや鋭心も同じく、からくり人形をガラクタに変えた。


 アーケオはやっとの思いで和道のいる最上階にたどり着いた。アーケオは目を疑った。額から血を流して、戸にもたれかかる和道と部屋の中央で存在する昆虫のような巨大なからくり兵器。左右に三本ずつ生えた足で畳をしっかりと捉えていた。


「殿!」

 アーケオ達は和道に駆け寄り、安否確認を行った。


「ん? 鋭心か。奴はやはり生きていた」


「その通り!」

 からくり兵器の中から男の声が聞こえた。眼を向けるとからくり兵器の背の部分から男が出て来た。見た目は中年くらいで顔の左部分が鉄で作られていた。


「大江戸厳世!」


「この人が」

 アーケオは生唾を飲んで、剣を構える。


「いかにも! いやしかし、鋭心の屋敷を襲撃したがまさか、留守にしていて生きていたとはな。おまけに厄介そうなやつを二人も連れて」

 厳世がからくり兵器からアーケオ達を見下ろしている。


「ヤマトは私が支配する! からくり技術を持ってすればローゼンにも対抗しうるのだ! 私こそがヤマトの新たな将軍となるのだ!」


「させない!」

 アーケオはすぐさま、飛び出して切りかかった。するとからくり兵器が凄まじい速度で移動を始めた。マシュロや鋭心も攻撃を仕掛けたが目で追えない。


「我が十年の計画を舐めないでもらいたいものだね!」

 からくり兵器の前足がアーケオを襲った。あまりの威力で部屋の後方まで吹き飛ばされてしまった。


「アーケオ様!」


「よそ見をしている場合か!」

 からくりの兵器の右前足部分から無数の矢がマシュロめがけて放たれた。


「シャドー・ステップ!」

 マシュロがそう唱えると黒い影をまとって、凄まじい速度で距離を詰めた。懐から勇者のナイフを取り出して、右前足を斬りつけた。


 からくり兵器のバランスが少し傾いた。アーケオはすぐさまからくり兵器に向かって走り出した。


「図にのるな!」

 厳世が叫び声を上げた瞬間、からくり兵器の全身から無数の矢が四方八方に拡散された。そのうちの数本がアーケオの左腕と右足に突き刺さった。


「アーケオ様!」

 マシュロがアーケオの身を案じた時、からくり兵器の前足が彼女の腹部を壁際まで飛ばされた。


「マシュロさん!」

 アーケオは彼女を気にしつつもすぐさま、矢を抜いた。幸い、深くは刺さっていなかったのですぐに戦闘を続行できた。


「アーケオ! 立てるか!」


「はい!」

 アーケオは鋭心とともにからくり兵器に向かった。飛んでくる無数の矢を躱しながら、近づいていく。しかし、からくり兵器の動きは足を一本損傷しても落ちるものではない。


「グズどもめ! 私の野望の邪魔をするな!」


「ぐっ!」

 凄まじい速度で伸びた右前足が鋭心を襲撃した。彼が障子を破って、はるか後ろまで飛ばされてしまった。


「鋭心さん!」

 マシュロ、鋭心がいなくなり残っているのはアーケオだけになった。アーケオは一呼吸ついた後、走り出した。


 矢の残りが少なくなって来たのは前足を振りまして、攻撃し始めた。鞭のようにしなる前足の動きを読んで、接近していく。


「小賢しい!」

 からくり兵器が動き出そうとした時、アーケオの横を何かが通り過ぎた。それとともにからくり兵器の左足全てが切り落とされた。鋭心だった。


 彼が凄まじい速度でからくり兵器の左足を切断したのだ。


「何!」

 突然の出来事に厳世が動揺する。


「アーケオ! トドメだ!」

 アーケオは剣に力を込めた。黄金の光に剣が包まれ始めた。


「高密度なマナを感じる。これはまずい!」

 厳世が逃げようとした時、からくり兵器が動きを止めた。アーケオの敬虔な従者が右足全てを切断してしまったからだ。


「このアマ!」


勇者ブレイブ斬撃スラッシュ!」


「まっ! 待て!」

 アーケオは剣を振り下ろそうとした時、からくり兵器の背中から物音がした。大江戸厳世が出て来た。


「すみませんでした。どうか命だけは!」

 大江戸厳世がアーケオの前で床に額を付けた。アーケオは剣を下ろした。からくり兵器も使えなくなった今、彼はもう無力な男に他ならない。鋭心が即座に手足を拘束した。


「おい」

 背後から低い声とともにアーケオの首筋に刀が突きつけられた。ゆっくりと振り返った。和道だった。


「なぜ。ローゼンの王族がここにいる」

 アーケオの額からひんやりとした汗が流れた。


お手にとっていただきありがとうございます!

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