工房
ふむ、今日も良い出来だ。このゴーレムもそろそろ完成かな。
私はドラメリア・メラグリーン。名も無い森の奥地に引きこもってる老人だ。見た目こそ若い男だが中身は千を軽く越している。
種族の力により不老不死に近い存在となっているのだ。そういう種族名は龍人。知識を蓄え全ての種族の言語を話せて人化に成功した龍のみがなれる種族。
まあ、私は昔「根源に住む龍」だとか「始原の龍」とも呼ばれており本当に古い存在だ。ただの長生きなジジイなだけだがな。
そんな私がなぜここに引きこもってるかと言うと…至極単純な事だ。俗世に飽きたのだ。昔は勇者とか魔王を助けたりしていたが最近はつまらなくなり引きこもってる。
魔王という存在も消えたようだし…まあ、ただ今世の魔王は穏健派と言うだけだがな。
そんな、飽きた私は、昔知り合った男の趣味だったゴーレム作りを受け継いだ。私が勝手に受け継いだだけだがな。
事の他面白く熱中してしまった。かれこれ100年以上している。それも毎日。種族柄、体は頑丈だから1年寝なくても大丈夫なのだ。
最初の方はまともに槌すらも打てなかった。金属からは「ガンッ!!」「ゴンッ!!」と言う不格好な音ばかり鳴っていた。
毎日鍛錬していた結果、今ではどこにどう打てば良いのかや楽器を奏でるような音が鳴るようになった。別に本当に楽器のような音が出ている訳では無いがな。
まあ、一応周りからは職人と呼ばれる域にまでは行ったかな。
そうそう、ゴーレム作り以外にもその様子をMTubeで流したりしている。今まではしてなかったが昔の友人が久々に尋ねてきたと思ったらマフォンとか言うなんか板を取り出して「自分の孫がMTuberになったんだ!!」と笑顔で見せてきた。
あれが始まりか…なんか嫌だな。
まあ、そんなことよりもだ。MTubeと言うのが気になり、私も友人からマフォンを貰い配信してみた。なかなか新鮮な刺激が沢山あり面白い。
正直コメントは全て読んでないが「参考にした」等私の技術が役に立ってくれることもあり嬉しいものだ。
そしてある日夢ある子達に出会った。いや…出会ってしまった。
私がいつも通りMTubeで鍛冶の様子撮影しよう来た時に扉が叩く音が聞こえた。
こんな所にお客さんか?それともいつも通りの餌目的の動物たちか。
「はーい」
とりあえず出ないと始まらないからな。扉を開けてまず目に入ったのはボロボロの服を着た男の子と女の子2人のグループだ。
「おお、お客さんか!!」
人避けは結構しっかりしているから誰か案内人がいるはず。下を見ると真っ白なリスがいた。
「誰が案内したのか…ん、お前か!?珍しいなー!!」
時々お客さんが来ることはある。昔の友人だったり、仲のいい動物たちが連れてきた人族だったり。今回は動物が連れてきたパターンだな。
そして動物たちにも性格があるから、よく連れてくる子もいれば絶対に連れてこない子もいる。
この真っ白なリスは絶対に連れてこない派の子だ。
昔、人族に何かされたのか近づくことすらなかった。だが連れてきた。何かを感じとったのか。
「えっと、あなたは?」
ボロボロの服を着た男の子が私について尋ねてきた。まあ、突然動物に連れてこられて知らない家から知らない人が出てきたら尋ねるね。
「ん?私はこの家の主でドラメリアという者だ。気軽にドラでもメリアでも大丈夫だよ。まあ、詳しい話は中でしよう。ほら上がって」
正直私に勝てる存在はいないから普通に上げる。
普通にあげるので男の子は怪訝そうにこちら見てくる。まあ、警戒はするよね。
入るも入らないも相手の自由だから扉を開けておく。私は奥に行きお茶の準備をする。
男の子達は警戒しながら入ってくる。
「別に罠なんてないから気にせず入りな」
「…お邪魔します」
男の子はリスを見て少し警戒心を解く。リスは野生の警戒心はどこへやらと言えるレベルで机の上にあるクッキーをかじっている。
女の子達も少しだけ警戒心を解く。そして3人組は机の前にまで来てリスを見る。
「あ、椅子がなかったか。ちょっと待ってね」
樹木魔法を発動させて床から木が伸びて椅子の形になる。
3人とも変な顔をする。
「まあ、座りなよ。あともう少しでお茶ができるから」
3人は椅子に座り周りを改めて見回す。
一応客間も兼ねてるから綺麗にはしている。作業場は結構散らかってるけどな。
俺はティーポットと4つのカップを持っていく。これも俺の手作りだ。ガラスのように透き通った素材で鉄よりも頑丈にしてある。自慢ではないが市場などで出したら金貨5枚は下らないな。
3人の前にカップを置きお茶を注いでいく。
3人とも目を輝かせてカップを見る。
「綺麗ですね」
男の子が呟くように言う。
「でしょ、自慢の品だよ。そうやって楽しく見てもらえて作った甲斐があったって言うものだよ」
「これ手作りなんですか!!」
ローブを着ていた子がすごく興奮したように身を乗り出す。
「そうだよ。基本ここにある物全て私が作ったものだよ」
そう言った瞬間ローブの子は周りを改めて見回す。
「凄い!!」
「君は物作りに興味があるのかな?」
「はい!!最近MTubeでよく見ている人が物作り専門の人で更新される度に見てるのです!!」
はぁ、こんな若い子も物作り見てるのか。同じ物作りとしては嬉しいことだね。
「そうなんだね。もし良かったら私の工房見ていくかい?一応私も物作りの端くれだからね。他の人の意見が聞いてみたいから」
「いいのですか!?ぜひ!!」
「ちょ!?ソーニャ!?」
赤毛の子がソーニャ?さんを制止させようと声を上げるが時すでに遅し。
俺は立ち上がり奥にある重厚感たっぷりの鉄の扉を開く。
先程まで作業をしていたからまだ熱気があるようで冷たい空気が中に吸い込まれていく。
「凄い!!」
ソーニャさんが目をキラキラさせながら言う。ここまで期待されるとなんだかむず痒いな。
中に進むとソーニャさん達も着いてくる。壁のボタンを押して明かりをつける。普段は炎の様子をよく観察したいから切っている。が、今回はお客様がいるのでつけた。
明かりをつけると失敗作から成功作の全ての作品が輝き始める。
「ほわー!!」
興奮が最高潮に達したようで奇声を発する。嬉しい通り越して少し心配になるな。
明かりをつけて分かったが一切整理できていなかった。自分的には丁寧に置いていたのだが実際は、ゴチャゴチャとしたガラクタの山だった。
ちょっと整えるためにガチャガチャと作品達を取り出してならべていく。
「凄い!!凄い!!凄い!!凄い!!」
どうやら壊れてしまったらしい。赤毛の子が怖いのか震えている。
「まあ、好きに見ていいよ」
「ありがとうございます!!」
ソーニャさんは並べた作品を一つ一つ見ていく。ガラス細工のように色んな光を放つ剣を眩しそうに見たり、用途が不明すぎる道具などを真剣に考察していた。男の子と赤髪の子も最初の方は戸惑っていたが手に触れていくうちに楽しくなったのかソーニャさんと3人で楽しく話している。
…この子達なら見せてもいいかな。
「どうかな、私の作品達は」
「すごく綺麗です!!」
ソーニャさんが叫ぶように行った後に2人も同意しているようで首を縦に振っている。
「そうか、それは良かった。ソーニャさんと…えーっと」
「…あ!!俺はシュートって言います」
「私はリンって言います」
「シュート君にリンさん、ソーニャさんね。…3人ともこれ以外の作品見てみたい?」
「あるんですか!?」
「あぁ、むしろそっちが本命だからね。で、どう?」
3人はアイコンタクトだけして一言だった。
「お願いします!!」
いい目を持ってるねぇ。
指鳴らすと床材の石が1部宙に浮く。そして横にズレると元あった位置に真っ暗な空間と階段が見える。
「それじゃ着いておいで」
階段をおりていく。階段は真っ暗でほとんど何も見えない状態だ。
「ごめんね、ここの明かりは下に行かないとつけられないんだ。後ろ大丈夫そう?」
「はい、大丈夫です」
そして一番下に着いたので壁に設置してあるスイッチを押す。すると真っ黒な空間が徐々に光が出てくる。出てきた空間の大きさは縦20m程、奥行は霞んで見えるレベルの空間だ。
そしてそこにはたくさんのゴーレムが並んでいた。人型から獣型、半人半獣型など様々な姿で並んでいる。
「どうだい、私の一番の作品達だよ」
3人は静かだった。あの興奮していたソーニャさんが唐突に静かになったので少し心配になった。
スベったか?と思っていたらソーニャさんが声をかけてくる。
「あの、もしかしてルガンダ様…ですか?」
「様?ルガンダは私のMTubeでの活動名だね。そのルガンダであっているのならそうだよ」
ソーニャさんが気絶した。
~説明~
この世界の金銭
値段順で並べると
下「黒貨(10円)→銅貨(100円)→鉄貨(1000円)→銀貨(1万円)→金貨(10万円)→宝貨(100万円)→緋貨(1千万~5千万円)=魔貨(1千万~5千万円) =亀貨(1千万~5千万円) =霊貨(1千万~5千万円) →虹貨(1億~)」上
このようになっている。
全ての国が豊作で有り余る野菜1つが黒貨5枚になるような価値観である。
この世界の貨幣は全て穴が空いており、穴に紐を通して各硬貨ずつ持つ。
緋貨、魔貨、亀貨、霊貨はそれぞれ世界を代表する4国が作成している。各国で使えるが価値は時により違うのでしっかりと調べてから使うべきである。なぜ4つ作られたのかは分かっておらず、一説には種族が違う国同士だった結果、価値観が合わずそれぞれで作り始めたのがキッカケだとも言われている。
虹貨はどの国でも作成が出来ない。いつの間にか世界にあった硬貨だ。今現存する数は10枚と言われている。国同士との大規模なやり取りの時にしか動かない。
虹貨も価値が高すぎるため1億と言うのはもし値段をつけた場合という感じである。希少さ故か昔、虹貨1枚で世界を救ったとも言われている。