01. 所詮はチバ生まれのチバ育ち
要するにこれは地元問題なのだ。
チバエルフとサイタマゴブリンが徒党を組んでイバラキドワーフを莫迦にしている。
グンマ出身の僕としては、どうにかしたいと思っているのだが、チバエルフの性格の悪さはなかなかのもので、サイタマゴブリンはすっかり彼女に参ってる。つまり惚れてるだけのエエ格好しいなのである。
太鼓持ちめ。違うか。腰巾着め。
女の腰にしがみつくなど、片腹痛いわ。
この問題、トチギリヴァイアサンはハナから興味がない。
なぜってトチギに海がない。なのに海獣って。
グンマ人の僕だって莫迦にする。サイタマゴブリンだって恥を知れってなもんだ。
ちなみに、トチギリヴァイアサンはこの冒険譚に関係はない。
これは、チバラギグンタマと呼ばれる一部地域の問題であってトチギごときに出番はないのだ。カナガワホビットなんてアレもうカントウじゃないですよって顔してるからそれはそれで苛立たしい。ショウナン族に至ってはもう鼻につくレベルだ。カマクラ連中の方がまだ可愛げある。
トー京? あんな土地は田舎者のごった煮だ。
だからトー京は都会です。地上三大都市です。こんなお店があります。あんな施設があります。流行りの食べ物が行列です、なんてネタをずっと発信し続けている。
でないと、トー京が田舎だってバレるから。
トー京は、広告屋が作り上げた幻想で、砂上の楼閣で、とどのつまり蜃気楼で。
ひた隠しにしているけれども、虚ろ舟として漂着したそれは実にハマグリで、だからそのハマグリの吐く幻想に皆、しがみついて、お上りさんからカネを巻き上げてるのだ。気がつけ田舎者。
湾岸クラーケンは、ウミホタルの所為でけっこう怒ってる。
鹿行ゴリアテなんて、ダイダラボッチであることをひた隠しにしてるけれども、あれはそれで無理がある。友達がいないことをひどく恥じているようだが、お前みたいな図体の相手を探すには箱根越えして西へと遠征せにゃならん。
とにかく、チバエルフが女王様よろしくサイタマゴブリンの連中をアゴで使っているのが問題だ。さっきも女王蜂の関心を引こうと小鬼風情が棍棒でイバラキドワーフを小突いたのが発端である。
もちろん、チバエルフは美人だ。
でも、所詮はチバ生まれのチバ育ちでしかない。
性根はチバイズム、つまりコンプレックスの塊で、だからイバラキドワーフを苛めてる。
かわいそうなイバラキドワーフ。
彼は気の善いずんぐりむっくりで、実際背が低い。
カナガワホビットといい勝負だが(アキタワラシに至ってはただの子供だ、成人しても禿と呼ばれる)、カナガワの奴はわりと愛らしいが、イバラキの奴はむさくるしい。特にツチウラ辺りは泥臭い。ウシク沼となればマジ臭い。風呂に浸かる習慣が定着しなかったとはいえ、それでいいのか。鼻からもげる。
隣接するカスミガ浦にはセイレーンがいないこともないが、鳥の体に女の顔が乗っかってるから、まったくの玄人好みである。
あれはちょっと気色悪い。
アワジ島あたりのセイレーンは人魚だというのに。でもまあヘソ持ちを別としてウロコがいいとか悪いとか僕には分からない。繁殖方法を知れば、そういう対象にもならない。美人だけれども。
とりあえず僕はチバエルフとイバラキドワーフの喧嘩を仲裁することになる。いい加減にして欲しいのである。サイタマゴブリンがいなくなれば丸く収まるのでは、なんて考えたこともあって夜中に首を絞めようとしたけれどもやめた。たぶんチバエルフを屠ったほうが平和になりそうだった。
だが当のチバエルフは、チバはチバでも特にガラの悪い地域の出だから、たいそう相手にしたくないのである。
こんな有り様でエド・ジョーへの使いなんて出来やしない。
ヤマノテセン結界に辿り着く前に全滅しました、なんて口が裂けても。
せめてツクバ天狗を味方にするか手籠めにするか、敵対するなら闘うのか。目下はそれが大事なのだ(そして敵対するなら勝てる見込みが大層薄い)。
生まれも育ちも違うのだから仲違いは仕方ないとしても、足の引っ張り合いなどとは見苦しいこと甚だしい。
つまりこれは、田舎者同士のケチな喧嘩なのだ。




